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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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197/207

第197話 た、ただ者じゃない……!


 翌日から学校の掲示板で町対抗での魔法大会が開催される旨が発表された。

 また授業の初めに先生から発表があったが、誰が出るかは詮索しないようにと言われた。

 おそらく、スパイを気にしてのことだと思うが、多分、ほとんどの生徒がトウコや俺が出ることはわかっていると思う。

 何故そう思うかというと、なんとなく、そういう視線を感じたからだ。

 とはいえ、先生から緘口令が出たことで特にそういう話題が出ることもなく、いつもの1週間が過ぎていった。

 当然、土曜は勉強会だ。

 『来週から対抗戦だよ?』と言ったのだが、やはり勉強の方が大事って言われた。

 まあ、腕のことがあるので真面目にシャルリーヌ先生に授業をしてもらった。


 そして、日曜日。

 この日はDクラス決起会ということでイルメラとユイカがトウコと共に俺の部屋にやってきた。


「いい? やるからには勝つわよ? 全勝優勝しか見ちゃダメ」


 先週とはまったく違うことを言っているが、まあ、いつものイルメラだ。

 すぐに血が沸くお祭り女だから仕方がない。


「おー」

「勝てるかねー?」


 ユイカは拳を上げたが、トウコが腕を組んで首を傾げた。


「ん? どうしたの、バーサーカー?」

「バーサーカーじゃねーし。知的な聖女様だし」


 聖女?


「あんたに聖女の要素はないわよ。それでどうしたわけ?」

「私達は先陣でしょ? だから金曜に5人で集まったわけ」


 リーダーの命で戦う前に作戦会議をしようということになっている。

 市街地戦に出る俺達は森戦の結果を見た後に集まることになっているので明日の夕方だ。


「どうだったわけ? 決裂は目に見えているけど」

「見事に決裂よ。私とユイカ、アーサーとヘンリーが対立」


 でしょうね。


「オスカーは?」

「フォローはしてたね。でも、あいつら、うざいわー」


 トウコがものすごく嫌な顔をする。


「そんなに?」

「ラ・フォルジュの指示は聞けないだってさ。うるせーわ!」

「想像通りね。で? 作戦は?」

「私とユイカは攻める。男子3人は知らない」


 ダメだこりゃ。


「まだ視界が狭いであろう森なのが救いね。正直、そこは点取り合戦にはならないでしょうから」


 最初だから手探りだろうし、森自体が動きづらいわな。

 ほとんどが見に回ると思う。


「トウコ、ミシェルさんは何て?」


 師匠だろ。


「森だったら攻めていいって。特にユイカは頑張れだってさ」

「任せておくといい。にんにん」


 ユイカが両手で忍者の印っぽいのを作った。


「まあ、頑張れ」

「いい? Dクラスの強さを見せつけるよ。そんでもって『血統派はそんなものですか?』って煽るの」


 イルメラも好きだねー。


「よし、『イヴェール派はこんなものですか?』って煽ろう」

「トウコ、ジュリエットに負けたじゃん」


 ユイカがツッコむ。


「あんたもね。それにあれは兄の裏切りだから」

「私はトウコに邪魔されただけ」

「お粗末チビコンビねー……」


 謎の決起会とやらはこんな感じの雑談で終わった。


 そして、翌日の月曜日。

 いつものように早い時間に起き、寮を出ると、集合場所となっているジェニー先生の部屋に向かう。

 すると、まあ、同じタイミングに出たから仕方がないが、男子寮と女子寮の分岐点でトウコと遭遇した。


「おはよう」

「おはよう。リビングでも聞いたけどね」


 一緒に朝ご飯を食べたしな。


「今日、月曜だぜ?」

「うん。だーれもいないね」


 いつもなら学校に向かう生徒がここを降っている。

 でも、今日は誰もいない。

 まあ、休みだからだ。


「なんか選ばれなければ良かったって思えてきたな」

「ね? 1週間も休みなわけでしょ? 夏休みを取り返すチャンスだったよ」


 ホントだわ。


「こんな不公平なことがあるか? 俺達、勝っても何も得られないんだぜ?」

「ひどいよね。お兄ちゃんはお義姉ちゃんに何かねだったら?」


 ねだる?


「何を?」

「デートとか?」

「それは普通に誘うわ」


 場所によるだろうが、シャルは断らないだろう。

 多分、運動系はダメだろうけど。


「けっ。お兄ちゃんさー、お義姉ちゃんに背が高くなる薬を作ってって言っておいて。足がスラーっとして、ドーンな感じ」


 なんでこいつは頭が良いのにバカっぽいんだろうな。


「マジで言うが、やめとけ。お前のそのガキっぽいのが許されるのは身長のおかげだ。モデル体型の美女だったらマジで感じ悪いぞ」

「私はお義姉ちゃんみたいになれないのかー」


 無理無理。

 そもそもそんな奴は俺の妹じゃない。


 俺達は丘を降りていくと、D棟に入り、ジェニー先生の部屋に向かう。

 すると、ジェニー先生とミシェルさんと共にすでに他の8人も来ていた。


「双子、遅い」


 イルメラがぴしゃりと文句を言ってきた。

 まだ時刻は7時50分だから文句を言われる筋合いはない。


「俺達は4時起きだぞ」

「そうそう」


 せーの……


「「寮生とは違うの」」


 声を揃えると、イルメラが笑顔になった。


「ぷぷっ、双子だ……」


 イルメラは良いなー。


「これで全員ね。今日は私が引率します。準備はいいんですか?」


 ミシェルさんが俺達の大事なやりとりをスルーして聞いてくる。


「あのー、あの扉から行くんですか?」


 部屋にはこの前来た時にはなかった黒い扉がある。


「そうね。参加する人は基本的にここから行ってもらうわ。まずは開会式。面倒だからAクラスから順番に並んでちょうだい」

「私が先頭か」


 ユキがドヤ顔で扉の前に立つと、ロナルド、オスカー、アーサー、ヘンリー、シャルと続いた。


「他校の生徒も先頭が目を閉じている女子だったらびっくりするかもな」

「明らかにただ者じゃないしね」


 俺とトウコがそう言いながら続くと、イルメラ、ユイカと並ぶ。


「よし、ユキさん、行ってちょうだい」

「白川家当主が参る!」


 ミシェルさんが勧めると、ユキがかっこつけて扉を開け、ゲートをくぐっていった。

 ユキに続くように1人1人が続いていくと、俺もゲートをくぐる。

 すると、視界がどこぞのホールに変わった。


 かなり広いホールは白くて綺麗であるが、何かが置いてあるわけではない。

 ただ、俺達とは異なる制服を着ている男女が列を作って並んでいる。

 その列は8つあり、俺達以外はすでに来ていることを意味していた。


「ふっ、どいつもこいつも双子以下か……まあいい。楽しませてくれそうだ」


 ユキがなんか悪役みたいなことを言う。


「……お兄ちゃん、もうやっていい?」

「もうちょっと待て。すぐに血の雨を降らしてやろう」


 俺とトウコもなんとなく乗った。


「80人か……5分かな……」


 ユイカも乗ってきた。

 これで周りの奴らは俺達のことをただ者じゃないと思うだろう。


「ねえ、日本人がアホなの? それともあんたらがアホなの?」


 イルメラがツッコんできた。


「あー……アインの町の方はこちらにお並びください」


 前の方にいるおじさんが告げてくる。


「アイン?」

「俺らか?」

「アインって名前だったっけ?」

「名前あったの?」

「日本の方々、ごめんなさい。こいつらがアホだったわ」


 いや、町の名前なんて誰も言わないし、誰も覚えてねーよ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
武道会とかで出てくる敵役感ある
そういえば町の名前あったんだっけ
こいつら率いてるイヴェール次期当主への風評被害がひどそう
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