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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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第057話 クロエ「別々に飲めばいいのに……」


 母さんから町の外に出る許可を得た俺達は2階に上がる。


「やったね! バカが頑張るとお母さんの涙腺が緩む作戦の成功!」


 お母さんを泣かせて町の外に行く作戦だろ。


「お前、どうすんの? やっぱりイルメラ達とか?」

「そうなるね。さすがに一人で行くのは危ないし、イルメラとユイカがいれば大丈夫」

「ノエルは?」

「後ろでニコニコしていると思う」


 まあ、そんな気はする。

 回復魔法が得意なんだっけ?


「まあ、イルメラは知らんが、ユイカがいれば大丈夫か」

「多分ね。というか、お兄ちゃん、ユイカとの勝負はどっちが勝ったの?」

「基礎学は俺」


 あとはどっこいどっこい。


「ふーん、まあ、どうでもいいか……あ、お兄ちゃん、これを会長に提出しておいてよ」


 トウコが2枚の紙を渡してくる。

 もちろん、親の承諾書だ。

 これを生徒会長であるシャルに提出し、シャルと担任のジェリー先生がオッケーを出せば、町の外に行ける。


「わかった。渡しておくわ」


 明日は呪学の授業で会うからその時でいいだろう。


「お願いねー」


 トウコがそう言って出ていったので漫画を読むことにした。


 そして、翌日の金曜日。

 午前中の授業を終え、午後からシャルと呪学の授業を受ける。

 相変わらず、さっぱりだったが、それでも授業を聞いていき、長い授業を終えた。


「むずい……」

「そうねー……まあ、こればっかりは仕方がないわよ」


 シャルがここまで言うレベルだからな。


「まあな。あ、改めてテスト勉強に付き合ってくれてありがとう。おかげで合格したし、良い点も取れたわ」

「それなら良かったわ。多分、これであなたが落ちたらかなりへこんでた」


 めちゃくちゃ付き合ってくれたからな。

 すみません……


「ちなみに、シャルは?」


 そう聞くと、シャルがドヤ顔になった。


「平均が95点を超えているとだけ言っておきましょう」


 すげっ……

 そりゃドヤ顔もしていいわ。


「俺を教えながらよくやるわ」

「というかね、人に教えるのってかなりの勉強なのよ? 自分が理解してないと教えられないし、何よりも復習になるもの」


 いつか俺がこのセリフを言える日が来るのだろうか?

 ……来世に期待だな。


「ふーん……まあ、ありがとうな。助かったわ」

「いえいえ。このくらいならお安い御用よ」


 良い奴。


「あ、それとさ、これをお願いしていい?」


 シャルに承諾書を渡す。


「んー? ああ……町の外に出る承諾書ね。出るんだ?」

「気になってたからな。母親を説得するのに疲れたぜ」

「これがあなたの言う『長瀬さんちの家庭事情的にちょっとした打算』でトウコさんが言ってた『長瀬さんちの大事なこと』ね……」


 勉強を頑張ってた理由がわかったらしい。


「ウチの母親は戦いとかケンカみたいな争いが嫌いな人なんだよ」

「なんとなくわかるわね……うん、確かにあなたとトウコさんの分ね。よく考えたらあなた達が兄妹ってこの時点でわかったわ」


 苗字は違えど、親の名前が一緒だからな。


「この時点で知るのとサプライズだと、どっちが嫌だった?」

「どっちも嫌ね。でも、今の方が引っ張りそうだわ」


 だと思うよ。


「内緒な」

「はいはい……いつまで隠し通せることやら」


 微妙かもなー……

 ユイカにすぐバレたし。


「とにかく、それを提出するわ」

「わかった。まあ、私は別段反対はしないし、このままジェリー先生に提出しておく」

「逆に反対することってあるのか?」

「あまりないわね。以前、ノエルが提出してきたけど、一人では行くなって忠告した程度よ」


 そんなもんか。

 というか、ノエルも提出しているのか。


「あいつは行くとしてもイルメラかユイカと行くから大丈夫だろ」

「そうねー……あと、この子」


 シャルがトウコの承諾書をペラペラと振る。

 まあ、トウコもイルメラ達と行くって言ってたしな。


「トウコの分だけ許可しないっていうのもありだぞ。笑える」

「私が笑えないことになるから嫌。突撃されたくないわ」

「私に勝ったと思っていい気になるな! 来い! 潰して許可を勝ち取ってやるって言うぞ」


 多分。


「言いそうだし、あなたが言うならそうなるんでしょうね。絶対に嫌よ」

「じゃあ、頼むわ」

「ええ、わかったわ。じゃあ、帰りましょうか」

「そうだな」


 俺達は教室を出て、階段を降りていった。

 そして、寮がある丘を登っていくと、男子寮と女子寮の分岐点で立ち止まる。


「じゃあ、また明日ね。明日は……あなたの家でいいわね?」


 順番的にはそう。


「うん。よろしくー」

「ええ。明日ね」


 お互いに手を振って別れると、家に帰ることにした。


 翌日はいつものように朝の公園で武術の訓練をし、終わったらウチで勉強会をした。

 なお、その際に母さんがシャルにめちゃくちゃ頭を下げ、礼を言っていた。

 しまいにはまた泣いたのでシャルが完全に引いていた。


 そんな土日も終え、また月曜となる。

 月曜は午前しかないので授業を終えると、家でスマホを弄りながらゆっくりと過ごしていた。

 すると、スマホ画面がいきなり変わった。


「あ、シャルだ」


 シャルからの着信だったのですぐに出る。


「もしもし?」

『あ、ツカサ? この前の町の外に出る許可だけど、下りたわよ』


 え?


「早くない?」

『確かに早いけど、あなた達の担任のジェリー先生はこの前の決闘の審判をしてくれたでしょ? だからあなたとトウコさんの実力はわかっているからすぐに許可を出してくれたのよ』


 なるほど。

 決闘様様だな。

 地味にあの決闘って良いことしかなかったりする。


「わかったー。ありがとうな」

『これが生徒会長の仕事だからね』


 これで1年なんだからすげーわ。


「生徒会長さー、今度の日曜空いてる?」

『ポーション作ってる。あなたが要望したキャラメルマキアート味……ねえ、これってよく考えると、あなたじゃなくてトウコさんじゃない?』


 うん。


「だなー。俺、キャラメルマキアートなんて飲んだことないし」

『やっぱり……キャラメルマキアートなんて味が複雑すぎるのよ』


 そうなん?


「無理ならいいぞ」


 トウコのだし。


『あなたは挑発が上手いわね……』


 いや、してない……

 勝手にシャルの火が点いただけ。


「いや、本当にいいよ? 俺、ソーダ味の方が良いし」

『ソーダ……ふっ、良いでしょう。あなた達兄妹の挑戦を受けます』


 錬金術のことになると、人が変わるな……


「う、うん……それで日曜なんだけど」

『日曜が何? 勉強でもしたいの?』


 勉強?

 ふっ……


「んなわけないじゃん。町の案内をしてよー」

『あー、それがあったわね。別にいいわよ』


 シャルがあっさり頷いてくれた。


「じゃあ、よろしく」

『はいはい……あ、待って。町の外に行くのはいいけど、気を付けなさいね。これはトウコさんにも伝えておいて』

「わかった」

『じゃあ、また金曜ね。ばいばい』


 シャルはそう言って電話を切った。


お読み頂き、ありがとうございます。

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