第193話 勝手に決める
「ツカサ君、学校行事だから……」
ミシェルさんが困った顔をする。
「それもそうですね。でも、こんなことをするならそういう授業があってもいいのでは?」
そしたら俺が輝くんですけど?
俺とユイカが新たなる委員会を立ち上げられるんですけど?
「あー、確かにね……今回の結果次第ではそういう流れにいくんじゃないかしら?」
え? 負けた方がいいってことか?
「急にお腹が……」
いたた。
「どっちみち、来年以降だから頑張ってよ」
来年か……
俺が想像していたバトルメインの魔法学園生活は来年に期待だな。
「それでシャル、チーム戦は5人編成で3戦だったよな? 制約とかあるのか?」
俺、トウコ、ユイカ、ユキ、ロナルドで全部やればよくね?
「参加できるのは1人2戦まで。それと10人のうち、絶対に1人1戦すること」
ダメか……
「どう分けるかが大事だな」
「そうなの。それで今日のうちに素案を作って、それを元に月曜、皆で話し合いたいのよ。じゃないと絶対に揉めるし、いつまで経っても終わらないもの」
「確かになー……派閥もあるけど、個性が強いのばっかりだし、譲らなさそうなのが数名……」
もちろん、バーサーカー共ね。
「ホント、大変よ」
「まあなー。クロエ、チーム編成に何か意見はある?」
ここは大人に聞いてみよう。
「まずは誰を2戦出すかですね。3戦で15人を10人で回します。つまり半分の5人が2戦し、もう半分は1戦となります」
な、なるほど。
「ミシェルさんはどう思う?」
「その2戦する5人のうち、激強で頭一つ抜けているツカサ君とユイカは確定。それとこの10人は接近戦が得意な子ばかりで遠距離タイプが少ないからオールラウンダーのトウコさんとユキさんは確定でしょうね。同じ理由であと1人はお嬢様だと思うんだけど……」
「嫌」
シャルが即答し、ミシェルさんを睨む。
「お嬢様、このフィールドはお嬢様が得意な広いフィールドでしょう。今こそ、イヴェールの威光を――」
「嫌」
シャル……
「なんで?」
シャルの意見も聞いてみよう。
「フィールドが森、市街地、校内でしょ? どう考えても奇襲されてお陀仏よ。遮蔽物が多すぎる」
いやまあ、そうなんだけど……
「それでもミシェルさんが言うように遠距離タイプが輝くのは確かだぞ。それに転移も強い」
「そうよ。転移で遮蔽物に隠れられるのは強いわ」
「お嬢様、勝てますって」
うんうん。
「急にお腹が……」
ダメだこりゃ。
「どう思います?」
「戦意がない人を無理やり出してもね……」
「まあ、リーダー特権で外しますか……となると、イルメラさんかロナルドさんでしょうね」
しゃーない。
シャルが可哀想だもん。
「奇襲ができるイルメラさんと逆にそういうのに強そうなロナルド君ね……他のメンツを決めてからの方がいいわ」
確かに。
「シャル、どこでやりたい? リーダー特権だぞ」
「市街地。ここしかないわよ」
でしょうね。
一番、見通しが利きやすそうだもん。
「じゃあ、シャルはそこな」
「そうなると、ツカサ様もそこですね」
「そうね。ツカサの背中に隠れるという必勝パターンよ」
シャルは頷くと、紙に俺と自分の名前を書く。
「じゃあ、俺のもう1つは校内にしておいて」
「そうする。となると、アーサーとヘンリーは自然と森か」
あ、やっぱりその2人は俺と分けた方が良いんだ。
「森ってユイカがめちゃくちゃ強そうじゃないか?」
自称アサシンだし。
忍者みたいなものだろ。
「強そう。となると、保険でトウコさんとオスカーを入れておきましょう」
「森は決定。そうすると、ユキが市街地と校内だな?」
必然的にそうなる。
「そうね。市街地に護衛役のロナルドを入れておきましょう」
良いと思う。
これで市街地は俺、シャル、ユキ、ロナルドになった。
「あと1人はどうする? 残っているのはトウコ、イルメラ、ユイカだ」
「イルメラさんとロナルドのどちらに2回行ってもらうかよね……どっちも槍使いじゃない……」
あの2人は得物が同じだが、攻撃型と防御型と両極端なのだ。
「ロナルドにユキを守らせた方が良くないか? あいつ、防御が下手くそだぞ」
「そうしようかしら? そうなると、残りのイルメラさん、トウコさん、ユイカさんをどう配置するか……いや、ユイカさんは森と同じ理由で校内ね」
そうなるな。
「周りがうるさそうだからトウコとシャルは離すか」
「そうしましょう。じゃあ、決定ね」
シャルが書き終えた紙を見せてきた。
森:ユイカ、トウコ、アーサー、ヘンリー、オスカー
市街地:ユキ、ロナルド、ツカサ、イルメラ、シャル
校内:ユイカ、トウコ、ツカサ、ユキ、ロナルド
「クロエ、ミシェルさん、どう思う?」
いつの間にかチェスを始めている2人に確認する。
「良いと思います。この前の魔法大会のペアを組みつつ、バランスも良いです」
「私もそう思う。あと、各チームのリーダーを決めておいた方が良いわよ」
なるほど。
「まあ、このメンツからいったら最初はオスカーかしら? DクラスとCクラスの間に入ってもらいましょう」
正直、ここが一番不安だったりする。
戦力ではなく、空中分解しそう。
「市街地はシャルな」
「まあ、ユキさんか私でしょうね」
ユキはバーサーカーだが、当主様なのでリーダーもできるだろう。
むしろ、それであのバーサーカーな性格を抑えることもできるかもしれない。
とはいえ……
「ユキは次。他におらん」
リーダーをしなさそうなロナウドに暴力姫、不名誉委員会の2人だ。
「あー……そうね。まあ、これでいきましょう。決勝はどうしようか」
「ペアが3チームだろ。魔法大会の時の3チームで――」
「ゴホッ、ゴホッ……風邪かしら?」
シャル……
「ユイカとイルメラ、ユキとロナルド、俺とトウコでいいか」
「良いと思う」
シャルが満面の笑みで頷いた。
どうやら風邪は治ったらしい。
対抗戦のメンツを決め終えたのでシャルといつもの勉強会を始めた。
昼になると、ミシェルさんはトウコの部屋に行ったし、いつの間にかクロエは姿が見えなくなる。
ただ、この日の夕食はちょっと豪華だったし、いつも以上に美味しく、母さんも満足そうに頷いていた。
メイドに作らせたな……
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