第186話 言う
ワニ狩りも終わり、家に帰ったので部屋でゆっくりと過ごしながら大事な日曜日を終えた。
翌日は当然、月曜であり、授業がある。
月曜は基礎学だけなのだが、この日のはぶっ通しで座学だったため、ユイカと一緒に頭から煙を出しながら授業を受けていった。
「ツカサ、わかった?」
授業が終わると、ユイカがこちらにやってきて聞いてくる。
「基礎って何だろうな……」
「ねー。私、最近、実は皆もわかっていないんじゃないかと疑っている」
「それだ」
騙しているんだ。
特にイルメラ。
「情けないわねー。まだ1年よ?」
イルメラが呆れながら俺とユイカを見る。
「イルメラ、今日の授業わかった?」
「わかんなかったろ?」
「悪いけど、子供の頃にやった内容よ」
子供……
「算数で40点取った私に謝れ」
「50点取った俺にも謝れ」
「あ、55点だったような……」
対抗するな。
まあ、本当は10点を取ったことあるんだけど……
「可哀想な委員会ねー……」
「俺は抜けたっての」
「名誉会長よ」
それ、ずっと名前が残るやつ……
「ツカサさん、ちょっと……」
ノエルが俺の肩を叩いてきた。
「何だ? ノエルも入りたいのか?」
「結構です。ユキさんが来てますけど……」
ノエルが軽く流して、前を見たのでつられて見てみると、確かにユキがおり、こちらを見ていた。
まあ、目を閉じているから見てはないんだけど。
「何してんだ?」
誰かに用事かな?
「ツカサさんじゃないです? ツカサさんを見ているような気がします。見てないですけど……」
目を閉じてるからな。
でも、こちらを見ている気がする。
「何だろ……」
よくわからないが、ユキの方に歩いていく。
「やあ、ツカサ君」
ユキが手を上げた。
「よう。何してんだ?」
「ちょっと用事。いやー、他のクラスは入りにくいね」
まあ、わからないでもない。
この学校って派閥やらなんやらで面倒だし。
「そんな中で毎週、Aクラスに行っている俺を尊敬しろ。しかも、3年だぞ」
「デートね」
シャルに付き添ってもらってるけど、デートではない。
真面目に勉強しているのだ。
全然、わかんないけどさ。
「俺とシャルのことは放っておけ。それで何だよ? 午後からの授業はないけど、昼飯に行くんだ」
今日もフランクとセドリックと寮の食堂で弁当を食べる。
「そのジュリエットから呼び出しだよ」
はい?
「学校で?」
電話すれば良くないか?
「うん。ただ、デートのお誘いではなさそう。何しろ、私も呼び出しを受けたからね」
はい?
「なんで?」
「わからないけど、端的に伝えるよ。今日の放課後にジェニー先生の部屋に来てほしいらしい」
放課後ってのは午後の授業の後のことだな。
「いいけど、ジェニー先生?」
Dクラスの担任だぞ。
「らしいよ。私もそう聞いただけ。ジュリエットがウチのクラスに来たからびっくりだよ。宣戦布告かと思った」
なんでだよ。
ジュリエット……じゃない、シャルは平和主義者なんだぞ。
「ふーん、さすがにウチのクラスには来られなかったか」
「だろうね。DクラスとCクラスって仲が悪いんでしょ? 仲良くしなよ……いや、してたね」
ユキがわざとらしく笑う。
「してるな」
「ツッコんでよ。もしくは、頬を染めながら否定してよ」
「俺、ツンデレじゃないんで」
というか、やっぱりツッコミ待ちか。
こいつ、わかりやすいな。
「本物のツンデレはちゃんと頬を染めてくれたのにね……とにかく、放課後にジェニー先生のところね。一応、伝えておくと、他にもBクラスの子もいるらしいよ」
Bクラス?
まったく知らんぞ。
「各クラスの人間が集まるってことか?」
「そうなるね。多分、何かあるんだと思う。何しろ、ジュリエットは生徒会長だからね」
確かに……
「わかった。また学校に来るわ」
「ん。じゃあ、伝えたから。邪魔をしたね」
ユキがそう言って手を上げると、教室から出ていったので皆が集まっている後ろの席に戻った。
「何だったんだ?」
フランクが聞いてくる。
「よくわからんが各クラスの代表が集まるみたい」
「本当によくわからんな……」
そりゃ俺もユキもわかってないんだからな。
「というか、あんたが代表?」
イルメラが異議ありそうな顔を浮かべた。
「呼び出したのが生徒会長なんだから仕方がないだろ」
「なるほど……」
「まあ、ツカサさんでしょうね」
「ロミジュリ……」
「他にいないしな」
「絶対にトウコは呼ばないだろうねぇ……」
5人は納得したように頷く。
「今日から俺がこのクラス代表な」
「後から入学してきた転校生なのに委員長面……」
ユイカが不満そうな顔を浮かべた。
「人生で一度も委員長になったことはないけどな」
「クラス崩壊しそうだもんね」
俺もそう思う。
「何でもいいから帰ろうぜ。腹減ったわ」
俺達は教室を出ると、寮に戻っていく。
「ねえ、妹は?」
歩いていると、イルメラが聞いてくる。
「先に帰ったんじゃね?」
授業が終わったら真っ先に教室から出ていった。
「仲悪いの?」
「ものすごく良いよ。セットだもん」
何故かユイカが答え、ニヤニヤと笑う。
「なんでトウコは帰るの?」
「恥ずかしいんだよ。言動が一緒だもん」
なんでユイカが説明してるんだろ?
「そんなに?」
「面白いよ? わざとらしく合わせてくる時はつまんないけど、意図せずに重なると2人共ピタッと止まるんだもん」
つまんないの!?
「へー……」
「仲良いよね?」
ユイカが同意を求めてきた。
「全然。むしろ、悪いくらい」
「イルメラ、寮に帰ったら同じことをトウコに聞くといい。きっと今のツカサとまったく同じセリフを言う」
「ほうほう……」
言わねーよ。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




