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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第1章

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第027話 仕方ないよね


 俺達は教室を出ると、昼食を食べるために寮に向かう。


「午後からって休みか? 先週は休みだったっけど」


 フランクに確認する。


「時間割を確認しろよ。薬草学の授業だよ。先週は薬草学の先生が出張だったからなかったんだ」


 薬草学……

 トウコが好きって言ってたやつか。


「私、薬草学嫌い。意味わかんないし」


 ユイカが首を横に振った。


「あんたは実技以外全部嫌いでしょうが」


 イルメラがツッコむ。


「ツカサはどうする? 薬草学は専門的だから受けない人も多いけど」


 セドリックが聞いてきた。


「うーん、どんなのか気になるし、受けてみるかなー? もしかしたら合うかもしれん」

「絶対に合わないと思うけど、試してみるのは良いと思うよ」

「お前にゃ無理だ」


 まあ、薬草学って名前だけでつまらなそうだもんな。


 俺達は話しながら寮がある丘を登っていく。

 すると、前方に複数の生徒が立ち止まっていた。

 しかも、複数の生徒が一人の女子と睨み合うように立っている。


「あ、トウコだ……それに……」


 イルメラがそうつぶやいて立ち止まったので俺達も立ち止まる。


「何してんのかな?」

「いつものでしょ。私、ちょっと行ってくるわ」


 イルメラが生徒達のもとに行く。


「僕らはどうする?」


 セドリックが聞いてくるが、正直、俺は行きたくない。

 何故なら前方にはトウコと睨み合うシャルがいたからだ。

 構図としては睨み合うトウコとシャル、そして、シャルの取り巻き達って感じ。

 さらにそこに気の強いイルメラが加わったので良い予感はまったくしない。


「行きたくないが、あそこでやられると帰れん」

「確かにねー……よくもまあ、揉めるもんだよ……」


 セドリックが呆れながら歩き始めたので俺達も続く。


「何の用だ、ヘンゼルトの小娘?」


 シャルの斜め後ろにいる男子がイルメラを小バカにしたような顔で聞く。


「小娘? 同い年で何を言ってるの? 年齢もわからないほどバカなのかしら?」


 イルメラがさらにバカにしたような感じで言い返した。


「チッ! 失せろ。俺達はこのラ・フォルジュの娘に用があるんだ」


 トウコに用があるらしい。

 まあ、そうだろうな。


「トウコ、こいつらに用事があるの?」

「ない」


 イルメラが聞くと、トウコがシャルを睨んだまま即答する。

 なお、シャルもトウコを睨んでいる。

 シャルのこんな顔は初めて見た。


「あなた達、邪魔。ここは通り道。ケンカするなら演習場に行って」


 ユイカがそう言うと、睨み合っている生徒達がユイカを見る。

 その際、シャルと目が合ったが、すぐに目を逸らされた。


「今度はバカが来たか」


 またもや男子が小バカにしたような顔になる。


「バカ?」


 ユイカが嬉しそうな顔で俺を見てくる。


「え? 俺?」

「多分、そう」


 違うと思うなー。


「お前に言ったんだよ、赤羽のバカ。この学園にふさわしくないからさっさとやめろ」

「私だった……」

「そらそうだろ」


 明らかにお前を見てたぞ、そいつ。


「お前は誰だ? 見たことないが……」


 名前も知らない男子が今度は俺を見てくる。


「先週、入学したんだ。よろしく」

「ああ……ということはお前も劣等のDクラスか」


 え? Dクラスって劣等なん?


「そうなのか?」


 俺と同じくロクに魔法が使えない劣等そうなユイカの頭を撫でながらイルメラに聞く。


「こいつらが言ってるだけよ……くっ、でも、不利ね」


 イルメラは俺とユイカを見て、苦々しい顔になる。


「味方がいない……」

「どうせバカだよ……」


 けっ。


「ふん。失せろ、劣等共」

「優等生さんは耳が悪いらしい。私は邪魔だからどけと言った」


 ユイカが男子を睨む。


「あん? 極東のちっちゃい島国出身のくせに俺に意見するか?」

「マチアス、あなたも島国でしょ」


 へー……そうなんだ。


「は? 俺はフランスだが?」


 あれ?


「あれれ? フランスって島国……」


 それ、イギリスだと思うな。

 セドリックの出身地を調べたから間違いないと思う。


「ユイカ、俺達はしゃべらない方が良いと思う。端に行ってよう」

「うん……」


 俺はしょぼんとしたユイカを引っ張って端に避けた。


「ふん、本当に劣等しかおらんな。所詮は下等な血族しかおらんDクラスだ」

「ウチの家とイヴェールの家は同じくらいですね……生徒会長、言われてますよ」


 トウコが言い返した。

 しかも、敬語だ。


「お前の家とイヴェールが一緒なわけないだろうが」

「そうですか」

「マチアス、家柄の争いはやめた方が良いんじゃないかな? 僕がいるのを忘れてない?」


 珍しくセドリックが言い争いに入った。


「くっ、シーガー……」


 マチアスとやらが苦々しい顔になった。


「セドリックの家ってすごいのか?」


 小声でユイカに聞いてみる。


「知らない」


 お前も知らんのかい。


「シーガーの家は世界で五指に入る家柄です」


 いつの間にこちらに来ていたノエルが小声で教えてくれた。


「マジ? あいつ、次期当主じゃなかったっけ?」

「ええ。すごい方なんです」


 まったく見えん。


「人は見かけによらない」

「ただのキザ野郎じゃなかったんだな」

「紳士な方なんですよ……」


 紳士ねー。

 英国紳士という言葉は聞いたことあるな。


「会長、どうします?」


 マチアスがシャルに聞く。

 というか、シャルって一言も発してないな。


「人が集まりすぎましたね。行きましょう」


 シャルはそう言って、トウコの横をすり抜け、丘を降りていく。


「か、会長……チッ、覚えておけ」


 マチアスはそう言って、シャルを追うと、他の取り巻きも追いかけていった。


「トウコ、何あれ?」


 イルメラがトウコに聞く。


「さあ? 私には関係ないです」


 トウコはそれだけ言って丘を登っていき、女子寮の方に行ってしまった。


「いつもあんな感じなん?」


 ノエルに聞く。


「まあ、そうですね……ごめんなさい、ウチの国ってイヴェール派とラ・フォルジュ派で真っ二つなんです」

「別に謝らなくてもいいぞ」


 俺、実はおもっくそ当事者だし。


「だよねー……あいた」


 ユイカが余計なことを言ったので軽く頭を叩いた。


「どうしました?」


 俺達のやりとりを見ていたノエルが首を傾げる。


「いや……ちなみに、ノエルはどっち派?」

「すみません……アントワーヌの家はイヴェール派です」


 そりゃ複雑だわ。

 ノエルがこの話題になると、いつも苦笑いになる理由がよくわかった。


「謝らなくてもいいってば。俺ら、ただの学生だぜ? 気にしない、気にしない」


 だって、ラ・フォルジュの家の俺もシャル派だもん。


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