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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

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165/207

第165話 丑三つ時


 俺とリディはカフェにやってくると、それぞれ飲み物とケーキを頼んだ。


「ねえ、ツカサ君……眠くない?」

「まあ、もうあっちでは1時を回っているからな」


 こればっかりは仕方がないだろう。

 時差はどうしても障害になる。


「やっぱりちゃんと正規ルートで日本に遊びに行こうかなー。ツカサ君とトウコちゃんはもうすぐ学校が始まるから来ないだろうし」


 行かないね。

 まあ、パリからでも通えるんだけどさ。


「日本は3時間の時差だけど、パリは10時間だもんな」

「それなんだよね。社会人に合わせて時差を決めているらしいけど、子供に優しくないよ」


 まあ、そこは仕方がないだろうな。

 学園の生徒以外に子供がほぼいないんだから。


「いっそ夕方まで寝るかだな」

「今度はそうする。ツカサ君、またデートしよ」

「そうするか。今度はピクニックにするか?」

「町の外は嫌。街デートが良い」


 さっきは知らない世界にどうちゃらこうちゃら言ってたのに……


「わかった、わかった。また今度な」

「うん。今日は眠いから帰ろう。よく考えたら昨日は夜更かししてたからあんまり寝てなかった」


 5人で話してたもんなー。


「じゃあ、帰るか」


 俺達は飲み物を飲み干すと、会計をし、帰路につく。

 もちろん、俺のおごりだ。


「帰るまでがデートー」


 リディはそう言って、手を繋いできた。


「帰るところが同じなんだよなー。デート味がない」

「ツカサ君の将来のために言うけど、それ、奥さんに言ったらダメだよ」


 あー、奥さんの場合もそうなるのか。

 覚えとこ。


「短い時間だったけど、楽しかったな」

「100てーん」


 上機嫌に笑うリディと共に転移の魔法陣で住居区まで戻ると、屋敷に戻り、ゲートをくぐった。

 アストラルは昼間だったが、こちらは真っ暗であり、そのせいか一気に眠気が襲ってくる。


「ふあぁ……さすがに眠いね」

「そうだなー。さっさと寝よう」

「うん。でも、ツカサ君、絶対に寝る前にお風呂に入ってね」


 明日の朝にしようかと思っていたのだが……


「わかってるよ」

「うんうん、清潔感が大事だからね」


 頷きながらそう言うリディと別れると、客室に戻った。

 客室に戻ると、トウコに悪いなと思ったが、電灯をつける。


「ん?」


 トウコのベッドが空いており、部屋には誰もいる気配はない。

 時刻を見ると、すでに2時を回っている。


「セレスちゃんの部屋かな?」


 昨日は遅かったし、今日は寝るのかと思ったが、今日も夜更かしをしているらしい。


「まあいいか」


 俺はかなり眠かったが、リディが言うように備え付きの風呂に行き、湯に浸かった。

 そのまま寝落ちしそうだったので早めに上がり、寝巻に着替える。

 そして、部屋に戻ったのだが、やはりトウコはいなかった。


「んー?」


 まだ戻ってないのか……

 もしかして、セレスちゃんのところで寝るのかな?

 いや、セレスちゃんの部屋にはベッドが1つしかなかったし、それはないだろう。

 さすがに一緒に寝るような年齢でもないし。


 俺はまだ起きているならさすがにセレスちゃんに迷惑だと思い、トウコを連れ戻すためにセレスちゃんの部屋に向かう。

 セレスちゃんの部屋の部屋の前に来ると、控えめに扉をノックした。


「あれ?」


 そのまま待つが、何の反応もない。


「うーん……」


 セレスちゃんに悪いなと思ったが、ドアノブを握り、ゆっくり引く。

 扉に鍵はかかっていないようでゆっくりと開いていったが、部屋の中は真っ暗だった。


「……セレスちゃーん?」


 声量を落として声をかけるが、反応はない。


「おーい、セレスちゃーん」


 今度は普通に声をかけてみた。


「……んー? だれぇ?」


 セレスちゃんの声だ。

 どうやら寝ていたようだ。


「セレスちゃん、ごめん。ツカサだけど」

「え? ツカサ君? ちょ、ちょっと待って」


 セレスちゃんがそう言うと、すぐに灯りがつく。

 明るくなった部屋にはベッドに上半身だけを起こしているセレスちゃんしかいない。

 セレスちゃんは寝間着姿であり、ちょっと髪が跳ねていることから寝ていたことがわかる。


「ごめん。寝てた?」

「うん。えーっと、2時半? こんなに時間にどうしたの?」


 セレスちゃんが掛け時計を見た後に聞いてくる。


「リディとのデートから帰ってきたんだけど、トウコが部屋にいなかったんだよ。それでこっちにいないかなと思って」

「あ、そうか。ツカサ君はリディと出かけてたんだったね……でも、トウコちゃんがいないの? トウコちゃんなら2人が出かけた後すぐに寝たよ? なんかすげー眠いわーって言ってた」


 あいつも夜更かししてたからな……

 しかし、寝たのか……

 でも、おらんぞ。


「そっかー。わかった。ちょっとエリク君の部屋に行ってみるよ。起こしてごめんね」

「待って」


 扉を閉めようとすると、セレスちゃんが止めてくる。


「ん?」

「私も行く」


 セレスちゃんがそう言って、ベッドから降りると、スリッパを履き、カーディガンを羽織る。


「寝ててもいいよ」

「いや、行く」

「そう?」

「うん」


 俺とセレスちゃんは部屋を出ると、一緒にエリク君の部屋に向かった。

 そして、エリク君の部屋の前まで来ると、セレスちゃんが扉を強めにノックする。


「エリク、エリク」


 そのままセレスちゃんがノックを続けていると、扉がガチャッと開いた。


「姉さん、今何時だと思っているんだよ……って、ツカサもいる」


 部屋の中から眠そうなエリク君が出てきた。

 エリク君はセレスちゃんと同様に寝間着姿で髪が跳ねており、完全な寝起きだ。


「エリク、トウコちゃんを知らない?」

「トウコ? 寝てんじゃないの?」

「ツカサ君がリディとのデートを終えて帰ってきたらしいんだけど、部屋にトウコちゃんがいないんだって」

「いない? トウコが? いや、トイレかなんかじゃないの?」


 エリク君がそう言うと、セレスちゃんがこちらを見てくる。


「いや、いなかった」


 トイレも風呂も部屋に備え付きのものがあり、確認している。


「うーん……ちょっと部屋に行ってみようか」


 エリク君が考えながらそう言うと、部屋から出てきたので俺達は3人で俺とトウコの部屋に戻ることにした。


お読み頂き、ありがとうございます。

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