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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第5章

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174/207

第174話 ビッグニュースよりも大事


 イルメラが眉をひそめて、俺とトウコの顔を見比べる。


「あ、ホントだ! よく見たら同じ顔! ふふ、ふふふ……そっくりだ!」


 あー、さすがはイルメラさんだ。

 想像通りのリアクション。


「イルメラさん、笑ったらダメですよ。御兄妹なんだから似てて当然じゃないですか」


 ノエルが困った顔でイルメラを諫める。

 これはこれで想像通りだ。


「それもそうね……うわっ、双子がすんごい目で睨んでる! 目付きがそっくりだ!」

「イルメラ、やめなって」


 珍しくユイカが止めた。

 いつもニヤニヤしている自分を棚に置いて。


「――授業ですよー」


 ジェニー先生が入ってきたので基礎学の授業となった。

 この日の授業は実技があったので座学が終わった後に演習場で実技を行う。

 そして、一通りの実技が終わると、自由時間になり、ニヤニヤ顔のイルメラが近づいてきた。

 なお、トウコはものすごい距離を取っており、演習場の端でぽつんと立っている。


「ねえねえ、本当に双子なの?」

「実は血が繋がってないんだよ」

「すんげー嘘。これでもかってくらいにそっくりじゃん」


 これでもかってくらいにそっくりなのに半年以上も気付かなかったのか?


「イルメラ、そろそろやめとけ。隠していたことだぞ」


 俺の中でナイスガイと評判のフランクが諫めてくる。


「私はね、2人のことを思って、からかい、噂を広めるの」


 噂を広める気か?


「なんでだよ……」

「前の噂を消すためでしょ。トウコが男子寮に行って男子の部屋にしけこんだってなったら停学よ?」


 ウチの母親ですな。


「あー、まあ……」

「それにツカサの彼女の会長…………あれ? イヴェール……?」


 イルメラが『え?』っていう顔になって、俺を見てきた。


「いや、シャルは知ってるぞ。彼女じゃないけどな」

「知ってるんだ……あ! あー……ロミジュリ……え? あんたら、知ってたの?」


 何かに気付いたイルメラがノエルとユイカに聞く。


「知ってました……」

「初日で気付いた」


 ノエル、知ってたの?

 それなのにあんなに推してたの?

 お前、イヴェール派だろ。


「え? なんで? ツカサかトウコに聞いたの?」

「いやだって、見ればわかりますよ。トウコさんもどう見てもアジア系の方ですし……」


 ハーフなんだけどな。

 俺もだけど。


「あー……まあ、そうね」

「それに何よりも明らかに不自然じゃないですか。ツカサさんもトウコさんもお互いにめちゃくちゃ避けてたし、何故か苗字で呼んでますもん」

「そういやあんたってトウコのことを苗字で呼ぶわね。クラスメイトの苗字なんて覚えてないくせに」

「覚えてるよ、ヘンゼルトさん」


 クラウスが苗字で呼ぶし。


「あら? 私のことは覚えているのね。ノエルは絶対にわからないでしょ?」


 舐めんな。


「アントワーヌだろ」

「おー、覚えてた」

「ちょっと安心しましたよ」


 ノエルが胸を撫で下ろす。


「いや、ツカサ―― んぐ!」


 余計なことを言おうとしたユイカの口を押える。


「何してんの?」

「別に……フランクの苗字を覚えてなかったことを言ってやろうか?」


 ユイカに小声で囁いた。

 すると、ユイカがうんうんと頷いたので開放する。


「よくわかんないけど、あんた、大丈夫なの?」


 イルメラが聞いてくる。


「何が?」

「いや、会長。マジでロミジュリじゃん」

「俺はそのロミジュリを理解してない」


 結局、何なん?


「ツカサ、ロミオとジュリエットを知らないの?」


 セドリックが聞いてくる。


「名前は聞いたことある」

「シェークスピアの戯曲だよ。対立する名門の子同士が恋に落ちる物語。でも、悲恋だね。結末はどっちも死ぬ」


 そういやシャルがジュリエットは死ぬからそう呼ぶなって言ってたな。


「ダメじゃん。え? お前ら、そんなのを俺とシャルに当ててたわけ?」


 縁起が悪いにもほどがある。


「まんまですもん……」

「私はいつ駆け落ちするのかなーと思っている」


 ノエルとユイカがしみじみと頷いた。


「しねーよ」

「トウコー、ちょっと来てー!」


 イルメラが演習場の端で話しかけるなオーラを出しているトウコを呼んだ。

 しかし、トウコはガン無視だ。


「なんで来ないのかしら?」


 イルメラが首を傾げる。


「お前のせいだろ。俺も来てほしくねーよ」

「めんどくさい双子ねー……トウコー、マジで大事な話ー! ツカサが服毒自殺して、会長が自刃するかどうかの大事な話ー!」


 イルメラがそう言うと、トウコがため息をつき、こちらに歩いてくる。


「ロミオとジュリエットってそうなん?」


 セドリックに聞く。


「うん。やめてね」


 しねーわ。


「何? 私は今、どうやって挽回しようか考えているんだけど……」


 トウコが嫌そうな顔でやってきた。


「そんなことどうでもいいわ。それよりもこの男と会長よ」


 イルメラが俺を指差す。


「そこはもうどうしようもない。ウチの母親もため息をつきながら駆け落ちしろって言ってる」


 そんなこと言ってんの?


「えー……すでに親バレしてんの?」

「お兄……この男、家に連れ込んだからね」


 言い方。


「うわー……トウコとの噂なんかどうでもいいレベルで爆弾だ」

「一緒に海に旅行まで行ってたよ」

「海でも夜でもイチャついてた」


 ユイカがトウコの悪乗りに便乗してきた。


「お前らもおっただろうが。大事なことを言え、俺とシャルに負けた雑魚コンビ」


 すげー人聞きが悪いわ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
煽り合い草
まぁこの双子より余程スキャンダルでドラマティックな話題だからね 双子なんて霞むわ
実際、イヴェールの本家がどれだけ知ってるかだよね ラ・フォルジュは知らなそうだったけど
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