表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

158/207

第158話 婆ちゃん


 俺とトウコは婆ちゃんからもらった小遣いをポケットに入れた。


「トウコ、学校はどうだい?」


 婆ちゃんがトウコに聞く。


「朝が辛い! ラ・フォルジュの力で日本に合わせるように圧力をかけてよ」


 俺は慣れたから別にいいな。

 もっとも、夏休み明けがきついだろうけど。


「無茶言うな。そんなに辛いなら寮から通えばいいじゃないか」

「お母さんが絶対にダメだって」

「ジゼルは寂しいんだろうね。子離れができない母親だよ」


 父さんがおるやんけ。

 2人で仲良く……いや、この歳で弟か妹は欲しくないな。


「お母さんも寮生だったんでしょ?」

「そうだね。あの子は甘やかして育ててしまった箱入りだったから寮で自立してほしかったんだよ。もっとも、すぐに男を見つけてべったりだったけどね。男子寮のあんたらのお父さんの部屋に寝泊まりしてて、何度も停学を食らってたよ」


 世界で一番聞きたくない話……


「お婆ちゃん、それを私達に聞かせてどうしてほしいの? グレそうだけど……」

「うぜー」


 マジできつい。


「それは悪かったね。ジゼルは基本的にわがままな子なんだ。だからまだあんたらの親でいたいんだろうよ」


 親はいつまで経っても親だろうに。


「不良だ」

「婆ちゃん、娘の教育はちゃんとした方が良いぞ」

「今は孫達だよ。もっとも、あんたらもお母さんに似て、人の話をまったく聞かないけどね。トウコ、研究成果のレポートは?」


 婆ちゃんがトウコを睨む。


「今最後のチェックをしてるところー。できたらメールする」


 絶対に嘘だな。


「ハァ……あんたはラ・フォルジュの中でも群を抜いて優秀なのになんでそんなにダメなのかねー?」

「それも個性。昨今は個性を大事にすることが重要であり、それは魔法使いにおいても同じこと。時代に遅れた者は容赦なく潰れるのが世の常。私はラ・フォルジュに一石を投じるのだ」


 トウコがなんか賢そうなことを言っている。

 でも、言い訳なことはわかる。


「言うことだけは一人前だ……魔法大会でイヴェールに負けたそうだね?」

「チッ」


 トウコが事前に打ち合わせた通りに舌打ちをした。


「負ける相手だったのかい?」

「どうでもいいでしょ。文句があるならかかってこい。私に勝てる者だけが石を投げてこい」


 石を投げてばっかりだな。


「別に責めているわけじゃないよ。イヴェールの娘はそんなに強かったのかい?」

「別に。お兄ちゃんにいじめられただけ」


 いじめてないわい。


「ツカサ、よくイヴェールと組んだね?」


 婆ちゃんが今度は俺を睨む。


「知らねーわ。俺は何も聞いてないし、何も知らない。そもそも何かを言われる筋合いもない」

「ふーん……まあいい。3勝したそうだね? それは見事だよ。だけど、妹の首を絞めるのはいただけない。いや、トウコもだね。なんで兄妹で争うんだい? 組めばいいじゃないか」


 エリク君がチクったな。


「いや、なんで兄妹で組むんだよ」

「そうだよ。皆はすぐに双子をセットにするけど、別に仲良くないからね」


 そうそう。


「いや、仲良いじゃないか」

「「良くない」」

「ハァ……ジゼルの子だねー」


 ジゼルの子だよ。


「前にも電話で言ったけど、同じクラスにするように圧力をかけるのとかやめてよ。なんで高校生にもなって妹と同じクラスにならんといけないんだ。むしろ、避けるだろ」

「そうだ、そうだ。おかげでめんどくさいよー」


 俺とトウコがクレームを言う。


「なんで兄妹であることを隠すんだい? そんなに同じ顔をしててさ」

「笑われるじゃん」

「トウコちゃんってお兄さんとリアクションが同じだよねって笑われるんだよー」


 俺もお前って妹と同じこと言うよなって言われる。


「それも個性だろ。時代に遅れないようにしな」


 おい、返し技されてんぞ!


「何言ってんの? 個性、個性だけじゃダメなんだよ! 人間は知性があり、他人と協力することができる! それが大事なんだよ!」

「あんたの言葉ほど、心に響かないものはないよ」


 それはそう。


「婆ちゃん、トウコに中身がないのはその通りだけど、別に問題ない。俺もトウコも普通に学園に通っているし、成績だってその通り。何も問題ないだろ」

「そうだね……普通が一番だよ。贅沢なんて言っちゃいけない。普通に学校に行ってくれるだけでね……」


 婆ちゃんがハンカチを取り出し、目元を拭う。


「お兄ちゃんのせいだー」


 それはそう。


「個性だよ、個性」

「悲しい個性……」

「うっさい」


 俺だって、俺なりに頑張ってるんだよ。


「まあいいよ。とにかく、2人共、学園で色んなことを学び、楽しみな。トウコ、セレスティーヌは行っていいよ。ツカサは残りな。ちょっと話がある」


 話、ね。


「じゃあ、ツカサ君、話が終わったらリディの部屋に来て、待ってるから」

「お茶会、お茶会。パリジェンヌ」


 カヌレでも食うのかね?


「わかった」


 頷くと、セレスちゃんとトウコが部屋を出ていった。


「ツカサ、こっちに来な」


 婆ちゃんと2人きりになると、婆ちゃんが手招きしてきたのでデスクを回って婆ちゃんのそばに行く。


「何ー?」

「腕を」


 そう言われたので左腕を差し出す。

 すると、婆ちゃんが腕を取り、腕輪をじーっと見始めた。


「どう?」

「確かに渇望の腕輪だね。昔、見たことがあるよ。色は金だったけどね」


 マジックで塗ったからな。

 しかし、すごいのは海に行った時も当然、着けていたのだが、誰もツッコんでこなかったこと。

 ダサいと思わないのかね?


「取れる?」

「いや、私には無理だね。そもそもジゼルで無理だったなら無理だ。ラ・フォルジュにジゼル以上の解呪の使い手はいない」


 母さんってすごかったんだな。

 ちょっと見直したぞ。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
ジゼルさん予想外に問題児だった...w
腕輪の存在忘れてた
>あんたの言葉ほど、心に響かないものはないよ まぁ……舌の根の渇かんうちにそんな前言覆すような発言をされてはな…… しかし、トウコの敗戦はそこまで深刻なリアクションでもないし、存外イヴェールに対し…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ