第159話 甘やかしたからでは?
「校長先生が言うには5年だってさ。それまでに何とかするか腕を切るかだって」
「ツカサはどうしたい?」
「腕は嫌だ」
「今切れば、被害は最低限に済むかもしれないよ」
魔力のことだろうな。
「魔力よりも腕を取る」
「あんたはそうだろうね……まあ、あんたがそうならそれでいい。5年以内にどうにかすることを考えよう」
んー?
「今すぐ、腕を切れって言うかと思った」
「なんで孫の腕を切らないといけないんだい」
「ほら、俺の子供がどうちゃらこうちゃらってやつ」
「ああ、そういうことかい。別にそれは遺伝だから関係ないよ。後天的にあんたの魔力がなくなったところで高い魔力を持っているというあんたの遺伝子には関係ない。あんたの子供が優秀な魔法使いになる可能性が高いのは変わらない」
そうなんだ……
「まあ、子供なんて考える年でもないけどな」
「私は早く身を固めてほしいけどね。あんたらは特にだよ。落ち着いてほしい」
落ち着いてるわ。
「まずはセレスちゃんとエリク君が先だろ。特にエリク君は次の当主なんでしょ」
「あの子達は勝手に見つけるよ。でも、あんたらはいつまでも遊んでそうだ」
うーん、遊んでるかなー?
「それでミシェルさんを護衛に置いたの?」
「良い子だろ?」
「まあ、そうかもしれないけど、お姉さんだよ、あれ」
ミシェルさんも完全にお姉ちゃん目線で見ていると思う。
「あんたはそっちの方が良いよ」
「ふーん……でも、やっぱりまだそういうのを考える年じゃないわ。何よりもこれが先」
腕輪を触る。
「確かにそうだね。呪学の授業はどうだい?」
「少しずつだけどやってる。でも、むずいね」
「呪学は特に難しいからね。こっちでも優秀な呪術師を探しているけど、上手くいってない」
マジかー。
「うーん、なんで長瀬の爺ちゃんはこんなのをくれたんだろ?」
「それだよ。その理由がまったくわからない。長瀬の爺はアストラルの重鎮だ。それなのになんで盗みなんかをし、あんたに与えたのか……何か聞いてないかい?」
どうだろ?
「本当に魔法使いになりたいならこれを身に着けろって言ってたね」
爺ちゃんが言い切る前に身に着けたんだけど。
「魔法使いになりたいなら、か……」
「よくわかんないね」
「そうだね。まあ、これを考えても仕方がないか。完全に行方をくらましているし、そこは暗部の仕事だ」
どこにいるのかねー?
「ふーん、そっかー」
「あんたは本当に軽いね。腕輪のこともあるし、他所の町から狙われているってのに」
「他所の町もなー……ミシェルさんがいるし、動きもないじゃん。それに来たところで返り討ちにしてやるわい」
「あんたは強いからね。でも、気を付けな。バカなんだから」
はっきり言いおった……
「うるさいなー……」
「やっぱりあんたは身を固めた方がいいよ。ミシェルが嫌なら別な子を紹介しようか?」
「いらんちゅーに。30歳を超えて女っ気がなかったら紹介してもらうわ」
「ハァ……トウコと同じことを言う……」
んー?
「トウコにも言ったん?」
「あの子はあんた以上に異性に興味がないだろ。だから紹介してやるって言ったら鼻で笑われたね」
うーん、トウコから男の話題が出たことないしなー。
テレビもお笑いしか見ないやつだし。
「俺よりトウコだなー。あいつの子供だって優秀な魔法使いが生まれる可能性が高いわけでしょ?」
トウコは俺ほどじゃないけど、ユイカと良い勝負をするくらいには高い。
「そうだね。そして、あんたもだけど、落ち着いていて、導いてくれる異性がそばにいた方が良い。あんたらは放っておくとバカをするから」
「そんな人いるの? ヨハンさん?」
「そうだね」
当たっちゃった。
「お世話になってるって言ってたけど、そういうこと?」
「ちょっと仕事を手伝ってもらっているんだよ。ついでにトウコに会わせてみた。反応は微妙っぽいね」
興味なさそうだったなー。
「あの人、何歳?」
「23歳だね」
ミシェルさんの1つ上か。
「いやさ、ミシェルさんもヨハンさんも若いとは思うけど、16歳のガキ相手には上すぎん? 俺からしたらミシェルさんって大人すぎるんだけど」
というか、向こうがガキの相手は嫌じゃね?
「大人な方が良いだろう。あと、単純にあんたら兄妹の魔力が高すぎて相手が限られるんだよ」
「ふーん……」
「興味なさそうだね……まだ幼かったか」
幼いというか、将来のことも決めてないのに嫁さんの話をされてもピンと来んわ。
「気長でいいんじゃね? 婆ちゃんが死ぬ前までには結婚するよ」
あと、2、30年は生きるだろ。
「ハァ……まあいい。あんたに任せるよ。でも、変なバカ女だけはやめておくれよ。苦労が増えるし、心配で早死にしそうだよ」
ユイカはダメらしい。
「はいはい」
「もう行っていいよ。リディとセレスティーヌが待ってるだろ」
「わかったー。また後でねー」
婆ちゃんの部屋をあとにした俺はリディの部屋に向かった。
すると、前の方から杖をついた爺さんが歩いてくる。
「爺ちゃーん」
ラ・フォルジュの爺ちゃんだ。
「おー、ツカサ、大きくなったな」
「まあなー。あ、見てよ、これ」
爺ちゃんにテストを見せる。
「おー……よく頑張ったな」
「でしょー。爺ちゃんの喜ぶ顔が見たくて頑張った」
「孝行な孫だなー。よし、お爺ちゃんがお小遣いをやろう」
やったぜ!
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