表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

198/207

第198話 久しぶり


 俺達は一番右端に行き、一列で並んだ。

 すると、壇上に髭を生やしたおっさんが立った。


「……ツカサ、あれが運営委員会の重鎮の一人のハンネス・ヘルダーリンよ」


 前にいるシャルが小声で教えてくれる。


「……ドイツ?」


 後ろのトウコがシャルに聞く。


「……ええ。イルメラさんは知っていると思うからそっちに聞いた方が良いわよ」


 同郷だしな。


「……ほうほう」


 トウコが後ろのイルメラと内緒話を始めた。


「皆さん、よく集まってくれました」


 なんかハンネスさんの話が始まった。


「……シャル、他の学校の生徒はどうだ?」

「……皆、強そうね。でも、あなた達兄妹の敵ではないと思う」


 それはそうだと思う。

 そこまでの魔力を持っているようには思えない。

 でも、俺が気になっているのは……


「……3つ隣の一番後ろを見てくれ」


 3つ隣の列は黒を基調とした制服だ。


「……一番後ろ……っ! え? ジョアン先輩!? なんでいるのよ……」


 3つ隣の一番後ろにいるウェーブがかかった茶髪の女生徒はかつて、俺達の学校に在籍し、ウォーレス先生と共に裏切ったスパイのジョアン先輩だった。


「ミシェルさんと話してくる」


 俺は後ろでハンネスさんの話も聞かずにイルメラとペチャクチャとしゃべっているトウコの両肩を掴むと、くるりと回転し、場所を入れ替えた。


「あれれ?」


 アホっぽいリアクションをするトウコを無視し、イルメラ、ユイカと同じように位置を入れ替え、一番後ろにいるミシェルさんのもとにやってきた。


「……ねえ、あなた達は人の話を聞かないの? ペチャクチャ、ペチャクチャと……」


 ミシェルさんが呆れ切っている。


「……ああいう長話は不要です。それよりも3つ隣にジョアン先輩がいますよ」

「……え!? ホ、ホントだ……ジョアン……」


 俺達がじーっと見ていると、ジョアン先輩がこちらを見ながら笑顔で手を振ってきた。


「……舐めてます?」

「……そうとしか思えないわ。とはいえ、ここで事は起こせない」


 それはそうだろうな。


「……あそこの町は?」

「……コンテの町よ……あそこがあなた達兄妹を狙っている町ということかしら? いや、それは早計か。またスパイもあり得る」


 ミシェルさんが考え込む。


「……ジョアン先輩は戦闘タイプの魔法使いじゃないです。シャルと同じ錬金術師ですよ。そんな人がこの対抗戦に選ばれますかね?」

「……思惑があるってこと?」

「……さあ? でも、少なくとも、転校して間もないのに戦闘タイプじゃないジョアン先輩は選ばれないと思います」


 ただあの人は悪い錬金術師でもあるからウォーレス先生が使っていた強化薬を使ってくるという線も十分にあり得る。


「……帰ったら緊急会議だわ。全員に通達すると思うけど、ツカサ君とトウコさんは絶対に一人で行動しないでちょうだい」

「……わかりました。ユイカ、トウコにこっちに来るように言ってくれ」


 前にいるユイカに耳打ちする。


「……あい」


 ユイカは前にいるイルメラに伝言ゲームのように耳打ちをし、イルメラもトウコに耳打ちをした。

 すると、トウコがイルメラの両肩を掴み、くるっと回転して位置を入れ替える。

 さらにはユイカとも入れ替わり、こちらにやってくる。

 なお、左隣の列にいる他校の生徒達は『こいつら、何をしてるんだ?』という怪訝な表情で俺達を見ていたがスルーだ。


「……何?」


 トウコが聞いてくる。


「……あそこにこっちを見ている茶髪の女子がいるだろ?」

「……いるね。あれ? どっかで見たような?」


 先輩とはいえ、同じDクラスだし、女子寮でも会うことはあるだろう。


「……あれがジョアン先輩だ」

「……敵か」


 春先のウォーレス先生事件はトウコにもミシェルさんが説明している。


「……顔と魔力を忘れるな。それとあの学校は注意だ。対抗戦でぶつかる時があったらユイカと一緒に動け」

「……了解。ユイカ、将来性コンビの力を見せるよ」


 将来性?

 諦めろ。


「……おー」


 ユイカが拳を上げたので周りの生徒だけでなく、話をしているハンネスさんが一瞬止まった。


「……俺ら、目立ってません?」


 ミシェルさんに聞いてみる。


「……悪目立ちね。好き勝手しすぎ」


 それは悪かったと思い、ハンネスさんの話を聞いていく。

 内容は『今回のことは授業の一環』とか『交流が目的』とかやっぱりたいしたことじゃなかった。

 大事なことと言えば、試合がある時はここに来て、対戦相手と顔合わせをしたのちにゲートで会場に飛ぶということくらいだ。


 その後も話を聞いていくと、数分で話は終わり、解散を告げられる。

 終わった瞬間にジョアン先輩の方を見たが、先輩はニコッと微笑むと、そそくさと自分のところのゲートをくぐってしまった。


「ツカサ、どうだった?」


 シャルがこちらに来て、聞いてくる。


「ジョアン先輩で間違いない。ただ、思惑がちょっとわからない。シャルも気を付けてくれ。向こうからしたらシャルも関係者だ」


 シャルもあの場にいたのだ。


「わかった。とにかく、戻りましょう。ここはすぐに第一試合が始まるわ」


 他校の生徒達は続々と帰っていっているが、2校の5名だけは動く気配がない。


「そうだな」


 俺達は通ってきたゲートをくぐると、ジェニー先生の部屋に戻ってきた。


「今日は午後から森での試合がありますから参加する5名は残ってください。他は解散していいわ」


 ミシェルさんがそう言ったのでトウコに近づく。


「頑張れよ」

「言われないでもそうする」

「……鍵を寄こせ」

「……はい」


 トウコから鍵を受け取ると、ミシェルさんと午後から試合がある5名を残し、退室する。


「明日の作戦会議をするから午後から集まってちょうだい。じゃあ、それまで解散ね」


 シャルがそう言うと解散となった。

 とはいえ、皆、帰る方向は一緒なので5人で寮に向かう。


「……ユキ、ちょっと」


 ユキの近くに行き、声量を落として声をかける。


「んー?」


 ユキは首を傾げたものの、歩くスピードを落としてくれた。


「……この後、トウコの部屋に来てくれ」

「……愛の告白ではなさそうだね?」


 すぐボケる……


「……ないな。とにかく、来てくれ。そこで話す」

「……わかった」


 ユキが頷いたのでシャルを見る。

 すると、シャルもこちらを見ていたので頷くと、わかったようで頷き返してくれた。


「ツーカーだねぇ……」


 いや、それだけのことがあったんだよ。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
ユキはお茶目でバーサーカーだけど、実力も責任感もあり頭も回るから、とりあえず頼れるな なんならミシェル先生よりずっと頼りになる
1年生だけの大会じゃなかったっけ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ