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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

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157/207

第157話 ラ・フォルジュ


 建物に入ると、中は中世ヨーロッパ風の雰囲気であり、ラ・フォルジュの実家とどこか似ていた。


「一緒じゃん」

「同じ建築家の人が建てたってお父様が言ってたよ」


 リディが教えてくれる。


「へー……ゲートは?」

「そこの部屋だよ」


 リディは近くの扉を指差すと、引っ張っていく。

 そして、扉を開けると、家具なんかは一切ないが、黒い扉が壁に設置されていた。

 もちろん、俺の部屋にもあるゲートだ。


「トウコ、手土産は持ったな?」

「うん、ひよこのまんじゅう」


 よしよし。


「じゃあ、行くかね」


 俺達がゲートの前まで行くと、ヨハンさんが一歩前に立ち、扉を開けてくれたのでゲートをくぐる。

 すると、見たことある部屋に1人のニコニコと笑う若い女性がいた。

 その女性は長い金髪を1本に結び、身体の右前に垂らしている。


「久しぶり、ツカサ君、トウコちゃん」


 女性はニコニコ顔のまま近づいてくると、俺とトウコを順番に抱きしめた。


「久しぶりだね、セレスちゃん」

「おひさー、セレスちゃん、またおっきくなったねー」


 セレスちゃんはセレスティーナという名前が本名だが、長いのでセレスちゃんと呼んでいる。

 エリク君とリディの姉であり、俺とトウコの従姉だ。


「そこは突っ込まないで」


 セレスちゃんが笑顔で苦言を呈する。

 セレスちゃんは体の一部が大きいのだ。

 だから抱きしめられた時にちょっとドキッとした。


「セレスちゃん、婆ちゃんと伯母さんは?」

「お母様はすぐに帰ってくると思うけど、婦人会に出ているわ。お婆様は書斎。着いていきなりだけど、お婆様の部屋に行ってちょうだい」


 まあ、挨拶せんとな。


「わかったー」

「では、私はこれで」


 ヨハンさんが一礼する。


「ヨハンさん、ありがとうございました」


 セレスちゃんがニッコリと笑うと、ヨハンさんも笑い、先に部屋を退室していった。


「じゃあ、俺達も行くか」

「そだね。リディとセレスちゃんは?」

「私が案内するわ。リディは自分の部屋で待ってなさい」

「はーい」


 リディは素直に頷くと部屋から出ていった。


「じゃあ、行きましょうか」


 俺達も部屋から出ると、廊下を歩いていく。


「懐かしいなー」

「ねー。相変わらず、広いし」


 ウチとは大違いだ。


「エリクとリディはそっちに泊まったんでしょ? 私も行きたかったわ」

「来てもいいけど、狭いよ」

「お兄ちゃんはエリク君やリディよりもセレスちゃんが良いよねー」


 まあね。

 最初に見た時は子供心にこんな綺麗な人がいるのかと思った。


「懐かしき初恋の思い出」

「淡いねー」

「お前はエリク君にせんかったか?」

「エリク君弱いもん」


 強い方が良かったか。


「ふふっ、懐かしいね。あんなに小さかった2人が高校生だもんね」


 セレスちゃんが笑う。


「あんまり変わらないでしょ」

「そうそう。えーっと、24歳だから8つ上……あれ?」


 離れてるね。


「年齢の話はやめましょうか」


 セレスちゃんの笑顔に陰りが見える。


「「う、うん、ごめんね。はんせー」」

「そうやって誤魔化すよね……」


 バレてる!?

 笑うところだよ!?


「ほら、着いたよ」

「お婆ちゃん、元気かなー?」

「まったく……ハァ」


 セレスちゃんは一つため息をつくと、扉をノックする。


「お婆様、ツカサ君とトウコちゃんがいらっしゃいました」

『入りなさい』


 中から婆ちゃんの声が聞こえてくると、セレスちゃんが扉を開けたので俺とトウコが中に入る。

 部屋は婆ちゃんの書斎であり、デスクにつく白髪交じりの金髪の婆ちゃんがいた。


「婆ちゃん、やっほー。元気ー?」

「白髪が増えてるねー」


 確かに前に見た時より、増えてるわ。


「苦労が多いんだよ。孫達が面倒ばかりかけるからね」


 いや、年だろ。


「セレスちゃんもエリク君もリディも真面目じゃん」

「不良になったの?」


 不良には見えないなー。


「あんたらだよ……ハァ……相変わらず、元気な双子だね」


 婆ちゃんがため息をついた。


「夏休みだもん」

「超元気」

「ジゼルは大人しい子だったんだけどねー……マコトさんに似たのかね?」


 俺らって父さんに似てるか?

 あんまり似てないような気がするが……


「別に何でもいいじゃん」

「そうそう。元気なのは良いことだよ。それよりお婆ちゃんは? 足を悪くしたとか言ってたけど、大丈夫?」

「優しい孫達なんだけどねー……足は仕方がないよ。こればっかりは年だからね」


 年相応か。

 爺ちゃんはどうかねー?


「あ、トウコ。みやげ、みやげ」

「そうだった。お婆ちゃん、これあげる。ひよこさんが可愛いよ」


 トウコがひよこのまんじゅうを婆ちゃんに渡す。


「ありがとうね。皆で頂くよ」


 婆ちゃんがにっこりと笑った。


「あ、あと、これもあげる」

「俺もあげるわー」


 トウコがテストを渡したので俺も渡す。


「トウコは相変わらず、優秀だねー……ツカサはどうしたんだい? 90点なんてありえな……すごいじゃないか」


 ありえないって言おうとしたな?

 グレるぞ。


「お婆ちゃんの喜ぶ顔が見たくて頑張った!」

「それだけがモチベーションだったな」


 嘘だけど。


「お小遣いが欲しいんだね。わかりやすい子達だよ。あとでお爺ちゃんにもらいな」

「お爺ちゃん用には別の答案用紙があるんだよ」

「俺も86点のテストがある」


 ちゃんと持ってきてる。


「ハァ……図太い孫だよ。マナがいいかい? それともユーロかい?」

「「円に決まってんじゃん」」


 ユーロなんかいらんわい。


「ほら」


 婆ちゃんがポチ袋を2つ取り出し、デスクに置いた。

 どうやら用意してくれていたようだ。


「お婆ちゃん、ありがとー」

「愛してるー」


 良い婆ちゃんだわ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
絶対ユーロだろ、10年で価値が半分になる通貨なんていらんわ
土産なら鳩のサブレーに決まっているだろ!!(注:神奈川県民の中でも意見が割れます
シャルの家が絡まなければ優しそうなばあ様であった
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