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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

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第090話 ラ・フォルジュ派


 夕方の5時前になり、明日からの学校のこともあったので帰ることにした。


 シャルの家から出て、家に帰るために歩いていく。

 しかし、公園を過ぎたあたりでふと足が止まった。


 スマホを取り出し、時間を確認すると、5時を過ぎている。


 んー、まあいっかー……


 俺は再び、歩き出し、遠回りをして公園に戻った。

 そして、ベンチに腰掛け、ぼーっとする。


「素晴らしいですね。よくわかるものです」


 後ろから声がしたので見上げてみると、赤みがかかった金髪の女性が微笑みながら立っていた。


「どうも。変なことを聞きますが、魔法使いですか?」


 そう思う理由はこの人が日本人に見えないこと。

 あと、武術系の何かをやっている人だとすぐにわかったからだ。

 そして今、この人から魔力を感じる。


「はい。アストラルの運営委員会に所属している魔法使いですね。暗部ってやつです」


 暗部……

 アンディ先輩と同じか。


「先週の件です?」

「ええ。隣に座っても?」

「どうぞ」


 そう言うと、女性が隣に座り、こちらを向いてニッコリと笑う。

 その笑顔は可愛らしいのだが……


「え? やる気?」


 女性は殺気を出すとまでは言わないが、戦闘態勢に入っていた。


「すみませんが、あまり気にしないでください。仕事上の癖です」


 絶対に戦闘タイプの魔法使いだな。


「アンディ先輩は普通でしたけど?」

「いやー、あの子はちょっとねー……あ、自己紹介がまだでしたね。私はミシェル・アンヴィルと言います」

「どうも……俺は長瀬ツカサです」


 知ってるとは思うけど。


「はい。ラ・フォルジュの方ですね」

「知ってるんです?」

「アンディから聞きました。まあ、調べればわかるんですけどね」


 暗部って言うくらいだから調べられるのか。

 まあ、クラスメイトにバレなきゃいいから別にいいけども。


「へー……ちなみに、どこの人ですか?」

「ツカサ君と同じですよ。ちなみに、アンヴィル家はラ・フォルジュ派です」


 そう……


「俺が今までどこにいたか知ってます?」

「いえ。私は何も見ていませんし、何も知りません」


 ミシェルさんがプイッと前を向く。

 どう考えてもシャルのところにいたことを知っている反応だ。


「あのさー、さっきその友人から魔法使い同士の争いは良くないって聞いたんですけど……」


 ホント、仲悪いな……


「どの口が……あ、いえ、すみません。御友人でしたね……こればっかりは仕方がないです。でも、派閥内では皆、仲良しなんですよ?」

「そうなんです? ウチとも?」

「もちろんですよ。ラ・フォルジュの当主様から『孫に魔力が高くて良い子がいるんだけど、どう?』って聞かれましたもん」


 婆ちゃん……

 前に父さんからラ・フォルジュの家に行くと、良い感じの嫁さんを紹介してくれるって聞いたけど、もう声かけてんじゃん。


「俺、まだ16歳なんですけど」

「若いですねー。あ、私は22歳です」


 クロエと同い年か。


「22歳かー……あの、タメ口でいいですよ? 先輩ですし」

「そう? じゃあ、それで」


 ミシェルさんがニコッと笑う。

 笑顔が似合う人だ。


「ミシェルさんは学園の卒業生です?」

「ええ。あ、エリクさんと同級生ね」


 へー、エリク君とかー。

 そういやエリク君もそれくらいの年齢のはずだ。


「エリク君、どんな感じでした?」

「とても優秀な方ね。さすがは次期当主」


 エリク君はラ・フォルジュの次期当主である。

 本来なら俺やトウコの伯父に当たる母さんの兄が次期当主のはずだが、エリク君が優秀だったことと伯父さんが別の事業で成功しており、忙しいからエリク君が次の当主になったと聞いている。

 だからエリク君を慕っているトウコはラ・フォルジュの魔法使いになることにしたのだ。


「へー……俺、魔法学園のことを知らなかったし、遠いからエリク君の学生時代を知らないんだよなー」

「うーん、真面目な方だったよ。あ、女性にモテてた」


 エリク君、かっこいいしなー。

 今度会ったら殴ろ。


「さっきの婆ちゃんが言ってた孫ってエリク君?」

「エリクさんはツカサ君の半分も魔力を持ってないね。あと、お婆様は『ちょっと素直なところがある子』って言ってた」


 出たよ、素直……

 母さんもだけど、その言葉、好きだねー。


「俺だわ。バカだもん」

「素直な子だとは思うわね。普通、もっと疑わない? 私が敵だとは思わない? アンヴィルや暗部を名乗る他所の町の刺客とは思わない?」

「敵なん? 騙してんの?」

「いーえ。騙してません」


 ならいいや。


「婆ちゃんに旦那を勧められるくらいに仲が良いんですっけ?」

「そうだね。子供の頃からお世話になったし、よくしてくれた」


 へー……


「俺がイヴェールの次期当主と仲良くしているのってマズい?」

「マズいね。非常にマズいね。しかも、家に行くレベルはめちゃくちゃマズいね」


 まあ、母親の反応からしてそうだろうなーとは思っていた。

 もっとも、だからといって付き合い方を変えることはできない。

 もう無理だ。


「さっきも言ったけど、俺ってバカなんですよ。滑り止めの高校すら落ちてニートになったレベル。そんな俺が基礎学で86点取った。さらには子供の頃から魔力が高いだけで強化魔法しか使えなかったのに空間魔法を使えるようになった。ぜーんぶ、シャルのおかげ」


 有能な先生だわ。


「そう……ちなみに、ジゼルさんは知ってるの?」

「知ってる。泣いて喜んでた。そして、ものすごく複雑みたいで頭を抱えてた」


 シャルがウチに来て、帰った後はいつもリビングで頭を抱えている。

 『良い子すぎる……』とか『いっそ悪女だったら……』とかつぶやいている。

 なお、父さんは我関せず。


「でしょうねー……当然、お婆様には言ってないわけでしょ?」

「みたいですね。婆ちゃんに言うなって釘を刺されました。そういうわけでミシェルさんも言わないでください」

「わかってる……というか、言わないし、言えない」


 関わりたくないって感じだな。


「お願いします。それでなんでアストラルの運営委員の暗部が日本にいんの? しかも、フランスの人でしょ?」


 自己紹介も済んだので本題に入ることにした。


「そうね……まあ、最初に言ったけど、この前のことを話にきたのよ。時間ある?」


 チラッと公園の時計を見ると、5時半だった。


「ええ。大丈夫です」

「じゃあ、ちょっとだけ時間をもらうわね。あ、コーヒーあげる」


 ミシェルさんはそう言ってポケットの中から缶コーヒーを手渡してきた。

 コーヒーは温かった。


「ありがとうございます」


 夏だし、冷たいのが良かったなー……


お読み頂き、ありがとうございます。

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[一言] ばあちゃんの種馬事業て活発過ぎね? この様子だと既に候補レベルでない該当者が ダース単位で用意されてそう 遺伝子提供者としてのみという誓約済みでなー… ばあちゃんこわいわー かあちゃんはわり…
[良い点] 当主は婆ちゃん
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