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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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第069話 邪魔だなー……


 アンディ先輩にジョアン先輩と付き合っているのか聞いたのだが、はっきりとは明言せずに上手くあしらわれたので家に帰ることにした。

 家に帰り、部屋でゆっくりしていると、隣の部屋から音がしだした。

 どうやらイルメラ達と町の外に出ていたトウコも帰ってきたようだ。

 夕食まで漫画でも読もうと思い、棚から漫画を取っていると、急に扉が開いた。


「ノックしろー」


 そう言うと、トウコが開いている扉をコンコンとノックした。


「ちょっと聞いてよー」

「この世で一番意味のないのノックだな……何だ? ケンカでもしたか? でも、お兄ちゃんは女子のケンカの仲裁の仕方なんか知らんぞ」


 無理無理。


「女子じゃなくてもできないじゃん。それにケンカなんてしてないよ」

「じゃあ、何だ?」

「今日さー、朝から4人で湖に行ったわけ。それで結構、森の奥に行ってみたんだけど、狼しかなかった」


 ふーん……


「そういうこともあるだろ。で?」

「お兄ちゃんだけずるい!」


 ガキか……


「自然のことだから仕方がないだろ。俺に言われても困るわ」

「イルメラとユイカもズルいって言ってたよ」


 ガキしかおらんのか……


「俺のせいにすんな。お前らの日頃の行いが悪いんだろ」


 俺は良い。


「お兄ちゃんは魔力が高いじゃん? 一説によると、魔物は魔力が高いものに引き寄せられるという……」

「マジ?」


 嬉しいような嬉しくないような……


「いや、ノエルがそう言ってた。都市伝説的なことらしいけど」


 それ、優しいノエルがフォローしただけじゃね?


「何? お前、俺と湖に行きたいの? 今から一緒に行くか? 幼稚園の頃みたいに手を繋いでさ」


 なお、俺は絶対に嫌だ。


「嫌だよ! 今の時間帯はカップルの巣窟じゃん! 世界一きつい絵面!」


 うん。


「じゃあ、どうしろと? 言っておくが、来週の日曜は湖に行くからな」

「あ、そうなの? いつものフランクとセドリック?」

「いや、シャル。薬草採りに行く」


 多分、クロエもいると思うけど。


「そっちのいつものか……今日もデートで来週もデート?」

「今日はデートだけど、来週はどうかな……? この前のメイドさんも来ると思うし」

「なるほど……メイドさんも主を薄暗い森の中で狼がいるところには一人で行かせないか」


 その狼はどれのことだい?

 一人って言ってる時点で俺だろうけど。


「とにかく、日曜は行くなよ。土曜に行け」

「土曜は探知が使えるイルメラがダメなんだよー」

「お前やノエルは使えんのか?」


 ユイカは聞く必要がない。

 バカにしてるわけではないが、俺と同列だもん。


「使えない。習ってないもん」


 そうなのか……

 セドリックもフランクも使えたからメジャーな魔法かと思っていた。


「わかった、わかった。熊の金が入ったら分けてやるよ」


 どうせ欲しいのは金だろ。


「やったー。お兄ちゃん、優しい!」


 ほらね。


「いくらで売れるかは知らんぞ」

「何を買おーかなー? あ、漫画読も」


 自由人だな、こいつ……


 トウコは上機嫌になり、本棚から漫画を取り、その場で読みだした。

 俺も呆れながらもいつものことなので、気にせずにベッドに横になり、漫画を読む。

 すると、スマホの着信音が鳴り出した。


「電話ー」


 トウコが目の前の充電器に刺さっているスマホを指差す。


「スマホ、投げろ」

「会長だよー。デート後の今日は楽しかったね電話だな……はい」


 トウコがスマホをタップすると、着信音が止んだ。


『もしもし?』


 スマホからシャルの声が聞こえる。

 仕方がないのでベッドから降り、スマホのところに向かった。


「どうしたー?」

『あ、あの、さっきはごめんね』


 あ、別れ際のジョアン先輩の件か。


「そっけなく帰ったこと?」

『そ、そう、それ……』


 やっぱりか。

 あと、トウコ、何を誤解しているかは知らないが、双子の兄を軽蔑しきった目で見るんじゃない。

 俺は何もしてねーよ。


「ジョアン先輩はDクラスだから?」

『うん……あ、マズいって思っちゃった』

「まあ、シャルも立場ってものがあるからな。俺は気にしてないし、仕方がないんじゃない?」

『ごめんね……最後に空気を悪くしちゃって』


 今さら気にせんのだがなー。


『……お嬢様、謝るのはもう1つあるでしょ』


 なんかいるし……


『あ、あとね、魔法屋に寄ったけど、つまらなかったでしょ。ごめんね』

「別につまらなくはなかったぞ。さっきも言ったけど、見るものすべてが新鮮だったから楽しかった」


 まあ、シャルが何を言っているのかは理解できなかったけど。


『そ、そう?』

「そうそう。それにシャルが楽しそうだったし、良かったよ」

『……ツカサ様が良い人で良かったですねー。普通、デートであんなところに行きます?』


 クロエ、邪魔だな……


「……お兄ちゃん、また行こうよって誘いなよ。今なら絶対に断れないし、断らない」


 こいつも邪魔だな……


『ん? トウコさんがいる?』


 トウコの声が聞こえたらしい。


「いないよー」


 トウコがスマホに向かって答える。


『いるじゃないの。何してるの?』

「漫画読んでる」


 邪魔だから部屋に帰ってくれないかな?


『あなた達って本当に仲が良いわね』


 せーの……


「「全然、良くない。むしろ仲が悪いくらい」」


 ぴったり!


『……合わせないでって言ったでしょ。絶対に今のはわざと』


 双子芸なのに……

 今のは絶対にやれっていうフリだと思ったのに。


「会長ー、キャラメルマキアート味はどんな感じ? 無理なら別にいいんだけどさー」

『煽ってくる双子ねー……』


 俺は煽ってなくね?


「シャル、トウコは言葉のチョイスと語彙力が貧困なんだ」


 俺は豊富。


「私は豊富。貧困はお兄ちゃんじゃん。バカのくせに」


 うるせー。


『電話先でケンカしないでよ。キャラメルマキアート味はもうちょっとでできると思う。今日、魔法屋でヒントが浮かんだから』


 あの怪しい市場でキャラメルマキアートのヒントが浮かんだの?

 カエルの干物か?

 それ、大丈夫なんだろうか?


「会長、すごーい! 楽しみー」

『ふっ……見てなさい』


 この会話を学園ですればいいのにね。

 まあ、無理なんだろうけど。



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