第206話 被害妄想
その場は解散となったので家に帰り、トウコの部屋に行ってみる。
すると、トウコとユイカがまたしてもゲームをしていた。
「お前ら、寝てないのか?」
「仮眠は取ったよ」
「私達も夏休みを満喫するんだ」
まあ、気持ちはわからないでもないな。
「明日は昼からジェニー先生の部屋な。一応、作戦会議だ」
「りょーかい」
「ツカサ、市街地はどうだった?」
ユイカが聞いてくる。
「5人倒して15ポイントだ。2人がユキの千剣、かいくぐった1人はロナルドにやられ、ジョアン先輩はイルメラが倒した。最後の女子はその3人に囲まれて降参だ」
「おー、完勝!」
「お兄ちゃん、何もしてないね」
してないね。
「お前もだろ」
「いやはやまったく。このままでは体育祭や運動会で活躍しかしてこなかった長瀬さんちの双子が廃ってしまうね」
パン食い競争でぶっちぎり1位のトウコちゃんね。
「ユイカ、お前、ラ・フォルジュ派なのか?」
「らしいよ。お父さんが長瀬の双子と仲良くしなさいって言ってた。言われなくてもクラスメイトなんだけどね」
やはりか。
「んー? 何の話?」
トウコが首を傾げる。
「ユイカとユキはお前を助けてくれただろ? その礼にエリク君が行ったらしいけど、ついでに両家を派閥に入れたんだと」
「へー。お兄ちゃん、ユキかユイカと結婚するの?」
なんで俺がするんだよ。
「ツカサ、ごめん。子供が可哀想だからツカサとは結婚できない」
夏休みにそういう話をしたな。
「俺だって可哀想って思うわ。クラウスも言ってたけど、俺は賢い子と結婚する。それで中和するんだ」
あと可愛くて優しい子。
「私、1人、とんでもなく賢いサイドテール女子を知ってるよ……」
「私も……なんか花火を作ってた人」
シャルリーヌさんですかね?
「それよりもユイカ、なるべくトウコといてくれ」
「まあ、そうするし、今もそうしてるけど……ツカサは?」
「俺も基本的にフランクやセドリックと行動する」
ジョアン先輩が何もせずに今さら出てきたとはどうしても思えない。
「わかった。私がトウコを守ろう」
「蝶々を見つけてどっかに行かないでよ」
天井に頭をぶつけたモンシロチョウさんが何か言ってる。
「私はそんなにバカじゃない」
「はいはい」
俺は部屋を出ると、自室に戻る。
この日はゆっくりと過ごし、身体を休めた。
そして翌日、10時前に寮を出ると、男子寮と女子寮の分岐点でトウコとユイカと合流し、ジェニー先生の部屋に向かう。
部屋にはミシェルさんはいなかったが、ジェニー先生とユキ、ロナルドがいた。
「あれ? ミシェルさんは?」
ジェニー先生に聞く。
「ミシェル先生は本家の方に行っておられますよ。報告等もあるでしょうし、仕方がないでしょう」
ラ・フォルジュの家か。
「ミシェル先生はいないが、5人が揃ったわけだし、作戦会議を始めようか」
リーダーのユキが仕切る。
「頼むわー」
「うむ。まずだが、現在、我々が21ポイントでトップだ」
おー!
「昨日の完勝が効いたな」
「ああ。2位は14ポイントのキースの町だ。3位が8ポイントだし、まず、このキースの町との争いになると見ていい。というか、1位、2位がほぼ決定だな」
そうなんだ……
「なんか盛り上がりに欠けるな」
「他校のやる気だろうな。せめて中継すればもっと盛り上がっただろうに」
ユキって目立ちたがり屋だしな。
「それで明日の作戦は?」
「考えたが、いらんな。校内ということはそこまで広いフィールドということはないと思う。各個撃破で少しでもポイントを稼ぐというのでいい」
そっちの方がトウコやユイカが生きるか。
「そうするか。3位が8ポイントなら1人倒せば2位以上は確定する」
もし、3位のチームが最大である15ポイントを取ったとしても23ポイント。
21ポイントの俺達は3ポイント以上を取ればいい。
「そういうことだな。まあ、これまで8ポイントしか取れていないチームが15ポイントを取れるとは思えん。だから気楽に挑もうって言いたいが、この際だし、他を圧倒しようじゃないか。我々はそれができるメンバーだ」
「この5人なら揉めることもないしな」
「仲良しラ・フォルジュ派だもんね」
そういや5人共、ラ・フォルジュ派だ。
「イヴェール派ってなんであんなのなんだろう?」
ユイカが首を傾げる。
「ユイカ、ラ・フォルジュもイヴェールもたいして変わらん。イヴェールが突っかかってくるのは武家であるということと代表格のトウコとジュリエットの差だ。誰が見ても魔法使いとしてはトウコの方が上なんだ。でも、イヴェール派はそれを認めるわけにはいかない。ジュリエットは次期当主だからな」
やっぱりトウコが悪いんだな。
「トウコ、シャルに土下座してこい」
「だーかーらー、知らないっての。決闘を申し込まれ、負けたのも私だし、会長側についた兄にチョークスリーパーで殺されかけたのも私だっての」
そう聞くと、トウコが被害者のようだ。
「もう1点……ジュリエットは男子に人気というのもある」
「あれれー? お兄ちゃんのせいな気がものすごくするなー? 仇敵の家なのに一緒に生まれてきた妹を裏切り、毎週末、家を行き来してラブコメってるボンクラニートのせいだと思うなー」
気のせいだと思う。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




