第164話 デート
転移の魔法陣を使い、商業区に来た俺達は手を繋ぎながら魔道具を売っているデパートにやってきた。
「ツカサ君、見て、見て! 水がイチゴ味に変わるグミだって!」
そうか、そうか。
俺はコーラ味に変わるやつを買った。
「買ってもいいぞ。俺はワニ狩りでめっちゃ儲けたからな」
トライデント代のために貯めているのだが、中一の従妹に奢るくらいの余裕はある。
「ツカサ君は本当にすごいね! 魔法大会でも優勝したんでしょ!」
優勝というものはなかったが、3勝したし、優勝でいいだろう。
「まあな! 悪の帝王を倒した」
「あ、悪の帝王? そんなのが学園にいるの?」
「ああ。暴力姫というあだ名で恐れられているトウコ・ラ・フォルジュだ」
「トウコちゃんじゃん……暴力姫って……」
リディが引いている。
「あいつはパリジェンヌを目指して、おしとやかなお嬢様ぶってたんだが、素があれだからメッキが剝がれつつあるんだよ」
特に魔法大会がマズかった。
あいつ、興奮するとすぐに暴言を連発する悪い癖がある。
「トウコちゃん、明るいからね。健康的でポジティブな女子のままでいいのに」
あれをここまで良く言えるのが本当のお嬢様だろうな。
やはり親の差か教育か環境か……
「そうだな。そういうのが好きな男子もいるだろう」
俺は嫌だけどね。
「ツカサ君は彼女とかいないの?」
「いない。別にモテないし」
トウコもな!
あ、でも、中学の時にクラスの男子にコクられたって自慢してたわ。
死ね。
「えー、ツカサ君はモテるよー」
親戚のおばちゃんが言いそうなセリフだわ。
もっとも、伯母さんは絶対に言わないけど。
「どの辺が?」
「かっこいいしー、大人だしー、明るいしー、行動力もあるから引っ張っていてくれそう! あと、知らない世界に連れていってくれそう!」
知らない世界……ワニ見る?
「そんなこと言われたことないわ」
「そう? ツカサ君って魔法使い業界にはいないタイプだし、誰にでも明るく接するからモテると思うなー」
「ふーん……」
その気になっちゃうじゃないか。
「あ、ツカサだ」
「本当だ。なんか手を繋いでいるぞ」
声がしたので振り向くと、ユイカとユキの紅白コンビがいた。
「何だ……お前らか」
「何だってひどくない?」
「ってか、その子、誰?」
ユキがリディを見ながら聞いてくる。
「従妹だ。デート中なんだよ」
「へー……どう見ても日本人じゃないな。ラ・フォルジュか」
「そういや、夏休み前にデートするって言ってたね」
言ったな。
「リディ、同級生の赤羽ユイカと白川ユキだ。トウコの友達だな」
「こんにちは。リディ・ラ・フォルジュです」
リディが丁寧に頭を下げて自己紹介する。
「血を感じない……」
「フリーダム兄妹と従妹とは思えない」
フリーダム兄妹って俺とトウコか?
フリーダムなのはトウコだけだろ。
「なあ、俺がモテると思うか?」
「は?」
「それを聞いた時点でモテないよ」
確かにナルシストっぽかったな……
「リディがモテるって言うからさ」
「うーん、普通?」
「うん、普通」
普通か……
良い感想なのか、悪い感想なのか。
「リディ、やっぱりダメだわ」
「そ、そんなことないよ。ツカサ君は明るいから一緒にいて楽しいもん。私は暗いから一緒にいるだけで楽しくなれる」
リディって暗いかな?
「「あー……」」
ユイカとユキが口を揃えた。
「何?」
「いや、別に」
「全然、気にしないでいいよ」
気になるんだが?
「まあいいや。お前らは何してんだ? デートか?」
「そんなところ。暇だからな。君はパリだったっけ?」
「そうだな。今、夜の11時だぜ?」
「夜のデートか」
めっちゃ太陽が出てるけどな。
いや、あれが太陽なのかは知らんけども。
「若干、眠いわ」
「大変だな……トウコは? 一緒じゃないのか?」
「デートって言ってるだろ。なんで妹が付き添うんだよ」
セットにすんな。
「ふむ。それもそうだな。では、デートの邪魔をしたら悪いし、我々は2階に行こう」
「そうだね」
ユイカが頷く。
「2階?」
「今日は槍を見にきたんだ。ワニが儲かると聞いたから」
確かに儲かったな。
「ロナルドにやらせろよ」
あいつの槍の腕は一級品だ。
「ワニが怖いってさ」
アメリカ人のくせに。
ワニはいっぱいいるだろ。
ワニを調べたから知ってるんだぞ。
「線の細いやっちゃ」
「どちらにせよ、そこまでロナルドを頼れんよ。ではな」
「ばいばい」
ユキとユイカは2階に上がっていった。
「ツカサ君、トウコちゃんの友達って言ってたけど、ツカサ君も仲良いの?」
「あいつらは魔法大会で戦った2人だな。もちろん、俺が勝ったけど」
すごかろう?
「へー……なんで目を閉じてるのかな?」
「それは知らん」
槍を見にいくって言ってたけど、その前に目を開けろよってツッコみたかったわ。
「変わった人だねー」
ユイカはユイカで変わってるけどな。
「リディ、買い物が終わったらカフェでも行くか?」
「行きたーい」
やはりカフェが正解か。
俺も2階の武器屋に行きたかったが、リディは絶対に嫌がるだろうしなー。
「じゃあ、行くか」
俺とリディは会計を済ませると、店を出て、前にもシャルと行ったカフェに行くことにした。
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