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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

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156/207

第156話 母方の実家へ


 月曜日になり、ラ・フォルジュの実家に帰る日になった。

 帰ると言っても時差があるため、この日は夕方までゆっくりと過ごし、早めの夕食を食べた。

 そして、夕食を食べ終え、準備を終えた俺がゲートをくぐろうとすると、ノックの音が部屋に響く。


「どうぞー」


 入室の許可を出すと、扉が開き、金髪の可愛らしい女の子が覗いてきた。

 従妹のリディである。


「ツカサ君、おはよう」

「おはよ。どうしたん?」


 今からそっちに行くというのに。


「迎えにきた。一緒に行こう」


 リディがそう言って、手を繋いでくる。


「俺は男子寮だぞ。トウコのところに行け」

「えー……じゃあ、あの分岐点で待ち合わせしよー」

「他の生徒にトウコと兄妹なことがバレたくないの」


 一緒にいるところを見られたくない。


「気にしなくてもいいのに」

「同い年だと気にするんだよ」

「ふーん、でも、他の生徒いなくない? 夏休みでしょ」


 まあ、確かにな。


「うーん……すぐか。じゃあ、そこで待ってな」

「うん!」


 リディは嬉しそうに頷くと部屋を出ていったので、ゲートをくぐり、寮に向かう。

 自分の部屋を出ると、廊下がしーんとしており、誰かがいる気配はない。

 やはり夏休みなため、皆、帰っているようだった。

 1階に降りても人の気配はなかったが、そのまま寮を出て、丘を降りていく。

 そして、分岐点に来ると、そのまま2人を待つことにした。


「あ、ツカサ君」


 女子寮の方からトウコとリディがやってくると、リディが走ってくる。

 そして、抱きついてきた。


「どうした? テンション高いな」

「夏だもん」


 そうか、夏だからか。


「ハァ……こっちでお兄ちゃんと歩きたくないわー」


 トウコがため息をつきながらやってくる。


「リディが言うんだから仕方ないだろ。それに男子寮は人の気配がなかった」

「女子寮もだね。でも、さっさと行こうよ」

「そうだなー」


 ここにいてもしょうがないしな。


「こっち、こっち。案内してあげる」


 リディが俺の手を引っ張るので丘を降りていく。


「そういやラ・フォルジュの家がわからん。住居区だよな?」

「そうだよー。お兄ちゃん達もそこに住めばいいんじゃない?」


 なんでだよ。


「普通に長瀬の家があるわ」

「ツカサ・ラ・フォルジュになろうよー」


 えー……


「ダサいから嫌」

「笑える」

「ねえ、なんでツカサ君とトウコちゃんはラ・フォルジュをディスってくるの?」


 別にそんな気はない。


「ラ・フォルジュがダサいんじゃなくて、俺らに合わないんだよ。超日本人だぞ」

「中学の時にそっちに憧れて、金髪に染めようと思ったけど、鏡を見て断念した私の気持ちはわかるまい」


 トウコの金髪は笑えるな。


「まあ、トウコちゃんは黒髪が似合うと思うよ。可愛いじゃん」

「私、パリジェンヌがいい」

「何それ?」

「パリジェンヌだね!」


 本人もよくわかってないな……


「そ、そう?」


 リディが戸惑っていると、転移の魔法陣がある建物に到着したので中に入る。

 中にはやはり誰もいない。


「住居区に行きたいって念じてね」

「はいはい」


 リディから手を離すと、転移の魔法陣に乗り、住居区に行きたいと念じた。

 すると、すぐに視界が変わる。

 そして、2人もすぐに来たので外に出た。


「おー、何気に初めて来たわ」


 住居区は5階建てのビルが多く並んでおり、やはりヨーロッパ風の街並みだった。


「用事ないしねー」

「お前は来たことあるのか?」

「この前、リディを迎えに来た時が初めてだね」


 そういやそんなこともあったな。


「ラ・フォルジュ邸はどこなん?」

「奥だね。この辺りはアパートが中心で奥に住宅街がある」


 家か。

 どうせ住んでないならアパートでもいい気がするがねー。


「こっちだよ」


 リディに案内され、歩いていく。

 すれ違う人も多いが、学生ぐらいの年の人はおらず、皆、大人だ。


「学校の連中はおらんか」

「前に来た時も子供はいなかったね」


 やっぱりそうか。


「ツカサ君やトウコちゃんくらいの歳の子は寮に入るからね。住居区に住んでいるのはこっちで住んでいる人が大半だから子供はあまりいないと思う。基本的には独身だって」


 中一が説明してくれる。


「なんで独身なん?」

「子供は義務教育の学校があるからね。付き合いもあるし、さすがにここからは通わせないでしょ」


 それもそうか。

 友達を呼べんし、何より、子供は普通にアストラルのことをしゃべりそうだ。

 そして、嘘つき呼ばわりだな。


「まあ、学校の生徒に見られなきゃいいか」

「そうだね」


 俺達がそのまま歩いていくと、立ち並んでいく建物がアパートから一軒家に変わっていく。


「やっぱり日本っぽくないなー」

「なんか違うよね」

「電線じゃないかな? 日本はすごいでしょ」


 あー、電線、電柱がないんだ。

 それだけで別のところって感じがすごいする。


「なるほどねー」

「あ、あそこがウチの屋敷だよ」


 リディが指差した方向には大きな洋風の屋敷が見える。


「無駄にでかいな」

「無駄だよね。絶対に見栄だよ。これだから名門は……」


 なー?


「ツカサ君もトウコちゃんもその家の子じゃないの……見栄って言うけど、名門の家がボロ屋敷だったら引くでしょ」


 まあな。


「ところで、あそこに立っている男は誰だ?」


 見栄はりハウスの前には男が立っていた。


「あ、紹介するね。ヨハンさーん!」


 リディが男の方に向かって声をかける。

 すると、男が一礼をした。


「ヨハン? 聞いたことないなー……」


 俺達は屋敷の前に立つ男のもとに向かう。


「リディ、待ってたよ」

「はい。あの、紹介しますね。ツカサ君です」


 リディが男に俺を紹介した。


「はじめまして。私はヨハン・ランドロー。長瀬ツカサ君だね?」


 俺のことを知っているっぽい。


「そうですね。あのー、知り合いじゃないですよね?」


 ヨハンという男は身長も高く、柔和な顔はイケメンだ。

 しかも、魔力が結構高い。

 絶対に初対面だ。


「そうだね。私はラ・フォルジュ派閥のランドロー家の魔術師だよ。今、ラ・フォルジュ家でお世話になっていてね。それで出迎えにきたんだよ」


 お世話って何だろう?


「お前、知ってるん?」


 トウコに聞いてみる。


「この前、リディを迎えにきた時に会った」


 へー……


「まあ、私のことは良いよ。ジュストさんとエリクさんは仕事で外出中だけど、お婆様達が待っているから行こう」


 ジュストというのはエリク君やリディの父親だ。

 つまり母さんの兄で俺達の伯父。


「中にゲートがあるんですよね?」

「そうだね。こっちだよ」


 俺達はヨハンさんの案内で建物に入った。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

本作品ですが、誠に勝手ながら今後は週1日更新となります。

具体的には水曜日になります。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
作者の作品で一番好きなんだけどこれ以外書籍化決定してるからなあ 人気ないわけじゃないんだろうけど
お、新作ですかね??
今までの感じからするとヨハンは怪しいと見た
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