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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第2章

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50/207

第050話 朝に遭遇する確率0パーセント


「シャル?」

『あ、ごめん。親孝行は良いことよ。お母さん、苦労してそうだし……』

「シャル?」

『……私、悪くなくない? とにかく、勉強くらいならいつでも見てあげるから頑張りなさい。ユイカさんに勝ちたいんでしょ』


 はーい。


「土日はいつもの感じで良いと思うけど、平日はどうしよっか?」

『授業が終わったらこっちで合流しましょう。ファミレスでもいいし、そちらに伺っても良いわ』

「じゃあ、そんな感じで。あ、土曜の朝は武術な」

『わかってるわよ。そろそろあなたを投げられそうな気がするのよ』


 それは無理。

 俺はトウコみたいに前のめりの勝気じゃないからな。


「頑張れー」

『頑張るのはあなたの勉強よ。明日からやるわよ』

「わかった。ありがとうね」

『いいえ。あなたに特訓してもらったおかげでトウコさんに勝てたしね。じゃあ、また明日』


 シャルはそう言って電話を切った。


「あんにゃろ……最後に言い逃げしやがった」


 多分、お前が再戦だって言う前に切ったんだろうよ。


「実際、負けただろ」

「100回やったら99回勝つ」

「一回負けたら死ぬと思えよ」


 まあ、シャル曰く、魔力が残っていなかったらしいからそういう意味で勝ったのはトウコだけど。


「お兄ちゃん、私は会長に負けるわけにはいかないの」

「なんで? ラ・フォルジュだから?」

「私があの人に勝ってるところがある?」


 顔、スタイル、性格……


「俺、男に生まれて良かったわ」

「フォローしろよ! バーカ、バーカ!」


 トウコは文句を言いながら部屋を出ていってしまった。


「いやー、お前みたいなのが好きなのもいるよ……きっと、多分……おそらく」

『聞こえてるよ! フォローするならちゃんとしろ! 同じ顔のくせに!』


 うぜー。




 ◆◇◆




 翌日からシャルとの勉強会が始まった。

 平日とはいえ、時差があるため、こっちの世界の昼の2時には午後の授業も終える。

 俺とシャルはそこから合流し、ウチやファミレスで一緒に勉強をしていった。

 なお、シャルが平日にウチに来た際はウチの母親はすでに『勉強をこんなに頑張って……』と言って泣いていた。

 そんな感じで火曜から金曜まで勉強し、土曜日になった。


 この日はもちろん、学校の授業はないが、シャルと武術の訓練をする日なので早起きし、公園に向かう。

 公園に着くと、待ち合わせ場所であるベンチには誰もいなかったので腰掛けて待つことにした。


 正直、シャルがまだ来ていないことが意外だった。

 待ち合わせ時間にはなっていないし、遅刻ではないのだが、学園でもこっちでも待ち合わせした際はいつもシャルの方が先に来ているからだ。


 俺はそのまま公園の時計を見ながらぼーっと待つ。

 しかし、約束の時間を5分過ぎたのにシャルは一向に現れなかった。


「どうしよ……」


 スマホを家に忘れてしまった……

 空間魔法の難点はこういった忘れ物が増えることだ。

 ついつい空間魔法の中に収納していると思い込んでしまう。


「うーん……」


 取りに帰るか、このまま待つか……

 取りに帰り、その間にシャルが来ることもある。

 もしくは、シャルが寝坊して、まだ寝ていることも十分にありえる。


「いや、取りに帰るか……」


 迷っても答えは出ないと思い、立ち上がる。

 すると、遠くから誰かが近づいてきていることに気付いた。


 シャルかなーと思って、よく見てみると、その人物は女性ではあったが、シャルではない。

 だが、お目当ての人物ではなかったにも関わらず、目を逸らすことはできなかった。


 何故ならその人物は朝の公園には似つかわしくないメイド服を着ている女性だからだ。

 しかも、その女性ははっきりと俺を見ており、俺に近づいてきている。


「え……」


 どうしよ……

 すんげー目が合ってる……


「おはようございます」


 メイドさんはついに俺の前に来ると、頭を下げて挨拶してきた。


「お、おはようございます……」


 挨拶を返すと、メイドさんが頭を上げ、にっこりと笑う。

 メイドさんは可愛らしいが、年上だと思う。

 姿勢も良く、青みがかかったショートの黒髪も似合っている。

 そして、どう見ても日本人ではなさそうだ。

 もちろん、会ったことも見たこともない人物である。


「長瀬ツカサ様でしょうか?」

「あ、はい」


 名前を知ってる?

 知り合いだろうか?

 メイド喫茶には行ったことないんだが……


「わたくし、シャルリーヌお嬢様の侍女のクロエと申します」


 え!?


「次女!? どう見てもシャルより年上に見えますけど!? というか、長女もいんの!?」


 嘘つけ!


「……言い方が悪かったですね。シャルリーヌお嬢様のメイドを務めておりますクロエです」


 あ、メイドさんか。


「メイド服ですもんね」

「はい。メイドです」


 へー、メイドさんかー。

 さすがは名門だなー。


「あの、それでメイドさんが何の用です? シャルは?」

「はい。本日、お嬢様がツカサ様とここで約束をしていたと思うのですが、お嬢様はまだ寝ております」


 寝坊かー。


「まあ、早い時間だしねー」


 昨日は金曜だったのでちょっと遅くまで勉強会をしていたし、仕方がないだろう。


「いえ、実は夜中にイヴェールの御当主様、つまりお嬢様の御父上から急遽、連絡があり、遅くまで電話で話をしていたのです」


 あらら。

 次期当主だし、そういうのもあるのもかもしれない。


「シャルのお父さん、時差を考えなかったのかねー?」

「まあ、そういうことだと思います」


 フランスと日本は8時間の時差がある。

 向こうの夕方はこっちでは深夜だ。


「そりゃ寝てても仕方がないよ。起こさずに寝させるべきだわ」

「ええ。実際、起こさずに寝かせております。目覚ましもこっそり切った次第です。何せ、お嬢様が就寝なさったのは4時ですので」


 待ち合わせ時間が6時だから2時間前だ。

 準備を考えると、寝られる時間は1時間あるか、ないかだな。


「あのー……一応、聞きますけど、クロエさんは寝てます?」


 シャルの就寝時間を知っていて、目覚ましも切ったってことはこの人もその時間まで起きていたことになる。


「クロエとお呼びください。寝てません」


 えー……


お読み頂き、ありがとうございます。

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[良い点] 「フォローしろよ! バーカ、バーカ!」 良い妹だ . . . (*´ω`*) [一言] 『聞こえてるよ! フォローするならちゃんとしろ! 同じ顔のくせに!』 コレはアレだな あだちみつる…
[良い点] 次女笑った
[一言] 実はそんなに年上じゃなくて怒らせてたりしない??
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