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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

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第094話 呼び出し


 トウコが部屋を出ていった後は漫画を読み、就寝した。

 あの2人がどうなったかは知らないが、お互いに魔法を教え合っていたのだろう。


 翌日、基礎学の授業が終わり、俺達は皆で教室に残り、駄弁っている。

 もちろん、トウコは一人でさっさと帰っていった。


「フランク、魔法大会って知ってるか?」


 昨日、シャルに聞いた演習大会が気になったので聞いてみる。


「あー、今月末のやつな。もちろん知ってるし、親父に出ろって言われた」


 やっぱりか。


「イルメラもか?」


 立っているイルメラを見上げる。


「そうね。まあ、適当にやるわ」


 フランクもイルメラもそこまでやる気があるようには見えない。


「盛り上がってないな」

「やれと言われればやるが、学園の仲間と戦うのは微妙なんだよなー」

「所詮は遊びだけど、マジでやると尾を引きそうなのよね……でもって、熱くなったら止まんないし」


 そうか……

 こいつらはマジもんの武家だから戦いも真面目なんだ。


「演習だろ?」

「演習と考えずに襲い掛かってくるのもいるんだよ」

「そうね。バーサーカーさんとか」


 2人がユイカを見る。


「むぅ……バーサーカーじゃない。冷静なアサシンと呼んでほしい」


 呼んでほしいのか?


「あんなに目立つアサシンがいるかよ」

「あんたは魔力も動きも派手なのよ」


 2人にツッコまれてユイカがしゅんとする。


「魔法大会で音もなく、バラバラにしてやる……」


 物騒だなー。


「な? こういうのが出てくるんだよ」


 確かにやりづらいな。


「私、ユイカは嫌だわー。相性が良くないし、奥の手を見られている」


 イルメラの奥の手は転移魔法だが、俺とユイカは一緒に熊狩りに行った時に見ている。


「ツカサはどうするの?」


 ユイカが聞いてくる。


「考え中。優勝賞金もないんだろ? あと、俺、女とやりたくないわ」


 殴れん。

 そうなると、関節技か寝技か……

 いや、寝技はないわ。

 最悪すぎるし、嫌なあだ名がつきそうだ。


「私も首の骨を折られたくないからあんたとはやりたくないわね」

「俺もパス。剣を握りつぶすような奴とやりたくない」


 俺とユイカって人気ないなー。


「私はやりたい。この前のリベンジをする。ちゃんとみぞおちガードも覚えた」


 みぞおちを打つと見せかけて、リバーブローで潰してやろ。


「何人ぐらい出るんだろ?」

「10人か20人か……もっと少ないかもな」


 フランクが答える。


「え? そんなに少ないのか?」


 全然じゃん。


「魔法大会は学年を跨がないんだ。だから1年は1年でやる。そうなると、トウコが出る時点で参加者が減るだろうな。会長との決闘を見てたウチのクラスとCクラスは参加しないだろうし、噂になってるからAクラスとBクラスも微妙だな」

「勝ったのはシャルだぞ」

「そうだけど、トウコは魔法も武術もできるハイブリッドだろ。氷姫っていうあだ名もあるし、普通に会長よりこえーよ。会長も魔法はすごいと思ったけど、明確な弱点があるからやりようはいくらでもある」


 シャルは接近戦ができないから、か。


「というか、トウコって出るの?」


 セドリックが聞く。


「どうなんだ?」


 フランクがそのままイルメラに振った。


「さあ? 聞いてないわね。ノエル、聞いてる?」

「私も聞いてませんね」

「最近、熊、熊とうるさかったしね」


 女子3人が顔を見合わせる。


「――そんなに言ってませんよ」


 急にトウコの声が聞こえてきた。


「んー? あ、トウコ。珍しいわね。まだ残ってたの?」


 女子3人が振り向いた先にはうっすらと微笑むトウコが立っていた。


「そういうわけじゃないんですけどね。ユイカ、私はそんなに熊、熊と言ってません」


 お嬢様モードなんだろうけど、笑ってしまいそうになる。


「いや、ずっと言ってたよ」

「言ってませんね」


 トウコがニッコリと笑った。


「あ、トウコ。あんた、魔法大会に出るの」


 イルメラがトウコに聞く。


「考え中ですね」

「そう? あんたなら優勝を狙えるわよ」

「どうでしょう? まあ、この話はあとにしましょう。長瀬君」


 トウコが俺の名を呼び、見下ろしてきた。


「ラ・フォルジュさん、何?」


 学校で話しかけんじゃねーよ。


「校長先生が校長室に来てほしいそうです。先程、外で会った際に伝言を頼まれました」


 校長先生さー、トウコに頼まないでよ。


「あー、わかった。すぐに行くわ」


 そう答えると、立ち上がった。


「校長室? 何かしたのか?」


 フランクが聞いてくる。


「さあ? ちょっと行ってくるわ」

「じゃあ、俺らも帰るかな」


 座っていたフランクとセドリックも立ち上がったので俺達は一緒に教室を出る。

 そして、皆と別れると、校長室に向かった。


 以前に母親と来た校長室の前までやってくると、扉をノックする。


「せんせー、長瀬でーす」

『どうぞ、入ってください』


 校長先生の声だ。


「失礼しまーす」


 扉を開け、中に入ると、席につく校長先生とその前に立つ2人の女性がいた。

 1人はシャルであり、この前の話だろうからいるのはわかる。

 そして、もう1人の女性は昨日、公園で話したミシェルさんだった。


「こんにちは、ツカサ君。また会いましたね」


 笑顔が似合うミシェルさんがニッコリと笑った。


「こんにちはー」

「ツカサ、知り合いなの?」


 シャルが聞いてくる。


「えーっと、暗部の人。アンディ先輩の先輩」

「ミシェル・アンヴィルです」


 こら、苗字を名乗るな。

 多分、シャルは知ってる。


「アンヴィル……ラ・フォルジュ派ね……」


 ほらー……

 シャルの笑顔が仏頂面になったー。


お読み頂き、ありがとうございます。

本作品ですが、今後は週2日更新となります。

具体的には水曜日と日曜日になります。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そうだ、毎日の12時更新無くなったんだった。さみしい。 毎回書いている気がしますが
[一言] 笑顔が素敵なミシェルさんvs笑顔が消えるシャル
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