表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/207

第063話 やだー


 視界が変わると、そこは建物の中であり、目の前にはフランクが立っていた。


「ここが工業区か?」

「合ってるぞ」


 まあ、そう念じたわけだからな。


「お待たせ」


 後ろから声がしたので振り向くと、セドリックも転移してきていた。


「よし、出るぞ」


 フランクがそう言ったので建物の外に出ると、どうやら丘の上のようで町並みを見渡すことができた。


「すげー、商業区と全然違うな」


 工業区は大きな工場みたいな建物や5階くらいの石造りのビルが並んでいた。


「工業区は商業区で売っている物を作ったり、研究したりするところだね。工業区って名前だけど、オフィス街って考えればいいよ」


 セドリックが説明してくれる。


「学校を卒業して、ここで働く感じ?」

「そういう人もいるね。さっきのジョアン先輩を例にすると、錬金術の資格があれば、どっかで雇ってくれるよ」


 なるほど……


「俺は?」

「実験台か警備員じゃない?」


 実験台……


「戦闘職はそんなもんか……」

「給料は良いよ? まあ、君は良いところの子なんだからどうにかなるでしょ」


 五本の指に入る名門の跡取りに言われるとちょっと嫌味だな……

 まあ、それはそれで大変なんだろうけど。


「それで? 熊をどこで売るんだ? というか、売れるのか?」

「普通は解体屋に引き取ってもらうね」

「いきなり行って、買い取ってくれるの?」

「いいや」


 セドリックが首を横に振る。


「ダメなん?」

「いきなり行っても無理だよ。昔は仲介業者もあったけど、悪徳すぎて取り締まりにあった。だから信用ある知り合いに引き取ってもらって、そこから各店に売ってもらう」

「そんなんいんの?」

「家には付き合いっていうものがあるからね。例えば、僕が羽織っているかなり高級な外套。これは昔から付き合いのある店のものなんだよ。ウチはそことしか取引しないし、そこからしか買わない。当然、店主とは何度も会ったことある。ほら? 信用ある知り合いだろ?」


 ブルジョアめって思うのは俺だけか?


「外套屋が熊を買うの? 毛皮?」

「いや、買わないよ。お店の人も横の繋がりがあるから流してくれるわけ」

「なるほど……俺はそんな知り合いはいない!」


 母さんか父さんに聞けば知ってるかもしれんが。


「もちろん、そういう生徒もいるよ。その時は先生に頼んだり、友人にでも頼めばいい」

「友人」


 セドリックを指差す。


「そうそう。そういうこと。ただ、今回はあっちの友人だね」


 セドリックがフランクを指差した。


「友人」


 セドリックにつられるようにフランクを指差す。


「はいはい……セドリックはあくまで例に出しただけでそんな良いところが熊をもらっても困る。言い方は悪いが、こういうのはもっと下だな」

「わかる。ブルジョアって思ったもん。久しぶりにセドリックのいけ好かない感じがした」


 ナチュラルに金持ちアピールをしてきた。


「確かにちょっと思ったな……とにかく、セドリックが言うような家の繋がりっていうのはウチにもある。そして、こういう熊はウチの方が良い」

「何の店?」

「鍛冶屋」


 おー!


「武器作ってるところ?」

「そうそう」


 かなり高級な外套屋よりかは良さそう。


「そういうわけで行こうか。あ、ツカサ、あそこに自動販売機があるよ。奢って」


 ブルジョアのくせに……


「まあ、良かろう。俺が路頭に迷ったらこの日の感謝を忘れずに飯を奢れよ」

「そんな日が来ないことを願うね。ご飯と言わずに雇ってあげるよ」


 持つべきものは友だな。

 これで将来、ニートという選択肢はなくなった。

 まあ、さすがに従兄のエリク君を頼るけども。


 俺は約束通り、2人にジュースを奢ると、飲みながら丘を降り、工業区を歩いていく。


「あんまり人がいないな」


 チラホラと大人を見るだけだ。

 制服を着た生徒はいない。


「学生はあまりこの辺には来ないからね」

「ふーん……」


 ちょっと場違いだなーと思って歩いていくと、フランクがとある工場らしき建物の前に立った。


「ここだ、ここ」

「工場か?」

「まあ、工房だけど、そんなところだな……えーっと」

「――あん!? フランクじゃねーか!」


 怒鳴るような声が聞こえてきたので振り向くと、かなりごつい白髪のおっさんか爺さんが立っていた。

 正直、年齢は想像がつかない。

 白髪だし、顔にしわがあるから結構いっていると思うが、それ以上に筋肉がすごいのだ。


「あ、クラウス。あんたのところに行こうと思っていたんだ」


 どうやらフランクの知り合いらしい。

 というか、この人が鍛冶屋の人か?

 確かにハンマーが似合いそうだ。


「まあ、そうだろうな。お前がここに来る用事はそんなものだろ。何だ? 武器でも欲しいのか? それともなんか仕留めたのか?」

「仕留めた方だ」

「ほーん……つーか、セドリックは知ってるが、そいつは誰だ?」


 クラウスと呼ばれた男が俺を指差す。


「あ、クラスの友達。5月から入学したんだ」

「ふーん……おい、名前は?」


 クラウスが聞いてきた。


「長瀬ツカサでーす。あ、長瀬が苗字」

「長瀬? どっかで聞いたような……」


 おっ!

 ついにウチの家も有名に?


「日本の名門です。まったく知られてないことで有名」

「いや、それ有名じゃねーし、名門か? 長瀬、長瀬……あ、なんかそんな名前の奴が昔、学園に通ってた気がするわ」

「そうなんですか?」


 親戚かね?


「ツカサ、クラウスは昔、学校で教師をしていたこともあるんだ」


 フランクが教えてくれる。


「へー……これが教師?」


 小声でフランクに聞く。


「……これで教師」


 フランクも小声で答えた。


「聞こえてんぞ、ガキ共……まあ、俺も教師に向いていたとは思ってないが……うーん、お前の親父の名前は何だ?」

「長瀬マコトですね」

「マコト……あー、あのバカップルの男の方」


 バカップル……

 嫌な予感がする。


「あ、その話はやめてください。親のそういうのとかマジで聞きたくないです。最悪なフレーズが聞こえてきました」

「確かに思春期の息子に言わん方がいいか……」


 めっちゃ真面目な顔になった……


「そうですよ」

「俺なら親を殴るしな……」


 そんなに!?

 うわっ……ウチの親、マジできちー。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[一言] ツカサにはラ・フォルジュの種馬という就職先ガガガガw
[一言] 後でトウコに両親の学生時代を知りたければこの鍛冶屋に行けとか密告しておこう! JKなら親の恋愛話でも興味を持つでしょ。
[一言] 名門の娘さんを貰い受けたんだから大恋愛だったんやろうなぁ 小吉先生にその辺りを書いてもらいたいなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ