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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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第078話 バイト


 C校舎の中を歩いていくと、ジョアン先輩がとある部屋の前で立ち止まった。


「ここがウォーレス先生の研究室ね」


 ジョアン先輩はそう言うと、ノックもせずに扉を開ける。


「せんせー、ツカサ君を連れてきましたー」


 ジョアン先輩がそう言って中に入ったので俺も中に入る。

 部屋の中は10畳程度だと思うが、あちこちに見たことない器材が置かれており、さらにはベッドまで置かれていた。

 研究室のように見えるし、ベッドがあるから私室のようにも思える。


「ジョアン、ノックくらいしなさい」

「すみませーん」


 ジョアン先輩が軽い感じで謝った。


「ハァ……長瀬君、休みのところ悪いね」


 ため息をついたウォーレス先生が俺に声をかけてくる。


「いえ……すごい部屋ですね。見たことない器材がいっぱいあります」

「まあね。ここで新しい魔道具の開発なんかをしているんだよ。今は君からヒントを得た魔物を呼び寄せる道具を開発中だ」


 何も考えずに言ったのにマジで作ってんのか……

 でも、トウコが喜ぶかもな。


「ここで寝泊まりです?」


 そう聞きつつベッドを見る。


「一応、アストラルの住居区に家があるんだが、ほぼここだね。研究に没頭すると家に帰るのが億劫なんだ」


 以前、母さんが魔法使いは人生を魔法に捧げると言ったことを思い出す。

 昼は授業をし、それ以外は家にも帰らずに研究をする。

 とんでもない情熱だ。


「すごいですね」

「そんなことないよ。好きでやっていることだからね」


 好き、か。


 ふと、ジョアン先輩を見ると、ベッドに腰かけ、なんかの本を読んでいた。


「ジョアン先輩が先生に師事しているって聞いたんですけど、そういうことってあるんですか?」

「師事……そこまでのことじゃないけど、まあ、師事といえば師事か……あるよ。授業で教えることは表面的なことだけだからね。もっと専門的なことを学びたい場合は教師に限らず、色々な人に師事することはよくあることだよ。君だってあの武術は誰かから教わったのものだろう?」


 確かに長瀬の爺ちゃんや父さんから教わったものだ。


「じゃあ、例えばですが、俺が先生に師事したいって頼めば教えてくれるんです?」

「もちろんだよ。君にそこまでの情熱があればの話だけど」

「すみません。ないです」


 向いてないし、楽しいと思えない。


「だろうね。君はそんな熱心な生徒には見えない。別にそれが悪いことではないんだよ。ただ、まだ決めてないだけだね。これから探しなさい。長所を伸ばしてもいい、やりたいことをやってもいい。好きにしなさい。ただ周りに相談することを忘れないように。教師に限らず、親、妹さん、友人……頼れるものは何でも頼るといい」


 先生って感じがするな。


「わかりました」

「せんせー、用件を話しましょうよ」


 ジョアン先輩が急かしてくる。


「そうだね。ツカサ君、ちょっとバイトをしないかい?」


 先生が頷くと、本題に入る。


「バイトって言いますと? 外に行って魔物でも狩るんですか?」

「いや、そういうのじゃない。実はD校舎にある地下を調べてきてほしいんだ」


 はい?


「すみません。色々とわからないんですが、地下って何ですか?」

「この学園は歴史がかなり古くてね。何百年と言われている」


 それはすごいな。


「全然、見えませんね」

「去年、校舎を建て替えたからね。ここはOBやOGが多く、寄付もすごいんだ。だから定期的に建て替えている」


 そういえば、前にフランクとセドリックに聞いたな。


「それでなんで地下を調べるんですか?」

「歴史があるって言っただろ? 要は昔の研究施設が地下に残っているんだよ。そこの調査の仕事。というか、清掃だね」


 掃除かい……


「雑巾と箒を持っていく感じですか?」

「そんな感じ。そういう掃除用の魔道具もあるんだけど、貴重な研究資料が傷む可能性があるから人力でお願いしたいんだよ」


 そういえば、町に行った時にセドリックからホコリを自動で吸い取ってくれる魔道具を勧められたな。


「あの、なんで俺なんですか? 先生のクラスの生徒でもいいし、ジョアン先輩でもいいじゃないですか」

「あ、いや、別に君である必要はないよ。単純に掃除のバイトだから誰でもいい。ただ割の良いバイトだから君にどうかなって思ってね。良いヒントをくれたし、その礼をと思ったんだよ。あと、ジョアンはすでに頭数に入っている」

「アンディもねー」


 理由は特にないわけか。


「3人です?」

「まあ、そんなところかなと思ってね。あとは実際に見てから決める。ひどいようだったらもう少し声をかけるよ」


 普通のバイトか。


「バイト代は?」

「それも部屋を見てから決めるけど、1万から3万マナってところかな?」


 掃除をするだけでそんなにもらえるの!?

 確かに割の良いバイトだわ。


「そんなにもらえるんですね」

「学園から出るからね。これに限らずだけど、学園のバイトってどんぶり勘定だからかなり儲かるんだよ。たまに掲示板に貼ってあるから定期的に見ることをおすすめするよ。まあ、奪い合いもすごいけどね」


 へー……

 全然、見てないから知らなかった。


「それを回してくれるってことですか?」

「そうそう。ジョアンに頼んだんだけど、ジョアンがアンディを誘った。もう一人ほしいなーっと思ってたら君のことを思い出したんだよ。ジョアンとアンディはDクラスだし、ちょうどいいやって」


 なるほどね。


「じゃあ、せっかくなんでやります。いつやるんです?」

「今週か来週のどっかでいいよ。その辺りはジョアンとアンディと相談してくれ」


 そう言われたのでジョアン先輩を見る。


「アンディのところに行って相談しましょうか」


 ジョアン先輩が本を置くと、立ち上がった。


「わかりました。寮ですかね?」

「多分ね。行きましょう。先生、失礼しました」

「失礼しましたー」


 俺達は部屋を出ると、男子寮に行くことにした。


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