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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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第195話 顔合わせ


 俺達はその後も話をしていたが、時間になったのでD棟のジェニー先生の部屋に向かう。

 部屋にはジェニー先生がいなかったが、シャルがおり、何故かデスクについていた。


「何してんの? 先生にでもなった?」

「この部屋に10人は多いでしょ? ジェニー先生も座っていいって」


 ふーん……


「リーダー感があるな」

「そうかしら? あ、メンバー表と競技ルールを書いた紙をコピーしてきたから配ってくれる? 他の人もすぐに来ると思うから」

「わかった」


 シャルから紙を受け取ると、一緒に来た3人に渡していくと、3人が紙を読み始めた。

 すると、残りのメンバーも続々とやってきたので紙を渡していく。

 なお、アーサーは睨みながらふんだくるように紙を奪っていったので何だこいつと思ったが、トウコにも同じことをやられたのでこいつは叩いておいた。


「皆、よく集まってくれたわね。事前に説明しておいたけど、来週から各町との対抗戦があります。それにはこの10名で参加することになるのだけど、今日はその話し合いというか、顔合わせです。自己紹介はいるかしら?」


 シャルがそう言って、皆を見渡す。

 しかし、誰も何も言わないし、皆がお互いのことを知っているようだ。


「よろしい。では、次に競技についての説明をします。内容はチーム戦とペアによる勝ち抜き戦です。メンバーはこちらで決めておきました。異議がある人は手を上げてください」


 シャルがそう言うと、予想通り、アーサーとヘンリー、さらにはユキとトウコが手を挙げた。

 シャルはそれを見て、眉をひそめる。


「ユキ、何かあるのか?」


 ちょっと揉めそうな雰囲気があったので先にユキに聞くことにした。


「ある。勝ちにいくならチーム戦における森の編成を考え直すべきだ」

「というと?」

「アーサーとヘンリーを校内に入れろ。代わりに私が行くし、ロナルドを外してシャルリーヌを入れろ」


 さすがにここではジュリエットとは呼ばないらしい。


「その心は?」

「私は遮蔽物を苦にしない。むしろ、君達と違って目に頼らないから強い」

「目を閉じてるもんな」

「そういうことだ。私はそっちのフィールドの方が得意だ。それと転移が使えるシャルリーヌを入れるべきだろう」


 こらこらー。


「シャルは総監督を務めるからなるべく出ないそうだ」

「総監督?」

「メンツを見渡してみろ」


 そう言うと、ユキが皆を見渡していく。

 多分、全員の心の中は『目を開けろ』だと思う。


「ふむ……バカと言うことを聞かなさそうなのが多いな」


 多分、俺はバカ枠。

 言うことを聞かなそうなの筆頭はトウコ。


「これをまとめる人間がいるわけだな」

「まあ、良いだろう。では、オスカーと私を入れ換えるのはどうだ?」

「お前は防御が下手くそだからダメ」


 ユキは千剣も強いし、剣術も見事だが、意識を攻撃に振りすぎているからどうしてもロナルドのようなお守がいる。


「敗者に反論の言葉はないよ……」


 ユキが苦笑いを浮かべて首を横に振った。


「他に?」


 シャルがそう聞くと、今度はアーサーとヘンリーは手を上げなかった。

 それを見て、ユキが気を遣って発言したのだということがわかった。


「ないようね」

「あれ? 私、手を上げてね?」


 トウコが首を傾げながら自分の顔を指差した。

 俺もシャルも完全に無視していたのだ。


「……何かあるの?」


 シャルが嫌そうな顔をしながらトウコに聞く。


「ペアの勝ち抜き戦だけど、なんでこのバカとペアなの? それに私はユイカと固い絆で結ばれているんだけど? ねえ?」


 トウコがユイカを見る。


「私は別にイルメラとでも……」


 ゆるゆるの絆。


「お粗末チビコンビが組んでもロクなことないでしょ。私がユイカを見るからあんたはお兄ちゃんに手を繋いでもらいなさい」


 ホント、イルメラは辛辣なことを言うな……

 でも、合ってると思う。

 多分、ミシェルさんも別の人と組めって思ってるだろうし。


「えー……というか、誰がお粗末チビだ」


 お前とユイカ。


「トウコさん、勝ち抜き戦だから戦力を均等にする必要はないのよ。これが2勝した方が勝つという星取り戦形式ならあなたとツカサを分けるわ。でも、勝ち抜き戦ならコンビを組ませてさっさと3勝した方が良い。ペア戦であなた達に勝てる者なんかいないし、トウコさんは誰もが認める最強だから」


 シャルはおだてる作戦にしたようだ。


「お、お義姉ちゃん……!」


 実にバカだ。


「お義姉ちゃん言うな。いい? あなた達が先鋒だから3勝しなさい」

「任せておくがいい! このスーパーエリートウコ様に勝てる者はいないのだ!」


 シャルと俺に負けたくせに……


「ペア戦は後だから特に話すことはないわ。そこまでに行くためにはチーム戦で上位2組に入らないといけない。校長先生が1年生だけで挑むって決めたのはあなた達が優秀だからよ。いい? この戦いには町と本校のメンツがかかってる。絶対に勝ちなさい。以上」


 シャルが手をポンっと叩いて閉めた。

 すると、皆が続々と部屋を出ていったが、俺だけは残る。


「ハァァー……」


 シャルが大きなため息をついた。


「お疲れさん」

「ええ……でも、ユキさんには感謝だわ。おかげでアーサーとヘンリーが黙った」


 わがままを言いつつ、最終的には負けたから何も言えないっていうのは良かった。

 あれを言われたら2人も何も言えないだろう。


「トウコは悪いな。バカなんだ」

「知ってる。ツカサ、ありがとうね。おかげで2戦も出なくて済んだわ」


 武家の名門の次期当主の言葉とは思えんが、まあ、仕方がないだろう。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
旦那が頼りになりすぎる
な、なんだかツカサが賢くなってきてる気がする……
話を聞かずに呪いの腕輪を着けた一族を代表するバカより考えられないトウコちゃんさぁ……
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