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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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180/207

第180話 説明


 ロナルドと別れ、自分の部屋に戻ると、トウコの部屋に行く。

 すると、ベッドに座るトウコと床に座っているミシェルさんがいた。


「あれ? ミシェルさんじゃん」

「こんにちは。お邪魔してます」

「いや、ノックよ……」


 だからお前もせんだろ。


「何してるんです?」


 ミシェルさんに聞く。


「トウコさんに特別授業」

「お兄ちゃんとお義姉ちゃんを倒す秘密の特訓なのだ」


 あー、今度はトウコの方を見るって言ってたしな。


「頑張れ」


 どれだけ対策を練ろうと無駄だ。

 こいつは簡単に挑発に乗るもん。


「勝ち誇った笑みがムカつく!」

「トウコさん、落ち着いて。その短気を直さないと絶対に勝てないわよ。あなたとお兄ちゃんの最大の差はそこだから」

「冷静に……冷静に……心頭滅却」


 無理、無理。

 人の性格はそう簡単に変えられない。


「サメ君アターック」


 その辺に落ちていたサメ君のぬいぐるみでトウコの喉元を噛みつかせた。


「うぜー……」

「冷静に! 冷静によ!」


 ミシェルさんがトウコを落ち着かせているのでペンギンのぬいぐるみを取る。


「ペンギン君キーック」


 ミシェルさんの頬にペンギン君を押し当てる。


「うぜー……」


 ミシェルさんが心底嫌そうな顔で見てきた。


「お兄ちゃん、何か用?」

「あー、それな。ミシェルさん、授業中にすみませんが、大丈夫です?」

「大丈夫だからペンギン君をどけて」


 ミシェルさんがそう言うのでサメ君とペンギン君を渡す。


「トウコ、さっきユキとロナルドと会ったんだけど、日曜日にワニを狩りに行こうって誘われたわ」

「ワニ? 大金になるやつ!」

「そこが先に来るんだ……」


 ミシェルさんが呆れた。


「誘われたのはいいんだが、お前の都合はどうかなって」

「行く、行くー。お母さんもユキとロナルドだったら文句ないでしょ」


 母さんはその2人の実力を知らんけどな。

 あ、いや、ユキは知ってるか。

 俺が心眼の使い手って言ったし。


「じゃあ、日曜な。ミシェルさんもこっそり来るんです?」

「それが仕事だからね」

「ミシェルさん、休みあります?」


 大丈夫かな?


「あなた達が授業を受けている時はほぼ休みね。たまに先生方の手伝いとかもするけど」

「大丈夫です? 身体とか壊さないでくださいね」

「あなたは本当に良い子ね……まあ、私のことはいいわ。それよりも明日はお嬢様のところ?」

「そうですね。シャルの家で勉強会です。ミシェルさんもクロエとチェスです?」


 いつも固まっている。


「そうね」


 なんで勝てないのに挑むんだろうか?

 意地かな?


「じゃあ、お願いします。トウコー、頑張れよー」

「うぜー。こうなったら15分ごとに目覚ましをセットして寝られなくしてやる」


 さいてー。

 そんな発想が出てくるとは妹ながら性根が腐ってるな。


 翌日。

 この日は土曜日なのでシャルの家に向かった。

 シャルの家にやってきて朝食をご馳走になると、クロエが食後のコーヒーを用意してくれた。


「良い香りですね」

「そうね。さすがはイヴェールの次期当主だわ。良い豆を使っている」


 違いの分かる俺とミシェルさんは香りを楽しみながらコーヒーを飲む。


「シャルが作ってるかもしれませんよ?」

「何これ、ポーションなの?」


 コーヒー味のポーションか?


「違うわよ。普通のコーヒーよ」


 シャルがコーヒーを飲みながら呆れる。


「家で飲むのより美味しいなー」

「あなたの家のコーヒーがインスタントだからじゃない?」


 ウチの母親、バカ舌だからな。


「ウチだって普通よ、普通。そんなことより勉強を始めるわよ」


 シャルがそう言って腰を浮かせる。


「あ、ちょっと待って。その前にかなり大事な話がある。クロエー、クロエも来てー」


 シャルを止めると、キッチンの方にいるクロエを呼ぶ。


「はいはい、何でしょう? 『お嬢様を僕にください』ならどうぞ」


 何を言ってんだ、このメイド?


「あんた、何言ってんの?」

「きょとんとしないでくださいよ……それで話とは何でしょう?」


 クロエがそう言って席についた。


「夏休みに海に行ったじゃん? その後、俺とトウコはラ・フォルジュの家に遊びに行ったわけ」

「そう言ったわね」

「お嬢様の帰省と同じタイミングでしたね。遊びにでも行こうと思いましたが、やめときました」


 クロエ、遊んでたからなー。

 でも、来ないのは正解だ。

 反応に困っちゃう。


「クロエはスルーするけど、ちょっと実家で事件があったんだよ」

「事件? 何?」

「トウコが誘拐されかけた」

「は?」


 シャルが呆け、クロエが眉をひそめた。


「夜にトウコがいなくなったんだよ。色々と説明を省くが、ミシェルさんとアストラルで遊んでいたユイカとユキの4人で駅に行って、トウコを無事に救出したんだ」

「省きすぎじゃない? 何があったのよ?」

「ラ・フォルジュの派閥のヨハンっていう奴が犯人だった。何て家でしたっけ?」


 ミシェルさんに確認する。


「ランドロー……」


 ミシェルさんが何故か小声でつぶやいた。


「ランドロー!?」

「ランドローってラ・フォルジュ派の中でも上の方の家ですよ。そこの者がラ・フォルジュを名乗るトウコ様を攫ったんですか……」


 あ、思ってたより大事だったみたい。

 そりゃミシェルさんが小声になるわけだわ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

本作とは関係ありませんが、本日、私の別作品である『悪役貴族になりたくない僕の異世界魔法学園生活』の第1巻が発売となります。

ツンデレ猫が可愛いのでぜひとも手に取って頂けると幸いです。(↓にリンク)


本作共々よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
ホウレンソウは大事だからね ちゃんと伝えておかないとね。……伝えてよかったんだよな?
シャル達に説明するのは意外だったかも 現場にいたユイカやユキはともかく他の面々には黙ってたしね
実害はなかった上に、こうして協力体制と抜けてた危機感が構築された分、実は出番のない身内より役に立ってる疑惑が個人的に根強い感のあるヨハンくん。
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