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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第1章

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第028話 派閥


 女子と別れ、男子寮に戻った俺達は昼食を食べると、再び、教室に向かった。

 そして、午後の薬草学を受ける。

 なお、イルメラとユイカはおらず、女子はトウコとノエルしかいない。

 さらにはフランクもおらず、俺はノエルとセドリックの3人で並んで授業を受けていた。


「あいつらが受けない理由がよくわかるな……」


 小声でつぶやく。


「ひたすら草の説明だからねー」


 セドリックはそう言いつつ、ちゃんとノートを取っていた。


「お前は受けるんだな……」

「前に言ったでしょ。僕は広く浅く」


 当主はそんなもんかね?


「ノエルは楽しいか?」


 今度はノエルに確認する。


「好きなんですよ。実家では薬草の栽培もしています」


 へー……

 家庭菜園みたいな感じかね?


「つまらん……」


 すげー眠くなる。


「だから言ったじゃないか」

「ツカサさんは好きそうじゃないですよね」


 これ、どうすっかなー。

 解呪関係に役に立つとは思えんし……

 まあ、来週までに考えるか。


「なあ、ちょっと聞いてもいいか?」

「何? マチアスのこと?」

「そうそれ。あいつ、誰?」


 やけに俺達Dクラスに突っかかったのが気になった。


「マチアス・ジャカール。フランスの武家の名門の次男坊だね。そこそこ魔力もあるし、優秀だとは思うけど、性格があれ」


 あれかー。


「フランスってことはさっきノエルが言ってたイヴェール派ってやつ?」

「そうですね。ジャカール家はイヴェール派の筆頭です」


 ノエルも説明してくれる。


「あれは腰巾着って言うんだよ」


 そんな感じはしたな。


「ノーコメントです」


 ノエルもそう思っているらしい。


「イヴェール派だからラ・フォルジュさんに絡んでたのかね?」

「それもあるけど、別の理由もある」


 まだあんの?


「何かあるのか?」


 トウコが生意気だから?


「学校の派閥だね。この学園って実は血筋を重視する血統派とそれに反する自由派に分かれている。そして、その最たるものが自由派のDクラスと血統派のCクラスの対立」


 え? 何それ?


「俺、自由派なん?」

「知らない。僕にしてもフランクにしてもそんな派閥に入ったことはないね。そもそも興味ないよ」


 真のエリートは気にしないのか。


「ノエルは?」

「すみません、自由派です」


 この子、謝ってばかりだな。


「自由派ってどんなの?」

「魔法使いって歴史があるじゃないですか? その中で名門と呼ばれる家があります。セドリックさんの家やトウコさんの家、他にも生徒会長の家とかです」


 それは知ってる。

 長瀬の家だって歴史ある名門だ。

 多分……


「あるね」

「そうなってくると、選民思想じゃないですけど、血筋を重視する考え方を持つ人が出てくるわけです」

「そういうこともあるだろうね」


 知らんけど。


「でも、それって良くない考えな気がするんですよ。別に家柄だけで魔法使いの価値は決まりません。はっきり言えば、現代社会の考えじゃないんです」


 まあ、差別っぽいしな。


「ノエルはそれが嫌で自由派? イヴェール派なのに?」

「イヴェール派なのにです。まあ、別にこれは個人の考えなので家は関係ないです。ついてないのは生徒会長と同年代だったことですね、イヴェール派なのに見事に思想が対立しちゃいました」


 可哀想に……


「そういう思想を自己申告してクラス分けしたのか?」

「入学試験の適性試験にそういう項目があったんですよ。それで振り分けです。なんかそういう問題がいくつかありましたよね?」


 受けてないから知らない……

 婆ちゃんのトウコと一緒にした方が良いだろうという余計なお世話でDクラスです。


「ノエル、ツカサが試験を受けてここにいると思う? ユイカと同じだよ。察してあげて」

「あっ……すみません」


 謝んなっての。

 というか、ユイカも裏口入学かい。


「じゃあ、セドリックも適性試験で自由派か?」

「そうなんじゃない? でも、さっきも言ったけど、興味ないよ。君だって興味ないだろ?」

「興味ない以前だな。考えが大人すぎて何を言ってるんだろうって気分」

「君はそれでいいよ。くだらないことを考えるよりまずは自分の成績」


 なんでだろう?

 このスーパーエリートさんが同い年とは思えない。


「ノエル、ノエル。イヴェール派ってことはシャルのことを知ってるのか?」

「もちろん知ってますよ。何なら中学も同じでした……まあ、マチアスさんもですけど」


 あいつもかい。


「仲良かったん?」

「あー……微妙です。あの人、いっつもあんな感じであまりしゃべらないんですよ。友人も数人だったと思います」

「へー……」


 しゃべらないようにしているって言ってたしなー。


「ツカサさんは生徒会長と仲が良いんですか?」

「最初に学園を案内してくれたんだよ」

「ふむふむ……なんかロマンスの匂いがします。詳しく教えてください」


 やだ。


「君達、授業を受けなよ……」


 セドリックに苦言を呈されたので話をやめ、真面目に授業を受けることにする。

 そして、つまらない授業を終えると、めちゃくちゃ質問してくるノエルを煙に巻き、寮に戻った。


「あー、疲れた。あいつ、めっちゃ聞いてきやがったな」


 ノエルは目がキラキラしてた。


「ノエルはああいう話題が好きなんだよ。気を付けな」


 セドリックは笑いながら忠告してくる。


「そうするわ」

「ああ……それとね、ツカサ。僕は別に気にしないし、どうでもいいんだけど、あまりドツボにハマるなよ」


 ん?


「ドツボって?」

「イヴェールとラ・フォルジュの仲の悪さはウチの国にまで伝わってるくらいにヤバいよ?」

「そうなん?」


 いまいちそれがわかんないんだよなー。


「そうなんだよ。君、トウコと生徒会長のどっちの味方?」

「可愛い方」


 もちろん、シャルね。


「ハァ……いや、ごめん、忘れて。君はそのままでいい。じゃあ、また明日ね」

「またなー」


 俺はセドリックと別れると、自室に戻った。


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