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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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第077話 楽しく生きよう。それが一番


 休憩が終わると、シャルが採取を再開した。

 そして、ちょっとすると、今日は日曜なため、早めに引き上げることにし、学園に戻る。

 理由はもちろん、カップルの巣窟にいたくないからだ。


「一緒に夕日を眺めれば良かったのに……単純に綺麗ですよ?」


 寮を目指して丘を登っていると、クロエが茶化してくる。


「嫌よ。私は絶対に日曜の夕方にはあそこに行かない」


 シャルはカップルの巣窟だということを知らずに行きまくってたらしいからな。


「クロエは知ってたん?」

「日曜の夕方の暗黙の了解ですか? もちろんですよ。私もこの学園の卒業生ですからね」


 え? そうなの?


「知ってたの!? というか、あなたってここの卒業生なの!? いつ通ってたのよ!?」


 シャルが知らんのかい。


「お嬢様のお世話をしつつ、睡眠時間を削って通ってましたよ。だから当然、暗黙の了解も知っています」

「睡眠時間を削ってって……あなた、この前、私に寝ろって説教してなかった?」


 シャルが親と話して夜更かししてた時だ。


「その経験からですよ。まあ、私は取る授業が少なかったですし、問題ありません」

「そ、そうなの? いや! じゃあ、なんで教えてくれなかったの!?」

「どっちですかね? 通ってたこと? 暗黙の了解?」


 クロエが首を傾げる。


「両方!」

「通ってたことはお嬢様が知る必要のないことだからです、侍女の苦労なんか気にかける必要はありません。というか、そんなに苦じゃなかったですしね。楽しかったです」

「そ、そう……」


 シャルは複雑そうだ。


「暗黙の了解はお嬢様が承知をしており、気になされていないのだろうと思ったからです。普通は友人や先輩から聞きます。まさか友人がゼロとは……」

「悪かったわね……」


 何て言えばいいかわからんな。


「ツカサ様、どうか……くれぐれもどうかお嬢様をお願いします。頼れるのはあなただけなのです」

「あ、はい」

「ふ、ふん。とにかく、もう湖には二度と日曜の夕方に行かないから!」


 まあ、俺も行きたくない。


「ふーん……」


 クロエがにやにやと笑っている。


「何よ?」


 シャルがジト目でクロエを見た。


「いえいえー。さて、お別れですね」


 クロエが言うように男子寮と女子寮の分岐点までやってきた。


「そうね。ツカサ、今日はありがとうね」

「いや、楽しかったよ。それにポーションもありがとうな」

「いいの、いいの。完全に趣味だもの」


 まあ……


「お嬢様……」


 クロエがシャルに声をかけ、男子寮の方を見る。


「ん?」


 シャルが男子寮の方を見たのでつられてみると、何故か、ジョアン先輩が降りてきていた。


「男子寮だよな?」

「そうよね……まあいいわ。私達は帰る。ツカサ、また今度ね」

「今日はありがとうございました。週末、お待ちしております」


 シャルが手を上げ、クロエが深々と頭を下げると、2人はそのまま女子寮の方に歩いていった。

 残された俺はジョアン先輩を見る。

 すると、ジョアン先輩も俺の方を見ており、近づいてきた。


「こんにちは。なんかごめんね。また邪魔しちゃったみたい」


 ジョアン先輩が両手を合わせて謝ってくる。


「いえ、ちょうど帰るところだったんですよ」

「今日もデート? なんかメイドさんがいたけど……」


 やっぱりメイドは目立つな。


「薬草採取ですよ。シャルも錬金術をやるんで」

「そうなの? 意外ね」

「中学で錬金術をすべて終わらせたみたいですよ」

「へー。イヴェールって武家なのにね」


 そこは俺も思ったが、個人の嗜好だから仕方がない。


「趣味みたいです。先輩は何してたんですか? あっちは男子寮ですけど……」


 もしや、アンディ先輩だろうか?


「あ、それそれ。実は君に用があったんだよ。いるかなーって訪ねてみたんだけど、外出中って言われた。というか、君って半寮生だったんだね」

「ここと日本の時差は3時間程度ですからね。ギリ通えます」


 慣れれば起きられるもんだわ。


「いいわねー」

「4時起きですけどね……それで用というのは?」

「ウォーレス先生が呼んでるのよ」


 ウォーレス先生……

 シャルのクラスの担任か。


「何の用だろ……」

「ちょっと仕事を頼みたいみたい。私はウォーレス先生に師事しててね。それで伝言を頼まれたの」

「師事って?」

「ウォーレス先生ってもの作りの先生じゃない? 錬金術もその一つだから弟子にしてもらったわけ」


 そういうこともあるのか……


「わかりました。どこに行けばいいんですかね?」

「あ、案内してあげるよ。今大丈夫?」


 今からか……

 時刻は4時だから帰っても1時……

 やることないし、いっか。


「ええ。お願いします」

「じゃあ、こっち」


 ジョアン先輩が降りだしたので俺も続く。


「どこに行くんです?」

「先生の研究室。C校舎の1階ね。平日は近づきづらいけど、休日なら大丈夫」


 やっぱりDクラスとCクラスは微妙な仲なんだな。


「なんでDクラスとCクラスに派閥を固めたんですかね?」

「さあ? 私達も色々と予想しているけど、わからないわね」

「予想って?」

「有力なのはイジメ的なものを防ぐためとか派閥を分けることによる競争なんかかしら? どれも根拠はないわ。この学園ってOB、OGが多額のお金を出してくれているんだけど、その分、そいつらの力が強いのよね。多分、そういうOB、OGの思惑もあると思う」


 派閥だらけだな。

 良くないことだとは思うが、そのおかげで裏口入学できたから何も言えない。


「複雑なんですね」

「生徒はあまり関係ないけどね。この前も言ったけど、良い子は良い子だし、友達は友達よ。あなただってそうでしょ?」


 確かにシャルはライバルの家のイヴェールだ。


「そうですね。そもそも派閥なんて知らないですし、入った覚えもないです」

「ほとんどの人がそうよ。まあ、これも時代が変われば変わるんじゃないの? 知らないけどね」

「ですかねー? そうだといいんですけど」


 俺達が話しながら歩いていると、丘を降り、D校舎の前を通り過ぎる。

 そして、C校舎まで来ると、中に入り、奥に向かって歩いていった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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