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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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第199話 苦労人ミシェル


 丘を登っていき、家に帰ると、すぐに隣のトウコ部屋に行く。

 そして、トウコから受け取った鍵を使ってゲートをくぐると、女子寮のトウコの部屋にやってきた。


 こちらの部屋はぬいぐるみまみれということもなくデスクや棚がある程度でものすごく質素だ。

 というか、使っている形跡がまるでない。


「婆ちゃんの課題の研究とやらは一切してないようだな……」


 デスクにつき、待っていると、ノックの音が部屋に響いたので入口の方に向かい、そーっと扉を開ける。

 すると、そこにはユキとシャルが立っていた。


「……早く入れ。フルボッコは嫌だ」

「はいはい」


 2人は呆れながらも部屋に入り、扉を閉める。


「まあ、私達も利用しているから何とも言えないけど、女子寮と男子寮が君らの家を経由して繋がっているのは問題になりそうだね」


 ユキは苦笑いを浮かべた。


「兄妹で同じところから来ているんだから仕方がないだろ。一応、言っておくけど、ここに来たのは今日が初めてだからな」

「わかってるよ。それでそんなリスクを冒してまで呼んだ理由は?」

「お前はこの前のトウコ誘拐未遂事件に関わっているから教えておく。他校の生徒の中にジョアン先輩がいた。春先に俺を狙った元ウチの先輩だ」


 ユキとユイカはこのことを説明したので知っているはずだ。


「あー、あれか……ジョアンって10人に選抜されるような人なの?」

「いや、戦闘はからしきなはずだ。でも、悪い錬金術師だし、死霊魔法も使える悪い魔法使いだ」

「典型的すぎて笑うね。しかし、そうなるとその学校はちょっと危険だ。どこの学校?」

「えーっと、ミシェルさんが言うにはコンテの町らしい」


 確かそんな名前。


「コンテ……」

「なるほどね……」


 シャルが腕を組んで考えだし、ユキが苦笑いを浮かべながら頷いた。


「知ってるのか?」

「隣町よ」

「隣といってもかなり距離は離れているけどね。直近の町って言った方が正しい」


 あー……


「当たりっぽいな」

「私もそうだと思うわ」

「一番怪しいのは一番近いところだからね。昔から隣国同士は仲が悪いもんさ」


 うーん……


「ユキ、とにかく、気を付けてくれ。お前も魔力が高い」

「無差別に狙っているわけではないと思うけどね。まあ、気を付けるよ。もっとも、私はあまり一人で動かないから問題ないけどね。一応は当主だから」


 そういやいつも外で会う時はロナルドといるな。

 町でもユイカと一緒だった。


「シャルも気を付けて」

「私はそもそも外に出ない」


 そうでしたね……

 海には来てくれたけど、あれも半ば無理やりだった。


「ツカサ君、この件は私だけでなく、皆で共有する件じゃないか?」

「ミシェルさんが言うにはこの対抗戦が終わるまで待ってほしいってさ」

「悠長なことを……でも、少なくとも、対抗戦に参加する10名には言っておくべきだろう。私は緘口令が敷かれようとロナルドには言うぞ。当主として、この町より身内を信用するからな」


 それもそうだなー……

 他のイルメラ、アーサー、ヘンリー、オスカーも知っておくべきかもしれない。


「シャル、どう思う?」

「私もユキに同感よ。さすがにジョアン先輩がいるなら他の4人にも言っておくべきよ。悪いけど、私も立場上、アーサーとヘンリーには言わないといけない」


 イヴェール派だもんな。


「そっかー……ちょっとミシェルさんと話してみるわ」

「あの人、まだ作戦……ん?」


 ユキが扉の方を見る。

 すると、扉が開き、トウコとユイカが入ってきた。


「あわわ、女子寮に男子がー」

「人の部屋を逢引きに使わないでよ」


 アホ。


「これが逢引きに見えるか? ジョアン先輩の件を話してたんだよ。それよりも何してんの? 作戦会議はどうした?」

「開始5分で決裂」


 ハァ……

 本当にイヴェール派だけでやった方が良いんじゃないかって思えてくるな。

 でも、そうするとシャルが可哀想なことになる。


「そっか。ミシェルさんは?」

「どっかに行った。校長先生のところじゃない?」


 あー、そうかも。


「じゃあ、午後からにするか……ユイカは何しに来たんだ?」

「暇だから遊びに来た。ツカサ、漫画貸して」


 自由だな、こいつ。


「まあ、午後まで暇だしな」


 俺とトウコはユイカと共にゲートをくぐってウチに帰る。

 シャルはクロエと相談するために自分の部屋に帰り、ユキもロナルドと話すために帰っていった。

 そして、家で時間を潰しながら待ち、昼前にはユイカも交えて昼食を食べると、ジェニー先生の部屋に向かう。

 すると、他の7人とミシェルさんがすでにおり、皆でジェニー先生が操作するノートパソコンを見ていた。


「何をしてんだ?」

「午前の結果が出てるのよ」


 イルメラが答えた。


「ほー……」


 俺達もパソコンを覗いてみる。

 どうやら午前中は2戦行われたようだ。


「ポイント的にはプラス6、プラス2、プラス2、マイナス2ね。やっぱり大きな動きはなさそう」


 2人撃破したチームが1つ、1人撃破したが、1人撃破されたチームが2つ、2人撃破されたチームが1つか。


「2時間あってもこれなら森は相当、視界が狭いのかもな」

「多分、そうでしょう。あとはどこの学校も様子見ってところでしょうね。ユイカ、頑張りなさいよ。あんたのホームグラウンドなんだから」

「任せるがいい」


 大丈夫かね?


「時間よ。参加する5名は向かってちょうだい」


 ミシェルさんがそう言うと、トウコ、ユイカ、アーサー、ヘンリー、オスカーの5人がゲートをくぐっていった。


「ミシェルさん、決裂したって聞きましたけど?」

「ダメだわ、あれ。とにかく、ユイカとトウコさんに攻めてもらうしかない。最悪、撃破されてもあの2人なら相手も倒す。それで最低でもプラス4よ」


 バーサーカーだもんな。


「それで良いんですか、師匠?」

「良くない……終わったらみっちりやる……」


 頑張れ。


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