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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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183/207

第183話 なんか来た

 シャルとの勉強会と武術の訓練を終えたので家に帰り、夕食を食べる。

 その際に母さんと父さんに町の外に行くことを伝えたが、トウコを含めて4人で行くと言ったら了承してもらえた。

 そして、夕食を終え、風呂に入ると、部屋で漫画を読む。

 すると、隣の部屋から話し声が聞こえ、ドタバタという音が近づいてきた。


「――あはっ! 本当にいるー! お兄ちゃんだ!」


 なんか赤い髪をしたTシャツで短パンの女が笑っている。


「こんな夜更けに男の部屋に来るなんてふしだらな女だな」

「押し入れの中に会長とかいない?」


 聞けよ……


「いるわけないだろ」


 シャルは猫型ロボットじゃないわい。


「イルメラさーん、ノックをしましょうよー……」

「礼儀知らず」


 なんかひらひらした寝巻きの女と体操服を着ている女も入ってきた。


「いや、マジで何しに来たんだ?」


 ユイカは来たことがあるが、イルメラとノエルがここにいるのはなんか新鮮だ。

 しかも、部屋着だし。


「本当にあんたがいるかの検証」

「私は止めました」

「私はちゃんといるって言った」


 あっそ。


「トウコー、止めろよ」


 あとから部屋に入ってきたトウコを責める。


「止めたけど、イルメラが強引に来た」


 はしたない女だよ。


「何がしたいんだか……イルメラ、お前が結婚する時に友人代表の挨拶で今日のことを話すわ」

「大丈夫。トウコとセットで呼ぶとは思うけど、友人代表は無難なノエルに頼むから」


 お粗末チビコンビには頼まないか。


「トウコの部屋に戻れよ。ここに面白いものは何もないぞ」

「トウコの部屋はぬいぐるみばっかりで居心地が悪い。ねえねえ、これ、アルバム? 見ていい?」


 イルメラが本棚の卒アルを取り出しながら聞く。


「お前は俺の彼女か? 恋人イベントじゃねーか」

「そうだね。お義姉ちゃんとやってたね」


 ………………。


「お兄ちゃん……なんで小指を見るの?」

「何かあったんですかね?」

「あったんじゃない?」

「あったんだろうね」


 こいつら、邪魔だなー。


「ハァ……女子が部屋に来るイベントか……しかも、制服とは違う部屋着……きっと幸福なイベントなんだろう。でも、違うなー」


 お前らじゃない。


「この男、はっきりと言いおった」

「違う人が良かったんですね……」

「そのイベントはウチの別荘でやったじゃん」

「私はただただ反応に困るよ」


 俺も今、お前らのせいで反応に困ってるわ。


「アルバムならトウコの部屋にもあるんだからそれを見ろよ」

「ツカサ、ちょっと会長に電話してみてよ」


 イルメラが過去一の笑顔になったが、こいつ、全然人の話を聞かないのな。


「なんでだよ。さっきまで会ってたし、用件がねーわ」

「デートだ。いや、デートの後の『今日は楽しかったね』は大事よー」


 それはウチのCランクの妹も言ってたな。


「デートじゃなくて勉強だ」

「べ、べ、勉強!? テスト前じゃないよ?」


 ユイカが驚く。


「予習、復習は大事だろ。本来、普段からちゃんとしていればテスト前に必死になることなんてないんだ」


 ……と優等生の皆さんはおっしゃっていた。


「な、なんということを……平均点を下げよう委員会の会長なのに」


 いつの間に会長になったんだよ。


「副会長、俺は抜けて優等生委員会に入る。今日からお前が会長だ」


 ウチの学校のほとんどの生徒が入ってるやつ。


「裏切者とはこやつのことじゃ……」


 なんで殿様しゃべりなんだよ。


「ユイカさん、明日からもうちょっと頑張りましょうか」


 ノエルがそっとユイカの肩に手を置く。


「え……それは違うような……」

「さっきのツカサさんの言葉でわかるでしょう。この人はもう勉強を苦としていません」


 いや、勘違いしてほしくないんだけど、嫌いだよ。

 今でも家で1人でやると頭が痛くなるし。


「今思うと、最初に演習場で出会ってからことごとく私の前に立ちはだかっている大きな壁だ……」


 どーん!


「大きな壁?」

「どこが? どっこいどっこいよね」


 イルメラとトウコが顔を見合わせる。


「俺、いまだにこいつらの成績が良いのが納得できんわ」

「わかる。イルメラもトウコもどう考えてもバカじゃないといけない言動なのに成績だけは良い」


 口より手が先に出る代表格だろ。


「私はちゃんと勉強してんの。努力をしないくせに僻まないでくれる?」

「おー、イルメラ、よく言った。お兄ちゃんにもっと言ってやって」


 正論は嫌いだ。

 何故なら返す言葉がないから。


「2人共、ツカサさんだってユイカさんだってこれから頑張ろうとしているんです。スタートが遅いだけで来年、再来年には優秀な成績を収められると思います」


 ノエルは優しいなー。


「ノエルー」


 ユイカがノエルに抱きついた。


「よしよし、勉強しましょうね」

「……え? あ、うん……」


 ユイカが流れで頷いた。


「ふーん、まあ、頑張んなさいよ――あはっ! この双子、いっつもピースサインが同じだ!」


 適当に返事をしながらアルバムを見ているイルメラが笑う。


「「そんなに面白い?」」

「ふふっ! やめてよー!」


 こいつ、一周回って良いな。

 ちゃんと俺達の双子芸を笑ってくれる。

 最近はシャルも流し気味だからちょっと新鮮だ。

 時代はイルメラだな。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
双子芸は笑っちゃうんだよなぁ…フワモコはいいぞぉ…
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