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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

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151/207

第151話 差


 シャルと浅瀬で練習をしていると、クロエが呼んできたので昼食となった。

 遠くにいたバーサーカー3人衆も戻ってきたので皆でクロエが用意してくれた弁当を食べる。

 そして、昼食を食べ終えると、クロエがスイカを取り出した。


「ふっふっふ、諸君、夏のイベントとは何だと思う?」


 ユキが立ち上がって不敵な笑みを浮かべる。


「「「スイカ割り」」」


 他にねーだろ。


「その通り。世界で一番上手と評判な私が皆にデザートを振舞おうではないか」


 はいはい……


「どうすんだ?」

「まずは目隠しをしないと……」


 ユキは白いハチマキを取り出し、目を隠すように巻く。


「意味ねー……」

「だから目を閉じてるじゃないの……」

「ユキ、泳いでいる時も閉じてたよね」

「ギャグじゃない?」


 そんな気がしてきた。

 こいつ、結構ボケるし。


「いや、これが大事なんだ。よく実は薄目を開けているんじゃないかって言われた」


 中学の時か……


「それでどうするんだよ?」

「今から私の秘技をお見せしよう」


 ユキはそう言うと、敷物の上に置いてあるスイカを持って、抱える。

 正直、この時点で見えてるじゃんと思ったが、野暮なので言わない。


「スイカ割りってスイカを地面に置かないっけ?」

「それは普通のやつだ。秘技だと言っただろう。さてと……」


 ユキはどこからともなく、刀を取り出した。


「銃刀法違反だ」


 いーけないんだ、いけないんだ。


「固いことを言うな。私の秘技には2種類あって、危なくてよく止められるやつとそうじゃないやつがあるが、どっちがいい?」

「危ないのって?」

「ウィリアムテル方式だな」


 は?


「何それ?」

「知らんか? 息子の頭の上にリンゴを置き、それを弓矢で打ち抜いたスイスの英雄だ」


 意味わからんが?

 それのどこが英雄なんだ?


「え? その方式だとスイカをどうするんだ?」

「頭に置く。誰か立候補はいないか?」


 ユキが聞いてくるが、誰も手を上げない。


「つまらんな」


 やっぱり見えてるし……


「いや、そりゃそうだろ」


 頭にスイカを乗せ、斬るんだろ?

 スイカの汁か血かわかんねーよ。


「じゃあ、安全な方にするか……刮目せよ!」


 ユキがそう言ってスイカを片手で持ち、構える。


「お前が刮目しろよ」

「お兄ちゃん、しっ!」


 トウコに諫められたので黙ってユキを見る。

 すると、ユキがスイカを宙に放り投げた。


「ほー……」


 俺達は追うようにスイカを見上げる。

 スイカは高く上がったが、最高到達点に達すると、当然のように落ちてくる。

 すると、ユキが居合切りの構えになった。


「秘剣! 燕返しっ!」


 ユキはものすごいスピードで飛び上がると、数メートルは飛び、刀を振り抜く。

 そして、スイカと共に落ちてくると、刀を消し、着地と同時に真っ二つに割れたスイカを両手でキャッチした。


「「「おー!」」」


 さすがにこれには全員で拍手する。


「ふっ、どうかな?」

「すげー!」

「やばいね!」


 俺とユイカは拍手をし続けるが、トウコとシャルは微妙な顔をしていた。


「どうしたん?」

「あれ、魔法大会で私達が空を飛んだら使ってたやつでしょ。あんなスピードでジャンプされたら上空で躱せるわけないじゃない」

「多分、千剣と組み合わせて使うんだろうね」


 あ、そういうことか。


「ロナルドの風魔法で動きを止めれば一撃必殺だぞ。誤算は誰も飛ばなかったことだが……」


 こいつら、シャルが飛行魔法を使えることを知って、ちゃんと対策を立ててきてたんだ。


「まあまあ。その辺は冬に考えてください。ユキさん、スイカをもらえますか?」

「あ、どうぞ」


 ユキがクロエにスイカを渡すと、クロエがさらに包丁で切り分けていった。

 そして、切り分けたスイカを皆で食べる


「夏だね」

「そうだなー」


 冷えてて美味しいわ。


 俺達はスイカを食べ終えると、午後からも海を満喫した。

 引き続き、シャルの魔法の練習もしたし、泳いだりもした。

 なお、シャルの泳ぎの練習も10秒だけやった。

 そうやって、楽しんでいると、夕方になったので海から上がり、別荘に戻る。


「お兄ちゃん、先にシャワーを浴びていいよ。私は時間がかかるし」

「悪いな。そうするわ」


 俺は先に部屋にある風呂場に行くと、シャワーを浴びた。

 そして、トウコが待っているのでさっさと上がると、トウコに風呂に入らせ、外のテラスに向かう。

 テラスにはクロエがおり、炭をコンロに並べていた。


「クロエ、俺がやっておくからクロエもシャワーを浴びてきなよ」

「いえいえ、私の仕事です」

「いや、クロエも海に入っていないとはいえ、潮風でべたついたでしょ。俺は経験があるから火を起こすくらいはできるよ」

「そうですか? では、お願いします」


 クロエはそう言って団扇を渡してくると、炭に向かって指を向ける。

 すると、炭に火が付いた。


「魔法だなー……」

「魔法です。軽くシャワーを浴びたら食材を準備しますので火の方をお願いします」

「わかったー」


 クロエが別荘に入っていったので一人で火を育てていく。

 すると、ユイカ、シャル、トウコ、ユキの順番でシャワーを浴びた女性陣が次々とやってきて、それぞれの席についた。


「こんなもん、火魔法でどーんでいいんじゃないの?」


 シャルが炭を見ながら聞いてくる。


「消し炭になるわ。じっくりやるんだよ。あと風情を楽しめ」


 とても大事。


「ふーん……あなた、こういうのが得意なの?」

「別に得意じゃないけど、子供の頃とかキャンプに行ったしな」

「キャンプ……」


 シャルは絶対に行かないだろうな。


「虫よけでも作ってくれよ」

「それいいわね。夏は蚊がうざい」

「ほら、来て良かっただろ。アイディアがいっぱい」

「そうね。二度と泳ぎの練習はしないけど」


 あっという間に沈んでいってたもんな。


「ほらー、シャルが好きな火だぞ」

「好きなのはアルコールランプの落ち着いた火よ」


 つくづくインドアだな。


「ポーション作る時のあれね」

「あ、飲む? 疲れたでしょ?」

「持ってきてんの?」

「うん。あなたが好きなコーラとソーダ味があるけど、どれにする? あ、ちゃんと冷蔵庫に入れてたやつよ」


 準備してたのか。


「じゃあ、コーラくれ」

「はい」


 シャルがポーションをくれたので飲む。

 すると、すーっと疲れが取れていくような気がした。


「いやー、すごいわ」

「でしょー? あ、あなた達も飲む…………何よ?」


 シャルが訝し気な表情でバーサーカー3人衆を見る。


「いや、仲良いなって思って」

「うん、良いことだよ」

「ね? この差だよ。私達には仏頂面なのにお兄ちゃんにだけは笑顔を振りまいている」


 どうでもいいけど、お前らも団扇で仰いでくれね?


お読み頂き、ありがとうございます。

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