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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

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第160話 バカだもの


 爺ちゃんに小遣いをもらった俺はリディの部屋に向かった。


「リディー? いるかー?」


 リディの部屋の前に来ると、ノックをする。


『入ってー!』


 リディの声で入室の許可を得たので扉を開ける。

 すると、テーブルにつくリディとトウコとセレスちゃんが優雅なお茶会をしていた。


「お兄ちゃん、私の部屋はノックしないのにリディの部屋はするんだ」

「親戚とはいえ、他所様の家だろ。当たり前だ」


 そう言いながら近づき、空いている席に座る。


「ツカサ君、はい」


 リディがお茶を淹れてくれて俺の前に置いた。


「ありがと。トウコ、爺ちゃんに会ったか?」

「部屋に行ったんだけど、いなかった」

「さっき廊下で会ったぞ。小遣いくれた」

「よし、行ってくる!」


 トウコは立ち上がると、小走りで部屋を出ていく。


「ツカサ君もトウコちゃんも変わらないわね」

「2人共、よくそんなあからさまにお小遣いをもらいにいけるよね」


 従姉妹2人が呆れる。


「テストを自慢しただけだよ。セレスちゃん、ヨハンさんってどんな人?」

「ヨハンさん? 優秀な魔法使いね」


 まあ、魔力は高いな。


「そっかー。男としてはどう?」

「うーん、そこまではわからない。あまりしゃべったことがあるわけじゃないしね。なんで?」

「あれ、トウコの旦那候補らしい」

「トウコちゃんの? うーん、トウコちゃんかー……あの子、他人の恋愛ごとに食いつくけど、自分の恋愛にはまるで興味なかったよね?」


 ないね。

 それは今も変わらない。


「なんか婆ちゃんは俺らに押し付けてくるんだよね」

「え!? ツカサ君も!? 誰!? 誰!?」


 リディが食いついてきた。


「えーっと……アン、ヴィル? っていうところのミシェルさん。知ってるか?」

「誰?」

「ミシェルちゃんなら知ってるわ。2個下の子ね。ほら、たまにお婆様に会いにくる子がいるでしょ。赤みがかかった金髪の子」


 セレスちゃんは知っているらしい。

 2個下ってことは学校が被っているのかもしれない。


「あー、あの人……え!? 結婚するの!?」

「しないんじゃないの? 嫌いじゃないし、美人な人だなーって思うけど、完全に親戚の姉ちゃんだわ、あれ」


 あと、チェス盤の前で考える人の像のマネをしている人。


「そ、そう。でも、ツカサ君もトウコちゃんもなんか早いね」


 ホントになー。


「さっさと落ち着けって婆ちゃんに言われたけど、高一に何を言ってるんだろうって感じだわ」

「ツカサ君もトウコちゃんも魔力が大きいからだと思うわ。一方で私達本家の子がダメだからね」


 セレスちゃんが苦笑いを浮かべる。


「ダメではなくね? 皆、頭良いじゃん」

「魔法使いとして微妙なのよ。私に至っては魔力が低すぎる」

「うーん……」


 確かに低い……

 俺の知り合いで魔力が低いのはノエルだが、それよりも低い。

 セレスちゃん、ノエルが低い……トウコ、ユイカが高い……

 もしかしたら反比例するのかもしれない。


 俺が大変失礼なことを考えていると、扉が開かれ、トウコと金髪のおばちゃんが部屋に入ってきた。


「お兄ちゃーん、伯母さんがいたー」

「ホントだ。伯母さんだ」


 どう見ても伯母さんだ。


「元気そうですね。ツカサは魔法学園に通うことになったそうで大変喜ばしいことです」


 じゃあ、もっと嬉しそうな顔をしろよ。

 相変わらず、笑わない人だわ。


「笑わんなー」

「これがパリジェンヌだよ! 私、伯母さんみたいになりたい!」


 無理。


「死んでやり直せ」

「お兄ちゃんは死んでも無理そうだね」


 何が!?


「ケンカしない。まあ、賑やかになっていいでしょう。夕食は何がいいですか?」


 夕食……


「フランス料理って何だ?」

「マヨネーズ納豆じゃないことは確かだね」


 そりゃそうだ。


「どうしよ?」

「わかんないし、お任せでいいんじゃない?」

「そうするか」


 せーの……


「「お任せで」」


 トウコと示し合わせて声を揃えたのだが、伯母さんは眉一つ動かさなかった。


「わかりました。では、そのように」


 伯母さんはそう言って、部屋を出ていった。


「あれ? 最近、ウケてなくないか?」

「すんごいスベってるよね」


 シャルも笑わんくなったし。


「言った後のドヤ顔が良くないんじゃない?」

「いかにも合わせましたよって雰囲気を出すのが良くないと思うな」


 従姉妹がダメだしをしてくる。


「交互に話すのはどうだ? 強キャラ感が出るぞ」

「うーん……セレスちゃん」

「リディ」

「交互に」

「話しているけど」

「どう?」

「面白い?」


 良いだろ。


「「面白くない」」


 2人が同時に首を横に振った。


「難しいな」

「ユイカなら笑ってくれるのにね」


 あいつは沸点が低いからな。


「兄妹なことがバレたくない理由が笑われるのが嫌って言ってたのに笑いを取りにいくんだね……」


 リディが呆れる。


「笑わせるのと笑われるのは全然違うぞ」

「そうそう」


 まあ、それを言うと、ユイカには笑われているんだろうけども。


「お姉様、わかる?」

「この2人が笑われているんだろうなというのはわかった。それも双子じゃなくて言動が原因だと思う」


 え? そうなの?


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