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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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第191話 ノエル「はっ! 起きなくちゃ!」


 シャルとの電話を終え、時計を見ると、9時前だった。


「まだ向こうも12時か……」


 立ち上がると、隣の部屋に行き、扉を開ける。

 すると、ベッドに腰かけて講義をしているミシェルさんと座ってそれを聞いているトウコとユイカがいた。


「むむ、女子の花園に土足で侵入するロミオの気配……!」

「私達の作戦を盗み聞きする悪いお兄ちゃんだ」


 無視、無視。

 でも、俺はユイカの兄ではないぞ。


「ミシェルさん、もう9時ですし、この辺にしません? ユイカがいますし、ついでにイルメラを呼んで話をしてみようと思います」

「それもそうね」


 ミシェルさんが頷いて立ち上がると、トウコとユイカが顔を見合わす。


「無視……」

「名誉会長……」


 委員会的に不名誉会長だろ。


「じゃあ、2人共、またね。対抗戦の競技がわからないけど、時間もないし、集中的にやりましょう」


 ミシェルさんはそう言って部屋を出ていった。


「対抗戦?」


 ユイカが首を傾げる。


「その辺の話をしたいからイルメラを連れてきてくれるか? 寝てるなら明日にする」

「この時間は多分、起きてると思うけど……ちょっと待ってて」


 ユイカがゲートを通って寮に帰っていった。


「お兄ちゃん、夜にクラスメイトがウチに来るイベントだよ」

「シャルが良いわ」

「……そこを通って隣の部屋に行けばそこがお義姉ちゃんの部屋だよ」


 見つかってフルボッコは嫌。


 待っている間、暇なのでペンギン君の周りをクマ君やサメ君なんかで囲む遊びをしていると、扉が開き、短パンでTシャツのイルメラがやってきた。


「こんな時間に何の用? 愛の告白ならノーよ」


 すげー。

 何も言ってないのにフラれた。


「そう言うな。お前が必要なんだよ」

「あんたはフランス人が好きでしょ」


 なんでだよ。


「言っておくが、俺もこれでもハーフだからな」


 トウコを指差す。


「全然、見えない」


 でしょうね。


「まあ、座れ。結構、大事な話があるんだよ」

「ふーん……」


 イルメラがベッドに腰かけると、ユイカも隣に座ったので魔法大会の全国大会があることを説明した。


「つまり甲子園だ」


 ユイカが拳をぽんっと手に乗せる。


「そうそう」

「何それ?」


 イルメラは知らんわな。


「日本ではそう言うんだよ。とにかく、各町との争いがあるわけだが、1年から10人を選ぶわけだ」

「なるほど。つまり私の時代だね。皆から『ユイカちゃん、すごーい』って言ってもらえる唯一のイベント……そう、昔から体育祭だけ!」


 悲しいやっちゃ。

 まあ、俺も体育祭だけだったけど。


「ユイカ、お前は各クラス代表の全会一致で決定している」

「あんたら双子もでしょ」


 イルメラが呆れたように言う。


「当たり前だ。『お兄さんって(勉強以外は)何でもできるんだね!』って女子から褒められる唯一のイベントだぞ」


 そう、それが体育祭。


「『妹の方は本当の意味で何でもできるな!』って褒められるイベントね」


 『うるせーけど……』って付くけどな。


「あんたら3人って想像通りの中学時代なわけね……で? 呼び出されたってことは私も頭数に入ってるわけ?」

「察しが良いな」


 さすがはイルメラさん。

 略してさすメラさん。


「いや、わかるでしょ」

「まあな。ちゃんと俺が推薦しておいた」

「まあ、イルメラはね……」

「とりあえず入れとけばジョーカーになるもんね」


 転移による奇襲が超強力。


「参加するのはいいけど、他は誰? 多分、Aクラスの2人は入っているんでしょうけど」


 ユキとロナルドな。


「そうそう。俺、トウコ、お前、ユイカ、Aクラスのユキとロナルド、Bクラスのオスカー、Cクラスのアーサーとヘンリー。そして、それらを束ねるリーダーが我らの生徒会長だ」


 シャルリーヌ・イヴェールさん。


「あんたの彼女ね……まあ、順当かな? ロミジュリコンビ、お粗末チビコンビ、かっこつけコンビ、モブコンビでしょ。あとはBクラスで唯一3勝したオスカー」


 うーん、的確なあだ名だ。

 ロミジュリは死んじゃうから異議ありだけど


「モブコンビよりフランクで良くない? あっちの方が強いと思うけど」


 ユイカが首を傾げる。


「そうしたらCクラスが会長しかいなくなるじゃない。その辺の派閥のバランスも考えたらこれで良いと思うわよ」


 あー、そういうのも考えてシャルが2人を推薦したわけか。

 ウチのクラスがこの4人、Cクラスが3人、Bクラスは1人でAクラスが2人……ちょっとウチのクラスが多いが、Bクラスの事情もあるし、仕方がないだろう。


「仲良くしろよ」

「どうだろ……マチアスみたいなのは無理よ」

「アーサーとヘンリーか? あいつらはそこまでじゃないと思う。俺は嫌われているけど」

「そりゃあんたはそうよ。絶対に仲良くできない」


 俺、友達は多い方なんだけどな。


「オスカーはどうだ? 知り合いって聞いたが……」

「まあ、同じ国だし、交流はあるわね。ウチはあんたらと違って仲良くしている国だから」

「ウチだって仲良いぞ。今日もシャルがウチに来た」

「そうそう。お母さんが息子をよろしくお願いって言ってた」


 お前も頼まれてたけどな。


「そこまでいってるのか……あー、それでオスカーね。真面目な男って評判よ。フランク以上に真面目。というか、堅物ね。面白みのない男よ」


 褒めているのか、貶しているのか……


「イルメラは面白い男がいいの?」

「ならここに……」


 トウコとユイカが俺を指差した。


「面白い、ね……確かに面白いわ。うんうん……」


 おやー? 俺にはバカって聞こえるぞー。


「悪いな、イルメラ。俺、好きな子がいるんだ」


 ごめん!


「知ってる。サイドテールでしょ」

「錬金術が得意で頭の良い人でしょ」

「お兄ちゃんにだけ優しい人でしょ」


 ノエルがいなくて良かったなと思った。


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