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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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第052話 おはー


 テーブルについて、しばらく待っていると、クロエが朝食を持ってきてくれた。

 メニューは食パンと目玉焼きとスープとサラダ、あと、ヨーグルトだ。


「美味しそうだけど、普通だな……」


 フレンチトーストではない。


「どういう朝食を想定していました?」


 クロエが聞いてくる。


「よくわかんないけど、色とりどりで豪華な感じかなー。お嬢様っぽいやつ」

「ふふっ、普通ですよ。お嬢様だって朝に鮭定食も食べられますし、なんなら昨日の晩はチンジャオロースでした」


 似合わねー……

 あ、でも、ウチの母親もよく納豆をかき混ぜてるわ。

 そんなものかもしれないな。


「へー……あ、いただきます」

「どうぞ」


 お腹が空いていたので朝食を食べ始めた。


「うん。美味しい」

「ありがとうございます。遠慮なく食べてください」


 そう言われたのでありがたく食べ進めていく。

 しかし、笑顔でじーっと見てくるメイドさんが非常に気になる。


「あのー、ずっとそこにいるの? 座らない?」

「メイドは座りません。ツカサ様の家にはメイドがいないのですか?」

「ウチは普通の庶民の家だけど……」


 いるわけないじゃん。


「ラ・フォルジュの家にはいるでしょう?」


 俺がラ・フォルジュの家の人間なことを知っているのか……

 シャルが言ったか?


「ラ・フォルジュの家には…………なんか使用人のおばちゃんがいたような?」


 どうだったかな?

 あの人、メイドなのかな?


「おそらくおられるでしょう。あそこの家は大きいですから」


 まあ……


「あ、あの、俺がラ・フォルジュの人間だということをどれくらいの人が知っているの?」

「大丈夫ですよ。イヴェールの者は知りません。それどころかお嬢様に悪いむ……男性のご友人がいることすら知らないでしょうね」


 悪いむ……


「そうですか……すみません、母がウチの婆ちゃんには言うなって言ってたのが気になったもんで」

「でしょうね……もちろん、こちらも同じで、とても旦那様には言えません」


 なら良かった。

 本当に良かったのかはわからんがね。


「めんどくさくてすみません」

「そんなことないですよ。お嬢様も楽しそうです」

「ですかねー?」

「ええ。しかし、ツカサ様。なんでお嬢様が親元を離れて、ここに住んでいるのかを聞かれないのですか?」


 あー……

 実はめっちゃ気になっている。

 次期当主じゃないの?

 というか、なんで日本?


「シャルが言いたくなさそうなんで聞かない。向こうが言うなら聞くけどさ……」


 誰にだって言いたくないことはある。

 俺だって、トウコとのことは隠しているし、家族であり、妹であるそのトウコにも腕輪のことは言っていない。


「そうですか……なるほど、なるほど」


 クロエが真顔になり、じーっと見てくる。


「なーに?」

「いえ……あ、もう食べ終えられましたね。食後のコーヒーでも用意しましょう」

「どもー」


 クロエは笑顔に戻り、食器を片付けると、すぐにコーヒーを持ってきてくれた。


「時にツカサ様、お嬢様のことをどう思います?」

「ちょっと不器用だけど優しいねー」

「ふむ……」


 クロエがまたもや真顔になる。


「何?」

「いえ、イヴェールとラ・フォルジュは非常に仲が悪いです。イヴェールではラ・フォルジュはものすごく悪く言われております」

「お互い様じゃない?」


 ウチも似たようなもんだろう。


「おそらくそうでしょうね。でも、実際にお会いして話してみると、普通です。むしろ、楽しいご兄妹のような気がします」

「トウコも?」

「ええ。先程、ツカサ様のご自宅でお会いしましたが、表情豊かな方に思えました」


 まあ、寝起きで1階に降りて、メイドさんがいたらそうなるだろう。


「基本、アホなんですよ。勉強ができるバカ」


 なお、俺は勉強ができないバカ。

 ……ただのバカだね。


「やはり学園の噂というのは昔から当てになりませんね。妹様が氷姫には見えませんでしたし」


 氷姫(笑)。


「シャルも高飛車でプライドの塊って言われてたな」

「笑っちゃいますよね。実際は気にしいでコンプレックスの塊です」


 まあ……

 言うな、この人……


「クロエはシャルと長いの?」

「ええ。もう何年もお仕えしております」


 だからくだけてるのだと思おう。


「ふーん……」

「お嬢様の昔の写真でも見ます?」

「見る」

「では、連絡先でも交換しましょうか。小出しにして送ります」


 そう言われたので今度はちゃんと持ってきたスマホを取り出した。


「なんで小出しなの?」

「一気に送っても楽しくないでしょう?」


 そんなもんかねー?


 俺とクロエが連絡先を交換し、残っているコーヒーを飲んでいると、上からどんどんという音が聞こえてきた。


「シャルかな?」

「そのようですね。7時半……思っていたより早いですが、起きられたようです。ちょっと見てきます」


 クロエはそう言うと、リビングを出ていく。

 そのまま待っていると、扉越しに話し声が聞こえてきた。


『なんで起こしてくれないのよ!? というか、目覚ましは!?』

『すみません。さすがにもう少し仮眠をとられた方が良いと思いまして』


 俺もそう思うね。


『このくらい問題ないわよ! それに約束してるのよ! もう7時半じゃないの! あれ? ツカサから連絡ないわね?』


 そりゃここにおるからな。


『えーっと……』


 声が聞こえなくなったと思ったらスマホの着信音が鳴った。

 画面を見ると、シャルだったので通話ボタンを押す。


「もしもしー?」

『あ、ツカサ!? ごめんね! 寝過ごし……あれ? 声がダブる……というか、今、着信音が? あれ?』


 急に扉が開いたと思ったら髪を下ろし、高そうなシルクっぽい寝巻を着たシャルがスマホを耳に当てて立っていた。


「おはよう」

「おはよう……え!? なんでいるの!?」


 なんでかね?

 俺もいまいちわかんないんだよな。


「さあ? しかし、何かデジャブだと思ったらいつぞやのトウコと一緒だな。サプライズされたトウコの気持ちがわかった?」

「いや! あの時は私もサプライズだったわよ!」


 あ、そうだったわ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] チッ、人前に出れるパジャマなのか。 ネグリジェとか薄着だったら嬉しいのにね!
[良い点] クロエさん超楽しそう
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