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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

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152/207

第152話 そーらーにー、きえってーった


 話をしながら団扇で扇ぎ、炭火が安定してくると、クロエがミシェルさんと共に食材を持ってきた。

 なお、クロエはやっぱりメイド服だ。


 俺達は焼いている肉や魚介類をじーっと見る。

 そして、もういいかなーと思って、肉に箸を伸ばすと、トウコが同じ肉を狙っていたので同時にピタリと止まった。


「その芸はもういいから……」


 え?


「「あ、うん……」」


 俺とトウコは同時に箸を引っ込めた。


「ごめん……芸じゃなかったのね」


 謝られても……


「トウコ、野菜を食え」

「それは会長にあげる。私はそんな脆弱じゃない」


 トウコはそう言って、肉をひょいと取り、食べだした。


「美味しー! メイドさん、すごーい!」


 トウコが絶賛したのでなるべくトウコから離れた位置の肉を取って食べる。


「確かに美味いわ」

「うん、美味しい」

「雰囲気もあって良いねー」


 ユイカとユキも絶賛する。


「ほら、シャル、このピーマンが美味しそうだぞ」


 俺はいらないけど。


「なんであなた達双子は野菜を勧めるのよ……」


 シャルはそう言って、ピーマンではなく肉を食べる。


「会長、肉を食べるんだ。意識高い系の野菜派かと思ってた」

「ベジタリアンじゃないわよ」


 知ってる。


「シャルはハンバーグが好きなんだぞー」

「だから自分は知ってるアピールうざいってば」


 俺達はその後も肉や魚介類を堪能していき、夕食を楽しんだ。

 そして、夕食を終えると、辺りはすっかり暗くなり、波音が静かに聞こえてくる。


「夏だねぇ……」


 トウコが暗い海を眺めながらつぶやいた。


「そうだな」

「昔、幼稚園のきもだめしで泣いてたねー」


 そんなこともあったな。


「お前が脅かしてきた時だな。俺が泣いたらお前も伝染して泣いてた」

「双子だからかねぇ……」

「そうじゃないの?」


 知らんけど。


「何、その微笑ましいエピソード?」

「急にどうした?」


 ユイカとユキがツッコんでくる。


「ふっ、黄昏気分なのさ」

「ふっ、今年の夏はもう来ないのさ」

「「こんな気分の時は花火で明るくなるといいのさ!」」


 トウコと口を揃え、シャルに向かって拍手した。


「錬金術の叡智を見せてあげるわ!」


 シャルが自慢のサイドテールを払う。


「芸細な双子だ」

「生徒会長の取り巻きみたいだな」

「「誰がマチアスだ!」」


 あんなんと一緒にするな。


「すまん、すまん。で? ジュリエットは何をするんだ?」


 ユキはシャルに聞く。


「ジュリエット言うな。ツカサがどうしても花火を見たいと言うから用意してきたのよ」


 言ったっけ?


「へー……それだけ聞くと、花火大会に一緒に行こうというデートの誘いに聞こえるな」

「……え? そうだった?」


 シャルが確認してきた。


「いや、海に行こうって誘ってる時の会話だからここで花火だよ。線香花火で夏を感じ、噴出花火をトウコに向けて遊ぼうっていう意味で誘った」

「こらこらー」


 トウコが肩を叩いてきたが、無視する。


「あ、そうよね。合ってる、合ってる。私、人の意図を汲み取るのが苦手だから焦ったわ」


 シャル……

 友達いないって言ってたもんな……


「それで何を作ってきたんだ? 花火なんだろうけども」

「それよ、それ。普通の花火はまあ、買えばいいじゃない? それはそれとして、風情あるものを作ってきたわけ」


 シャルがそう言って、色とりどりの野球ボールくらいの玉が入ったカゴを取り出した。


「赤、青、黄……カラーボールだな」

「何これ?」


 俺とトウコがカゴの中を覗いた後にシャルに聞く。


「花火よ。これは火薬で作る従来の花火ではなく、火炎薬にブースターを加えて、さらには色の要素をキレナという花から抽出したものを加えているわけ。あ、キレナっていうのは色が時間によって変わる花なんだけど、それから色素のみを抽出するのは非常に難しいのよ…………聞いてる?」


 シャルが途中で説明を止めた。


「聞いてる」

「聞いてない」


 俺は頷いたが、トウコが首を横に振る。

 ついでに言うと、ユイカもユキもミシェルさんも聞いてないと思う。

 クロエに至っては片付けを始めていた。


「……まあいいわ。見た方が早いでしょう」

「うん、そうして。実につまんない」


 トウコは正直だなー。


「あなたの女神ごっこよりかは面白いわよ。ね?」

「うん」


 チンプンカンプンだけど、うん。


「ほらー」

「……彼氏に同意を求めるなよ。答え決まってんじゃん…………わかったからそれを見せてよ」

「ツカサ、悪いけど、これを海に思いっきり投げてくれない?」


 シャルがカゴを指差す。


「何色?」

「好きなのでいいわよ」

「じゃあ、青にするか」


 そう言って青い玉を手に取る。


「どのくらいだ?」

「適当でいいけど、海水に反応するように作ってるから海には届いてね」


 2、30メートルじゃん。

 舐めるな。


「シャルとは違うわい」

「……と、届くわよ」


 届かんな。

 シャルって絶対に球技とかできそうにないし。


「じゃあ、行くぞー」


 そう言って、玉を海に向かって投げた。

 玉は放物線を描いていたが、暗い闇に吸い込まれていき、何も見えなくなる。

 直後、ちょっとだけ灯りが見えた。


「ん?」

「え?」

「何? 何?」

「光った?」

「何か昇ってるわね」


 ミシェルさんが言うように光が昇っていき、縦線を描く。

 すると、バーンという音と共には青い光が広がり、花を作った。


「打ち上げ花火じゃん」

「すげー」

「綺麗」

「風情だねぇ……」

「え? これいいの?」


 いいんじゃないの?

 知らないけど。


「これが錬金術の力よ。すごいでしょ、すごいでしょ」


 シャルが上機嫌で肩を叩いてくる。


「すごいなー。よし、どんどん投げていこう」


 俺は玉を取ると、海に向かって投げていく。

 すると、色とりどりの打ち上げ花火が上がっていき、非常に綺麗だった。

 皆も喜んでいたし、何よりシャルが一番はしゃいで説明していた。

 俺以外、誰も聞いてなかったけど……

 あと、誰か投げるの代わってくれないかな?


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― 新着の感想 ―
手持ち花火程度ならともかく、打ち上げ花火は浜辺でもマズくないかな? プライベートビーチだからそのあたりの制限は緩いのかな?
男一人なせいで労働が全て押し付けられている…… まあその分ハーレムだし良いか
もはや、彼氏云々否定もしないけどちゃんとくっつくまでは油断できない
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