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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第1章

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第033話 いつも手袋を持ち歩いているの?


 校舎を出た俺達は寮を目指して歩いていく。

 すると、寮への丘を登る坂の前に人が集まっているのが見えた。

 というか、前にも見た光景だ。


「まーたかい」

「飽きませんねー。先週もやってたというのに……」


 イルメラとノエルが呆れる。


「ハァ……行ってくる」


 イルメラはため息をついたが、小走りでトウコのもとに向かった。

 俺達もイルメラの後に続く。


「またお前達か……」


 マチアスが俺達を見て、嫌そうな声を出した。


「どう考えてもそれは私達のセリフ。トウコ、何かしたの?」

「別に何もしてません」


 トウコが涼しい顔で答える。


「マチアス、邪魔」


 ユイカが文句を言った。


「あん? まだいたのかバカ娘」

「私はバカじゃない」


 いやー……


「バカは自分でバカと気付かんか。つくづく愚かだな」

「マチアス、もしかして、ケンカ売ってる? 買うよ?」


 ユイカが殺気を出す。


「やめろ」


 ユイカの肩を掴むと、下がらせた。


「何故、止める?」

「いいからやめとけ。こんな奴と喧嘩しても良いことなんてない。勝っても負けても気分が悪いだけだ」

「むぅ……」


 ユイカは不満そうな顔をしたが、殺気を引っ込める。


「ふん、そっちの男は分をわきまえているようだな。日本人ごときが口を出すな、××××」

「あん?」


 トウコがお嬢様っぽくない顔で差別用語を言ったマチアスを睨んだ。


「何だ、ラ・フォルジュ? そういえば、お前もアジア人の顔立ちだな? ラ・フォルジュの家は下等な魔法使いしかいない日本なんかに嫁――ぐはっ!」


 マチアス君は何かを言ってる途中で後ろに飛んでいく。


「き、貴様、何をする!?」


 マチアス君は尻もちをつきながら右足を出している俺に向かって怒鳴った。


「ツカサ、さっきのセリフは? 止めてきたくせに」


 ユイカが文句を言う。


「勝っても負けても気分が悪いならぶっ飛ばした方がいいだろ」


 人の親を侮辱するのは許さん。


「この劣等が! 殺すっ!」


 マチアスが立ち上がった。


「いいぞ。かかってこい。腕の一本は覚悟しろよ」

「長瀬君、余計なことをしないでください」


 トウコが止めてくる。


「ラ・フォルジュさんは関係ない」

「関係あるでしょ。マチアス君は私にケンカを売ってるんです」

「その前に俺が売った。下がってろ、アホ」

「アホ? 強化魔法しか能のないバカが下がれや、こら…………え?」


 俺を睨んで文句を言っていたトウコは言葉を止めると、呆然と足元を見下ろす。

 そして、落ちている物を確認すると、ゆっくりとシャルを見た。

 シャルがトウコに手袋を投げたのだ。


「か、会長!」

「何を……」


 取り巻きが驚いてシャルを見る。


「ふーん……いいでしょう。ぶっ潰す!」


 トウコがシャルを睨んだ。


「……すまん、ついていけてないんだが、何あれ?」


 小声でノエルに確認する。


「……会長がトウコさんに決闘を申し込んだんです」


 ノエルが小声で教えてくれた。


「手袋を投げると決闘なん?」

「そうですね」


 へー……って、シャルは何を考えているんだ!?


 じーっとシャルを見ていると、俺の腹部に何かが当たる。

 足元を見ていると、白い手袋が落ちていた。


「何? お前も決闘を申し込んだん?」


 手袋を投げてきたマチアスに聞く。


「そうだ。俺を足蹴にするなど絶対に許さん」

「ほう……まあ、どっちみち、そうなるとは思っていたから構わんぞ。ほら、来い」


 マチアスに向かって手招きした。


「ここじゃない。演習場だ」


 演習場?

 あー、あの死なないし、ケガもしない魔法がかかっている場所か。


「演習場でやるのか? ケガもしない決闘に何の意味がある? いいから来い」

「は? お前は何を言っているんだ? 演習場に決まっているだろ」

「お前こそ何を言ってる? 決闘は遊びじゃないだろ」


 演習場って……


「ツカサ、やめなさい」

「ツカサ、お前の気持ちはわからんでもないが、演習場以外での戦闘は厳禁って教えただろ。普通に退学になるぞ」


 イルメラとフランクが止めてくる。


「ふーん……じゃあ、演習場か。さっさと行くぞ」


 退学はちょっとマズいのだ。

 腕輪のこともあるし、母さんが泣く。


「その度胸だけは買ってやろう。劣等共に力の差を教えてやる」


 俺とマチアスは演習場に向かって歩き出した。


「あのー……演習場は2年生が……」


 ノエルがそう言うと、俺とマチアスの足が止まる。


「そういえば、そうだったな」

「チッ! 2年か」


 さすがに授業の邪魔はできない。


「決闘をするなら土日にしろよ。土日なら先生が立ち会ってくれるぞ」


 立ち会う?

 あ、決闘だからか。

 ついケンカな気分で先生はマズいだろって思ってしまった。


「いいだろう。おい、お前、名前は?」


 フランクの言葉に頷いたマチアスが聞いてくる。


「長瀬ツカサだ」

「ツカサだな。土曜の昼に演習場だ。いいな?」


 土曜……

 シャルとの勉強会が……って、シャルもか。


「いいぞ。昼の1時な。飯は食わん方が良いぞ。戻すから」

「面白いことを言うな」


 マチアスと睨み合った。


「会長もそれでいいですか?」


 トウコがシャルに確認する。


「いいでしょう」


 シャルは頷くと、踵を返す。

 そして、マチアス達と共に丘を登っていった。


「トウコ、良いの?」


 イルメラがトウコに聞く。


「構いません。売られたケンカは買います」


 トウコはそう言うと、寮に戻るために丘を登っていった。

 すると、残された全員が俺を見てくる。


「マチアスって強いん?」

「知らんのかい」

「よくそれでケンカを売れるね」


 フランクとセドリックが呆れた。


「親を侮辱する奴は許さん」


 ぶっ飛ばす。


「うーん、まあ……」

「気持ちはわかるけど……」


 フランクとセドリックが何かを言いたそうにしている。


「私は良いと思うわよ。あのムカつくマチアスをあんたのバカ力で潰しなさい」

「私がやりたかったのにー」

「お手柔らかにお願いしますよ……」


 女子は三者三様の反応をした。

 性格がよく出ていると思う。


お読み頂き、ありがとうございます。

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[気になる点] これシャルが決闘申し込んだの、ツカサがトウコと言い争いを始めたのでラ・フォルジュとツカサが争いになるのを防ぎたかったのかな? [一言] そうだとしたら、シャルはえらくけなげだ。 ただそ…
[一言] 蛮族!蛮族!蛮族!
[気になる点] シャルは負けるために決闘申し込んだ!?
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