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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第1章

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第032話 アドバイス


 午後からはさらに難しい呪学を教えてもらいながら一緒に勉強をした。

 そして、家に帰り、シャルのことを考える。


 シャルは俺と同じ名門と呼ばれる家の子だが、俺とはまったく違う悩みがある。

 それが次期当主とお気楽な立場の差なのかはわからない。

 もしかしたら元来の性格の差かもしれない。

 だけど、俺にはシャルが眩しかった。

 本人は苦しんでいるが、俺にはそこまで情熱を持ったものがない。

 もちろん、腕のことはあるが、それでも魔法や家に人生を捧げる気はない。


 他の連中もおそらく、自分の将来を決め、それに向かって動いているだろう。

 あのトウコにしても将来を決め、ラ・フォルジュを名乗った。


「何をするか、か……」


 俺はふと、スマホを手に取り、長瀬の爺ちゃんに電話をしてみる。

 しかし、何コールも呼び出し音が鳴っているが、一向に出ない。


「そりゃそうか……」


 指名手配だもんなーと思いながら電話を切ろうとすると、呼び出し音が止んだ。


『ツカサか?』


 爺ちゃんの声だ。


「おー……繋がるとは思わんかった」

『出る気はなかったが、あまりにもしつこいから何かあったのかなと思ってな』

「あったよー。腕が飛びそう」

『大丈夫、大丈夫。お前なら大丈夫じゃ』


 何を根拠に言っているんだろう?


「爺ちゃん、今、何してんの? 皆が探しているぞ」

『それは秘密じゃな。それよりも学園はどうじゃ?』


 俺が魔法学園に通っているのを知っているらしい。


「むずい。場違い感がすごい」

『最初はそんなもんじゃ。すぐに慣れる』


 そんなもんかねー?


「爺ちゃん、俺は何になればいいんだろう?」

『何とは?』

「将来の話。皆、目標というか将来を決めていて焦る」

『バカじゃなー。そんなもんはなくてもいい』


 はい?


「なんで?」

『その将来を決めているという子達も本当の意味で決めたわけではない。決めるのはずっと先じゃ』

「そうなの?」

『そりゃそうじゃろ。人生は何十年も続くのにその一生をたかが10やそこらのガキが決められるわけがない。親や家に言われたことに疑問を持ってないだけじゃ。いずれ、疑問を持ち、悩む。そして、その時に本当の意味で決める』


 そういや、俺達って高校生だな。

 未成年だ。


「俺は呪学を学んでいるけど、それでいいのか?」

『いいぞ。適当に学べ。いずれ、自分の道が見えてくる』

「爺ちゃん、すげー」

『当たり前じゃ。お前の何倍生きていると思っとるんじゃ』


 知らない。

 爺ちゃんって何歳だっけ?


「その何倍も生きてる爺が腕輪を盗んでもいいの?」

『それには深い深い理由があるんじゃ』


 へー……


「まあいいや。ねえ、やっぱりこの腕輪をどうにかしてよ。金はだっさいって」


 金ぴかの腕輪を着けている高校生っているか?


『マジックで黒く塗れ。それはお前に必要なものじゃ』


 マジックかー。


「ふーん……爺ちゃんさ、イヴェールって知ってる?」

『そりゃな。ジゼルさんとこのライバルの家じゃろ』

「そこの次期当主さんが自分に才能ないって悩んでいるんだけど、何て答えればいいの?」

『イヴェールの次期当主……女子か?』


 シャルのことを知ってのかね? 


「そうそう。めっちゃ美人」

『ふーむ……何もせんでいいぞ。そのままのお前でよい』

「普通に接しろってこと?」

『そうじゃ。どうせ他所の家のことなんか知らんのだから放っておけ。向こうもお前にそんなもんは求めていない』


 ひどい言い方だが、実際にそうなんだよな。

 イヴェールの家のこと知らんし。


「わかったー。あ、爺ちゃんさ、俺、トライデントが欲しいから金くれ」

『バッカじゃのー……入学祝の金はやるが、もっと良いものを買え。じゃあの』


 爺ちゃんが電話を切った。


「うーん……まあ、よくわからんから普通に学校生活を送るか」


 俺はスマホを投げ出すと、漫画を読みだした。


 翌日も家でゴロゴロと過ごし、漫画を読む。

 なお、気付いたら勉強机に封筒が置いてあり、中には3万円と『しっかり勉強せえよ』という爺ちゃんの手紙が入っていた。

 もちろん、親には言わずに財布に入れた。


 そして、またもや月曜になり、1週間が始まる。

 基礎学の授業を受け、昼になると、午後からの薬草学を受けるかを悩んでいた。


「薬草学かー」

「楽しいですよ。それに受けた方が話が広がって良いって思います」


 ノエルが笑顔で勧めてくる。


「話が広がるって?」

「ほらー……ね?」


 ノエルがニヤニヤと笑う。

 多分、シャルのことを言っているのだろう。

 ノエルはシャルが錬金術が趣味で薬草学を受けているのを知っているのだ。


「にわか知識で広がるか? それに俺はまったく興味ないんだぞ」

「…………ダメそうですね」


 よし、薬草学はいいや。

 帰って寝よ。


「何の話だ?」

「さあ?」


 フランクとイルメラが顔を合わせながら首を傾げる。


「薬草学はつまんないし、午後から演習場で勝負しようよ。リベンジする」


 ユイカが誘ってくる。


「使えるん? 他のクラスが授業してないか?」

「えーっと……あ、ダメだ。2年の戦闘魔法の授業が入っている」


 ユイカが時間割を見ながら落ち込む。


「また今度なー」

「仕方がない。町にでも遊びに行くか。イルメラー」

「はいはい。どうせ暇だしねー。トウコでも誘おうかしら?」


 女子連中は薬草学を受けるノエルを抜きに町に行くらしい。


「トウコは?」


 ユイカが前の席の方を見るが、すでに俺達以外は誰もいなかった。


「トウコはさっさと帰るからね。寮で聞いてみましょう。どうせ食堂で弁当を食べているわ」


 俺と同じやつね。


「じゃあ、帰ろー」


 俺達は教室を出ると、寮に戻ることにした。


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将来に悩んでる、学生です。なんとなく勉強して、入った大学で自分がしたいことを見つけられずに悩んでました。この話を読んでもう少しきままに生きてみるのもいいなと思えました。すごく胸に染み込みました。ありが…
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