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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第1章

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第029話 大変


 自室に戻った俺は制服から部屋着に着替えると、隣の部屋に向かう。


「トウコー」

『なーにー?』

「ちょっといいか?」

『着替え中だけど、いいよー』


 許可を得たので部屋に入ると、トウコも帰ったばかりのようで部屋着に着替えていた。


「お前、今日のあれは何?」

「あー、あれね。うっざいわー。わざわざ通せんぼしてきた」


 トウコはものすごく嫌そうな顔をし、着替え終えると、ベッドに腰かける。


「いつもあんなん?」

「あのマチアスっていう野郎がいる時はね」

「シャルは?」

「シャル? ああ、生徒会長か。あの人はあまりしゃべんないね。ほぼ睨んでくるだけ」


 うーん、シャルの苦悩が見えるな……


「シャルと仲良くできないのか?」

「あれでどうやって仲良くするのよ。生徒会長ってプライドの塊のスーパーエリート様だよ? 無理無理。生まれも育ちも違うし」


 うーん、またもやシャルの苦悩が見えるな……


「あとさ、お前のあのしゃべり方は何?」

「お嬢様しゃべり。なんか名門って感じがするでしょ?」


 ただの敬語だった気がするが……


「名門っぽくはないかなー?」

「そりゃお兄ちゃんが素の私を知ってるからでしょ。あ、それよりもお兄ちゃん、ユイカと何してたの? えらい仲良さそうだけったけど」


 バレたって言ったら怒りそうだな……


「昨日、演習場で殺し合いをしたんだ。昨日の敵は今日の友って言うだろう?」

「あー、ユイカって、肉体言語の人だもんね。まあ、お兄ちゃんもだけど」


 お前もだろ。


「お前、自由派か?」

「何それ?」


 え?


「なんかDクラスが自由派でCクラスが血統派って聞いたぞ」

「お兄ちゃん、何言ってんの? そんな漫画みたいなことがあるわけないじゃん」


 こいつ、知らんのか……


「イルメラかノエルに聞いてみ?」

「え? マジで言ってんの?」

「マジ、マジ」

「……ちょっと寮に行ってくる」


 トウコは立ち上がると、ゲートの黒い扉の方に行く。


「着替えたら? お嬢様はそんな部屋着を着ないだろ」


 トウコはゆったりとしたTシャツにハーフパンツだ。


「そうする」

「俺、漫画でも読むわ」


 トウコが着替えだしたので部屋を出ていく。


「だからなんで閉めないのー」


 トウコが文句を言ってきたので引き返し、扉を閉じて、部屋に戻った。

 そして、漫画を読みながら夕食までの時間を潰していると、急に扉が開き、トウコが部屋に入ってくる。


「何か知らない間に自由派になってたー!」


 どうやらイルメラかノエルに聞いたようだ。


「まあ、実際、そうだろ。ラ・フォルジュの家は実家だから大事だけど、血統とか言われてピンとくるか?」


 俺はよくわからない。

 そもそも、ほとんどの家を知らない。


「まあ、そうだけど、勝手に派閥認定はひどくない?」

「お前がいるからっていう理由でDクラスになった俺よりいいだろ」

「そりゃ元ニートの裏口野郎よりかはいいけど」


 誰が裏口野郎だ。


「イルメラは何か言ってたか?」

「『血統重視の結果があれー?』って、マチアスをバカにしてた」


 ホント、素直なやっちゃ。


「まあ、どうでもいいだろ。お前の適性テストの結果でそうなっただけ。多分、俺が受けてもそうなったと思うぞ」

「どっちみち、お兄ちゃんと同じクラス……」

「どうかねー? AクラスとBクラスもあるだろ」


 どんなクラスかは知らんけど。


「うーん、まあ、今のところバレてないし、いっかー」


 いやー、ユイカにはバレたな。

 顔はともかく、匂いが一緒って初めて言われたわ。


「なあ、話は変わるけど、薬草学って何がおもろいん?」

「楽しいじゃん。HP回復しそうだし」


 同じことを言うんじゃねーよ。


「ツカサー、トウコー、ご飯ですよー」


 1階から母さんの声が聞こえてくる。


「飯だ、飯」

「ハンバーグだー」


 俺達はリビングに降り、夕食を食べることにした。

 そして、翌日からはいつもの授業と駄弁るだけの1週間が始まった。

 やはり授業は難しいが、それでも授業をちゃんと聞き、少しでも理解しようと頑張った。

 正直、こんなに真面目に授業を受けたのは初めてだ。


「ツカサ。お前、今日も呪学の授業を受けるのか?」


 金曜の午前中の授業を終えると、フランクが聞いてくる。


「ああ。受ける」

「よくやるぜ。ついていけるか?」

「頑張る」

「ふーん……まあ、頑張れ。俺らは帰る」


 当然のようにフランクは歴史は受けないんだな。


「セドリックは歴史を受けないのか?」

「歴史なんかとっくの前に習ったよ。それにあまり魔法の役には立たないしね。あればっかりは完全な座学だよ」


 座学……

 トウコは好きって言ってたけど、そんなもんより呪学だな。


「ねえ、ツカサって呪学を受けるの? なんで?」


 ユイカが聞いてくる。


「解呪に興味があるだけだ」

「へー……意外」


 だろうな。


「そういうわけで俺はお前らが遊んでいる間に勉強だ」

「何故、私が遊ぶと決めつける? 歴史を受けるかもしれないじゃん」

「受けるのか?」

「受けない」


 受けないんじゃん。


「ユイカさんは私と勉強会なんですよ」

「え?」


 ノエルが笑顔で言うと、ユイカが驚いた顔でノエルを見た。


「そうなん?」

「ええ。このままだとテストがひどい結果になりそうなんで」


 ユイカが逃げようとして立ち上がったのだが、ノエルがユイカの首を掴む。


「頑張れー」

「嫌だ……」


 ユイカがずーんっと沈んだところで俺達は昼食を食べに寮に戻ることにした。


お読み頂き、ありがとうございます。

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