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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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第070話 隠す気あるのかな?


 翌日の月曜日。

 楽しい土日も終わり、今日からまた学校が始まる。

 とはいえ、月曜は午後までなので楽なもんだ。

 何しろ、アストラルの午後はこっちの世界の9時だし、ほぼ一日遊べる。


 俺は今日も頑張ろうと思い、ゲートをくぐり、寮に向かった。

 そして、いまだに何も置いていない部屋を出ると、休憩スペースを見る。

 そこにはセドリックしかおらず、フランクはまだの様だった。


「おはよー。珍しくフランクがいないな。寝坊か?」


 休憩スペースに向かいながらセドリックに声をかける。


「おはよう。フランクは休みだね。朝に実家から帰って来たみたいで寝るってさ。今朝、眠そうな顔で俺は寝るって訪ねてきたよ」


 出た、時差問題。


「地元に長居した感じか?」

「フランクは次男なんだけど、小さい弟や妹がいるからねー。その辺じゃない?」


 あいつの家族構成を知らんかったな。


「お前は兄妹いんの?」

「僕? 妹が一人いるね」

「おー! ウチと一緒」


 双子だけど。


「ふふっ、きっと妹さんは君にそっくりなんだろうね」

「全然、似てないぞ」


 顔と性格以外は。


「そうかい……あまりこの話題はやめておこうか。行こうよ」


 セドリックが立ち上がったので学園に向かう。

 そして、Dクラスの校舎に着くと、いつものように後ろの席についた。

 前の方では一番前の席に座っているトウコが頬杖をついている。

 その斜め横の方ではイルメラとノエルが話しており、ユイカがぼーっと天井を見上げていた。

 他にも生徒達がちらほらとおり、フランクがいないこと以外はいつもの光景である。


 そのまま待っていると、ジェニー先生がやってきて、基礎学の授業が始まった。

 今日はぶっ通しで座学のようで集中が切れないように授業を聞いていく。

 もちろん、ノートは取らない。

 そうやっていつものように授業を聞いていると、昼になり、授業が終わった。


「あー、疲れた」

「君も突っ伏すことがなくなったね」


 セドリックが笑う。


「基礎学はさすがにちょっとずつだけど、わかってきたしな。86点だぜ?」

「そうかい。ちなみに、僕は96点」


 はいはい。


「四捨五入したら一緒だろ」

「いや、90点と100点……あ、10の位をしたの? それはさすがにひどいよ。皆、100点じゃん」

「おーっと、優等生。あそこに魔法工学で48点のやつがいるぞ」


 前の方でぼけーっとしているユイカを指差す。

 すると、ユイカが振り向いた。


「むむっ、悪口が聞こえたような気がする」


 ユイカは立ち上がると、こちらにやってくる。


「僕じゃないよ。こっち」


 セドリックが俺を指差す。


「またツカサがバカにする……錬金術で51点だったくせに。ちなみに、私は58点」

「基礎学が78点だったくせに。ちなみに、俺は86点」

「むむむ……ツカサは私の薄目作戦に引っかかったから私の方が頭良い」


 それ、まだ引っ張るん?


「あんたら、まだどんぐりの背比べしてんの?」


 ノエルを連れたイルメラが呆れたようでこちらにやってきた。


「バカそうなのに実は頭が良い女が来た」


 ユイカが不満そうに言う。

 確かにイルメラは平均で軽く90点を超えていた。


「バカそうなのは余計よ……あれ? フランクは?」


 今気付いたのか……


「寝てるんだって。時差ボケかな?」

「ふーん、面倒よねー。ベルリンに合わせてくれればいいのに」


 皆、自分のところに合わせてくれって思っているだろうよ。


「まあ、仕方がないだろ。腹減ったし、帰ろうぜ」

「あ、ちょっと待って」


 立ち上がると、イルメラが止めてくる。


「何だ?」

「あんた、午後から暇? デートしない? 今ならもう一人、可愛い子を付けるから」


 イルメラはそう言って、ユイカの肩を抱き寄せる。


「暇だが……デート? お前らと? ノエルは?」

「ノエルは授業。午後から薬草学だし」


 あ、それもそうか。

 セドリックやトウコもだ。


「デートねー……2人ってことは両手に花ってやつだな。でも、お前らだと、絶対に町でお茶しようとかではないんだろうなーって思う……」


 2人共、喧嘩屋だもん。


「お茶が良かった? じゃあ、自販機でスポドリでも奢ってあげるわ」


 スポドリ……


「私も奢って」

「良い感じのが狩れたらね」


 イルメラが自分より背の低いユイカの頭を撫でる。


「外?」

「うん。綺麗な湖に連れていってあげる」

「今日の基礎学は演習がなかったし、運動しよう」


 やっぱり湖の森に行くんだな……

 昨日、トウコが言っていた魔力が高いと魔物を呼び寄せやすいというノエルの都市伝説を真に受けたんだろう。


「俺達3人で大丈夫か?」

「問題ない」

「私が索敵するからあんたらがやってもいいわよ。私は適当にやるし」


 ユイカがピースし、イルメラがうんうんと頷いた。


「……大丈夫だと思う?」


 ノエルとセドリックを見比べる。


「イルメラさんがいれば大丈夫だと思います。イルメラさんは経験も豊富ですし」

「君らは各自が勝手にやって、もし、はぐれたとしてもどうにかなるでしょ」


 冷静そうなこの2人が言うなら大丈夫か。

 できたらどっちかついてきてほしいけど、さすがに授業をサボれとは言いにくい。


「じゃあ、暇だし、行くか」

「よしよし。じゃあ、午後から湖のところのセーフティーポイントに集合ね」

「わかった。1時くらいになると思う」


 弁当食って、準備をしたらそんなもんだろう。


「はいはい。よし、ユイカ、ご飯よ」

「うん。かつ丼食べる」


 重いもん食うなー……

 というか、あるの?


 俺達は教室を出ると、寮への丘を登っていく。

 そして、分岐点で女子3人と別れ、セドリックと2人で男子寮に向かう。


「ツカサ、学園は楽しいかい?」

「お前は俺の親か? 楽しいよ」

「誰が好き?」


 はい?


「女子でってこと?」

「そうだね」

「お前がそんなことを聞いてくるとは意外だ。もしや、誰かが好きで牽制か?」

「違うよ。ただちょっとアドバイスというか、忠告をしておこうと思ってね」


 セドリックの忠告……

 世界で五本の指に入る名門の次期当主様からの忠告なら大事かもしれん。


「何、何?」

「君はさ、魔力が大きいんだよ。これはすごいこと」

「ありがとよ。これが俺の取り柄だ」


 あと武術ね。


「その取り柄は皆が欲しいもの。これはわかる?」

「わかると思う……」


 この前の校長先生との会話を思い出す。

 俺の魔力を得られるなら自分の腕を落としても良いと言っていた。


「でもさ、君の魔力を奪うなんてできないじゃん?」

「知らんが、お前が言うならそうなんだろうな」


 腕輪が現在進行形で奪ってますけどね。


「でもさ、それを継承させることはできるんだよ」


 継承?


「どういうこと?」

「君の子供は魔力が高い魔法使いが生まれる可能性が高いってこと」


 ふーん……あっ……


「父さんから聞いたことあるわ。それでラ……母方の婆ちゃんが良い感じの嫁さんを用意してくれるとかくれないとか」

「そうそう、それ。気を付けなよ。君を狙う子も出てくるかもしれない」


 狙う……


「なんか悪い気はしないような……」


 モテモテってことでは?


「ちゃんと考えなよってこと。人間は良い人ばかりじゃないんだよ? 君を騙す人間も出てくるかもしれない」

「ふーん……お前は?」

「世界一のシーガー家の跡取りが友人を騙すわけないじゃないか。まあ、君が5歳の子に興味があるなら妹を紹介してあげるよってくらいかな」


 セドリックと妹ちゃんって結構、歳が離れてるな。


「5歳は遠慮しとく」

「だろうね」


 セドリックが笑った。


「あのさー、これから女子2人とデートだっていうのにそんなこと言うなよ」

「あれはデートかねぇ? まあ、イルメラとユイカは大丈夫でしょ」

「その心は?」

「考えるより口や手が出る人達だもん」


 確かに……

 企みとは無縁そうだ。


「じゃあ、ノエルは?」

「ふっ、あの子は一番問題ないよ。いや、トウコの次かな?」


 トウコはどうでもいいが、なんで断言できるんだろう?


「ノエルが良い奴だから?」

「それもあるねー。まあ、理由はわからなくてもいいよ。ただ、大丈夫ってことだけを覚えておけばいい」


 含みを持たすなー……


「ふーん……シャルは?」


 そう聞くと、セドリックがニコッと笑った。


「そこはノーコメント」

「え? イエスコメントしろよ」

「君は本当にバカだなー」

「うるせー、いけ好かない野郎」


 お前、さっきさりげに世界一のシーガー家って言ったろ。

 そういうところだぞ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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