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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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第187話 ユ・オ「どう見ても……」


 寮に戻り、昼食を食べると、家に帰り、漫画を読んで過ごした。

 そして、午後の授業が終わる時間になったのでA棟に向かう。

 道中で午後の授業が終わったらしき生徒達とすれ違ったのでタイミング的にはぴったしだなと思った。


 A棟に入り、ジェニー先生の部屋の前まで来ると、ノックをする。


「長瀬でーす」

『あ、ツカサ? 入って、入って』


 シャルの声が聞こえたので扉を開ける。

 すると、ジェニー先生はいなかったが、シャルとユキが向かい合ってソファーに座っていた。


「あれ? ジェニー先生は?」


 そう聞きながらソファーに近づく。


「部屋をお借りしただけなのよ」


 となると本当にシャルが呼び出したわけか。


「何の用なん?」


 シャルの隣に腰かけながら聞く。


「もう1人来るからその時に説明するわ。とてつもなく面倒なこと、とだけ伝えておく」


 面倒ねー……


「ユキ、何がそんなにおかしいんだ?」


 対面に腰かけているユキがニヤニヤしながらこちらを見ていた。

 やっぱり目は閉じてるけど……


「いやいや、たいしたことじゃないよ。内心で絶対にそっちに座るんだろうなーって思っただけだ」

「そりゃあこっちだろ」


 どっちに座ろうか考えたが、結論は秒で出た。


「そこで言い切るのが君のいいところだよ」

「どうも……」


 褒めてんのかね?


 俺が首を傾げていると、ノックの音が部屋に響いた。


『Bクラスのオスカー・アウフレヒトです』


 男性の声が聞こえてくる。


「入ってちょうだい」


 シャルが入室の許可を出すと、茶髪の男子生徒が入ってきた。

 男子生徒は俺達同級生しかいないのに一礼し、こちらにやってくる。

 服装もしっかりしているし、真面目そうな顔をしており、実直という言葉がぴったりくる。


「遅れてすまない」


 男子生徒はこちらまで来ると、またもや頭を下げた。


「遅れてないわ。かけてちょうだい」

「失礼」


 シャルが促すと、男子生徒はユキの隣に腰かける。


「揃ったわね。まずだけど、急に呼び出してごめんなさい。えーっと、全員クラスが違うし、自己紹介でもする? 私はCクラスのシャルリーヌ・イヴェールよ。出身はフランス」

「「知ってる」」

「生徒会長を知らん者はいないな」


 有名だしね。


「一応よ、一応。はい、Aクラスから」


 シャルがちょっと頬を染めながらユキを促す。


「Aクラスの白川ユキだ。出身は日本だな」

「「知ってる」」

「当主らしいな? その歳で立派なものだ」


 え? この流れって続くの?


「じゃあ、次はBクラスね」


 シャルがこの中で唯一知らない男子生徒を見る。


「Bクラスのオスカー・アウフレヒトだ。出身はドイツになる」

「「知ってる」」


 え?


「ドイツってフランクやイルメラと同じ?」

「ああ。その2人は知己だ」


 へー……


「じゃあ、最後にDクラス」


 シャルがそう言って肩を叩いてきた。


「Dクラスの長瀬ツカサ。出身は日本」

「「知ってる」」

「日本でいいのか? ラ・フォルジュだろう?」


 オスカーが聞いてくる。


「長瀬って言ってるだろ。生まれた時からずっと日本に住んでいる日本人だよ」

「そうなのか……」


 オスカーが腕を組んで悩み出した。


「個人間の交流は後でしてちょうだい」

「はいはい。それでジュリエット、なんで私達を呼んだ?」


 ユキがシャルに聞く。


「ジュリエット言うな。私はシャルリーヌよ」

「ツカサ君以外は誰も呼んでない名前な」


 まあ、皆、会長って呼ぶしな。

 あれ? クロエもお嬢様だ。

 マジで誰も呼んでなくない?


「確かに先生方以外は誰も呼んでない……ユイカさんに至っては名前すら覚えてないし」


 かろうじて覚えてたと思うぞ。

 合ってたし。


「あいつはバカなんだから仕方がないって」

「俺はそう言ってシャルの手をそっと握った」

「変なナレーション入れんな」


 すぐボケる……


「話が進まないんだが……」


 オスカーが呆れる。


「そうよ。そこの目を閉じている子はちょっと口も閉じてなさい」


 上手いこと言うな……


「シャルリーヌさん、それで呼んだ理由は?」


 オスカーが空気を読んで名前で呼んでる……


「そうね……まずだけど、ここにいるのはクラスがバラバラなのはわかるわね?」

「ああ。見事にな」


 それは俺もわかる。


「各クラスの代表を呼んだのよ」


 マジで代表か……


「トウコでいいじゃん」


 一応、言ってみる。


「あの子は嫌。最近、手袋を持ってるのよ」


 あいつ、何してんだ?


「ホント、バカなやっちゃ。それで俺?」

「他にいないし……」


 可哀想なシャル……と思ったが、可哀想なのは同郷で中学も同じなのにスルーされたノエルかもしれん。


「私もか?」


 ユキも確認する。


「ええ。知っているのがあなただった」


 まあ、一緒に旅行も行っているしな。


「すまん。そうなると、なんで俺なんだ? ろくに話したこともないし、正直、俺はそんなに社交的でもないから代表な理由もわからん」


 あれ? 知り合いじゃないの?


「Bクラスに女子を含めても知り合いがいないの。そして、あなたを呼んだ理由も併せて、これから話すわ。まず、これから話すことはまだ他の生徒には言わないでちょうだい」


 本当に面倒事っぽいな。


「わかった」

「私も了解した」

「俺も」


 皆が頷く。


「ありがとう。実は昨晩、校長先生から電話があったの」


 電話? 家?


「生徒会長って大変だなー。日曜じゃん」

「こんなことは今まで1度もなかったわよ」


 え?


「緊急?」

「そうね。結論を言うわ。夏休み前に魔法大会があったでしょ? あれを各町対抗でやることになった」


 はい?


「何それ? 全国大会的な?」


 甲子園?


「ジュリエット、詳しく話せ」

「シャルリーヌさん、俺も聞きたい」


 ユキとオスカーが前のめりになる。


「説明するわ。でも、先に言っておくけど、私も詳しいわけではない」

「それで構わないから教えてくれ」

「ええ……実はこの前の魔法大会は他の町でも行われていたらしいのよ。そして、アストラルの運営委員会が対抗戦をし、町同士の交流、もしくは、切磋琢磨することで町単位で魔法使いとしてレベルアップをしようってことになったらしいのわ」

「何を言っているんだ?」


 ユキがちょっとバカにしたような顔になった。


「だーかーらー、私もわかんないわよ」

「一応、聞く。何かを賭けるとかはないか?」


 賭ける?

 寮でやってたやつ?


「ないわ。あくまでも交流戦。代理戦争なんかじゃない」

「そうか……とはいえ、あまり賢いとは言えんな。町同士を煽ってるとしか思えん」

「逆だろ。最近は町同士で諜報も活発になっていると父に聞いた。ガス抜きだな」


 あれー?

 わかってないのは俺だけ?

 場違い感が……とりあえず、頷いとこ!


「……ツカサ、後で電話する」

「うん」


 おねがーい。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

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