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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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第179話 ユキとロナルド


 ジェニー先生の部屋で昼食を食べた俺はその場でトウコと別れ、A棟に向かう。

 そして、掲示板の前で待っていたシャルと合流すると、3階にある教室に入り、一番後ろの席に並んで座った。


「トウコさんと兄妹ってバレちゃったみたいね」


 やっぱりこの話題だ。


「そうそう。ちょっと色々あってな。明日、話すわ」


 シャルもウォーレス先生とジョアン先輩の件に関わっているし、シャルやクロエにも伝えておいた方が良いだろう。


「ふーん……」

「シャルさー、何か言われた?」

「言われた。クラスの男子に『あいつ、ラ・フォルジュの人間ですよ』って……」


 アーサーな気がする。


「何て答えたん?」

「だから?」


 怖っ……


「それだけ?」

「他に言うことないし……あと何て言えばいいかわからない」


 いつものシャルだなー……


「女子寮は?」

「そっちは……別に……」


 シャルが窓の方を見た。

 多分、何かあったようだ。


「教えてよー」

「女子はうるさいのよ。ニヤニヤと笑いながら頑張ってって言われただけ」


 何をだよ……


「家は?」

「家は学校のことなんか興味ないわよ。私より、そっちよ。どう?」

「イルメラがすげー笑ってくる」

「あの子はね……儲けさせてもらったから応援してるってサムズアップされたわ」


 あ、そういえば、熊代を全額賭けてたな。

 あいつ、めっちゃ金を持ってない?


「今思ったら自分に賭ければ良かったな」

「すごい自信ね」

「まあなー」


 俺達が話をしていると、先生がやってきたので真面目に授業を受ける。

 授業の内容は相変わらず、さっぱりだったが、それでも頑張って先生の言葉を耳に入れていった。

 そして、授業が終わると、こめかみを押さえる。


「うーん、わからん」

「呪学はねー……まあ、地道にやりましょう」


 それしかないわな。


「そうだな。じゃあ、帰ろう」

「そうね」


 俺達は教室を出ると、階段を降りていく。

 すると、1階で見知った顔を見つけた。

 制服を着て、目を閉じている女子だ。

 当然、ユキである。

 そういえば、ここはA棟なのでAクラスがある。


「おや? ツカサ君とジュリエットじゃないか。いつ見ても仲睦まじいね」

「見てねーだろ。目を開けろ」

「ジュリエットはやめなさいってば」


 ユキは俺達がツッコむと、満足そうに頷いた。

 こいつはこういうツッコミ待ちなところがある。


「ふふっ、すまん、すまん。でも、ちょうどいいところで会った。ちょっとツカサ君に頼みたいことがあるんだよ」

「俺?」


 何だろ?


「そうそう。君」

「ふーん、じゃあ、私は先に帰るわ。ツカサ、また明日ね」


 シャルは手を振ると、A棟を出ていき、帰っていった。


「なんか悪いな」


 すんごい既視感があった。


「何が?」

「ちょっと感じ悪くなかった? シャルってああなんだ。でも、悪気はないんだぞ」

「邪魔をしたら悪いと思ったんだろう。我々魔法使いは大きな声で言えないこともあるからね」

「そんなもんか?」


 多分、シャルはそんなこと考えていないような気がするけど。


「そうだよ。それにちゃっかり牽制は入れていた。明日もジュリエットと一緒かい?」

「ああ。勉強を見てもらっているんだよ」


 俺は武術を教えている。


「なるほどねー……」

「それで用って何だ?」

「あー、そうそう。明日は……勉強だったね。明後日、空いてる? ワニを狩りに行こうよ」


 ワニ?

 あー、そういえば、ワニを売る時についてきてたな。

 そんでもって高いからこっちにするって言ってたわ。


「ロナルドは?」

「あいつも一緒だ。ワニの狩り方を教えてやってくれ」


 俺も知らんが?

 ロナルドがワニにエルボードロップをするとは思えんし。


「ユキがやれば? 千剣でズタズタにできるだろ」

「それでは売れんだろ」


 まあ、確かにね。


「日曜ねー……」

「何か用事かい?」

「いや、俺は暇なんだけど……この前の誘拐事件があっただろ? あれのせいで町の外に行くには兄妹揃って行けって親に言われているんだよ」


 トウコの用事を知らん。


「あー、親御さんは心配なわけだ。確かに君達兄妹が揃えば敵なしか……じゃあ、トウコも誘ってみてよ。儲かるよ?」

「うーん、じゃあ、帰って、聞いてみる」

「頼むよ」


 ユキが頷いた。


「じゃあ、帰るわ」

「そうだね。帰ろう」


 流れでユキと一緒に帰ることになったので歩いていく。


「一応聞くけど、本当に見えてる?」


 ユキの前で手を振ってみた。


「今さらだな……見えているというか感じているよ。今、私の目の前で手を振った」


 本当にわかるんだ。


「すごいなー」

「君もできそうだけどね」


 できるかな?

 家で練習してみようか……あ、いや、家族にバカにされるのが目に見えているわ。


 俺達は歩いていき、男子寮と女子寮の分岐点までやってきた。


「じゃあ、帰って、聞いてみるわ」

「頼む。それと一緒に帰る相手がジュリエットから私に変わってごめんね」

「どうでもよくね?」


 明日会うっての。


「ふむ……まあいいか。1つ内緒話をしよう。女子の間では会長はもうジュリエットとしか呼ばれていない」


 えー……


「死んじゃうんだろ?」

「そこの意味は考えてないよ。じゃあ、頑張ってね、ロミオ君」


 それも毒を飲んで死んじゃうじゃん……


 ユキと別れると、男子寮に戻る。

 すると、階段のところにロナルドが立っていた。


「あ、ロナルド」

「よう、長瀬の坊ちゃん」


 ロナルドは相変わらず、ひょうひょうとした感じだ。


「坊ちゃんはやめろっての。同い年だろうが」


 こいつは背も高いし、どこか落ち着いているから同い年には見えんが。


「ロミオがいいか?」

「それはNGワードだ」


 腕でバツ印を作る。


「そうかい……あー、そうそう。夏休みにユキを海に連れていってくれたんだって? ありがとうよ。あいつ、喜んでたぞ」


 発案したのは俺だが、ユイカの別荘だし、世話をしてくれたのはクロエだ。


「同じ日本だしな」

「助かるわー。あいつ、あんな感じだけど、激重だからな」


 ホントにね……


「なあ、あいつってめっちゃボケるか?」

「ボケるぞ。そして、ドヤ顔を浮かべる」


 やっぱりか。


「あのツッコんでーという顔とツッコんだ後の満足そうに頷く顔が印象的だわ」


 なお、目は閉じている。


「そうそう。あ、ワニの話、聞いたか?」

「聞いた。お前一人でやれよ。ワニくらい狩れるだろ」

「いや、普通にこえーよ」


 ユイカについていけるスピードがあるのに何を言ってんだか……


「俺とトウコが戦い方というのを教えてやろう。あ、まだトウコに聞いてないから日曜に行けるかはわからない」

「ハァ……まあ、ユキを放っておくわけにはいかないから付き合うけど」


 うーん……


「……お前、本当に同い年か? ユキの親戚のおじさんみたいだぞ」

「老けているとはよく言われるな」

「お前がユキと結婚したら上手くいくんじゃないか?」


 家の復興とやらも上手くいきそう。


「それは無理だ。従妹だが、妹にしか見えん」


 じゃあ、無理だ。

 ソースは妹がいて、ミシェルさんがセレスちゃん以上にねーちゃんにしか見えない俺。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

私が連載している別作品である『35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい』のコミカライズが連載開始となりました。

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