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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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第074話 ズルい!


 転移の魔法陣を使い、工業区にやってきた俺達は建物を出ると、丘を降りていき、クラウスの工房に向かう。


「イルメラもクラウスを知ってんの?」

「ウチもお世話になってる人だしね。猪を仕留めたって言ったでしょ? その時も買い取ってもらったのよ」


 イルメラ達ドイツ勢は仲が良いという感じがする。

 それに比べて、フランスは……


「また熊を持っていったら一度に持ってこいって言われそうだな」

「言うんじゃない? でも、今回は私が仕留めたからセーフ……あ、ここだ、ここ」


 前にもやってきた建物の前に来ると、イルメラが扉をノックする。

 しばらくすると、扉がガチャッと開かれた。


「んー? ヘンゼルトの嬢ちゃんか? それにツカサじゃねーか。もう一人は……誰だ?」


 クラウスが俺達を見渡す。


「やっほー。元気そうで何より。こっちの子はユイカ。クラスの友達ね」

「こんにちは」


 ユイカがぺこりと頭を下げ、挨拶をした。


「はい、こんにちは。何か用か? あ、ツカサ。熊はちょっと待て。ようやく買い取ってくれるところが見つかったんだよ」


 クラウスは教師らしくユイカに挨拶を返すと、俺を見てくる。


「了解。別に急いでないからいつでもいいよ」

「はいよ。それで何の用だ? そのことを聞きに来たのかと思ったが、違うのか?」

「悪いが、熊をもう1匹追加だ」

「は? また仕留めたのか?」


 クラウスが呆れた。


「俺じゃなくて、こっち」

「ふふん!」


 イルメラを指差すとドヤ顔になった。


「お前かい……グリズリーか?」

「そうね。相手にならなかったわ」


 確かに一方的だったな。

 最後は熊も逃げたし。


「そうかい。それを俺に売れと?」

「売ってよ。買い取ってくれるところが見つかったんでしょ? もう1匹いるって言ってくれない?」

「まあ、いいけどよー……しゃーねー。中で出してくれ」

 

 クラウスはそう言って中に入れてくれた。


「悪いなー」


 一応、謝っておく。


「まあ、俺がするのは声をかけるだけからいいんだけどな。しかし、1週間でもう1匹、熊を持ってくるとは思わんかったわ」

「俺達が狩ったっていう情報を聞いたイルメラがやる気になったんだよ。今日はその付き合いだな」

「対抗する奴だなー……ほら、出せ」


 クラウスが促すと、イルメラが仕留めた熊を出した。


「確かにグリズリーだな……致命傷は脳天への一撃か」


 クラウスが見分しだす。


「戦いの途中で逃げたから自慢の槍を食らわせてやったわ」

「はいはい。すげーわ。まあ、売れるんじゃねーの? 声かけはしてやるから決まったら連絡するわ」

「おねがーい。よし、帰るわよ!」


 用件が済んだ俺達はクラウスの工房をあとにし、学園に戻ることにした。

 そして、転移の魔法陣で学園に戻ってくると、男子寮と女子寮の分岐点までやってくる。


「今日は助かったわ。素晴らしいデートだったわね」


 色気のないデートだったなー。


「俺、何もしてねーわ」


 熊はイルメラが仕留めたし、狼も全部、ユイカが仕留めた。

 まあ、森を散歩したとでも思うか。


「今から演習場に行く?」


 ユイカが誘ってくる。


「まだ授業やってんだろ」

「それもそうか……」

「お前らもこれで満足しただろ。良かったな」


 魔力に引き寄せられる云々はわからないが、目的は達したはずだ。


「うーん……どうだろ? 確実に文句を言いそうなのが一人いる」

「確かにトウコは文句を言いそうね。というか、火が点くんじゃない?」


 トウコか……

 昨日もなんか言ってたな。

 一応、金で納得していたが……


「俺はもう行かんぞ。土日は用があるし」


 シャルとの勉強会と薬草採りが入っている。

 というか、トウコとは行かないことになっている。


「私達で付き合う?」


 ユイカがイルメラに聞く。


「そうなるんじゃない? トウコって普段はお嬢様っぽいけど、戦いになると、暴言を連発するじゃん。あれ、絶対に戦いが好きな人よ」


 というか、そっちが素なんだよな。

 戦いで興奮して素になってるだけだ。


「完全な戦闘タイプの魔法使いだしね……この前、演習でトウコの攻撃を躱してたら舌打ちしまくってた」


 あいつ、短気だしな。


「トウコはねー……会長に負けて溜まってんじゃない?」

「再戦しないのかな?」

「しないというか、会長の方が絶対に拒否するでしょ。あの決闘を見る限り、今度は絶対にトウコが勝つでしょうしね」


 絶対に戦わないって言ってたな。


「まあ、確かに会長の底は見えたしね。トウコは魔法も武術も優れているから対応してくる」

「ちなみに、あんたは会長に勝てる?」

「飛ばれたらキツい」

「あー、なるほど」


 シャルを倒す相談をしないでほしいな……


「よくわからんが、土曜にでもラ・フォルジュさんと森に行ってくれ」

「まあ、そうなるでしょうね」

「イルメラが熊を仕留めたことを誰にも言わなければいいんじゃない?」


 確かに……

 俺も家で言わなければいい。


「無理。自慢する気満々だもん。この気持ちは抑えられない……!」


 イルメラが悔しそうに胸を押さえる。


「あ、そう……」


 セドリックって人を見る目があるなー。


「気持ちはわからんでもないが……まあいいや。じゃあ、俺は帰って漫画でも読むわ」

「私は寝るかな……」

「私はトウコの部屋の前で待ってる」


 ひっでー……

 高確率で俺が部屋凸されんじゃん。


「じゃあ、また明日な」

「うん。ばいばーい」

「ええ。今日はありがとう」


 2人と別れると、男子寮に登っていく。

 そして、家に帰ると、漫画を読み、夕方まで時間を潰していった。

 もちろん、トウコに部屋凸されて文句を言われた。


お読み頂き、ありがとうございます。

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