第149話 海だー
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
部屋を分けたのでそれぞれの部屋に入っていった。
俺とトウコの部屋は1階であり、ベッドが二つ並んでいる。
窓からは海も見え、かなり良い部屋に見えた。
「すごーい!」
トウコが窓から海を眺め、騒いでいる。
「夕日が綺麗そうだな」
「だねー。でも、一緒にいるのはお兄ちゃんだよ」
不満か?
俺は不満。
「お前、ベッドはどっちがいい?」
「奥!」
「じゃあ、俺が手前な」
手前のベッドに空間魔法に収納していた荷物を出す。
すると、トウコも同じように自分のベッドに荷物を出した。
「多くないか?」
トウコのカバンは3つもある。
1泊2日にしては多すぎる。
「どうせ空間魔法があるしねー。色々持ってきた」
「ふーん……」
女子は多いのかね?
「はい。お兄ちゃん」
トウコが荷物の中から子供の頃に買ってもらったシャチの浮き輪と空気入れを取り出し、俺のベッドに置く。
「何これ?」
「シャチ君。お兄ちゃんは水着に着替えるの早いでしょ。先に行って、膨らましておいて」
「まあ、いいけど……」
魔法でどうにかできないのかね?
「じゃあ、お兄ちゃん、私は2階のユイカとユキの部屋に行ってくるから」
「そっちで着替えるん?」
着替えて海に集合ということになっている。
「うん。日焼け止めとか塗らないといけないしね」
「塗ってやろうか?」
「嫌だよ…………いや、待て。お兄ちゃんはどうするの?」
「日焼け止めか? いらない」
俺は焼けても気にしない。
「お母さんが怒るよ。あと、お風呂に入ったらヤバくない?」
染みるか……
「トウコ、2階に上がる前に背中に塗ってくれ」
他は自分でもできるが、背中だけは無理。
「ほいほい。脱いで」
そう言われたので上のシャツを脱ぎ、ベッドに寝そべる。
「頼むわー」
「へいへい」
トウコが日焼け止めを背中に塗ってくれる。
「ついでにマッサージでもしてくんね?」
「お客さん、こういうところ初めて?」
「やめーや」
兄妹でやるネタじゃねーわ。
「変なこと言うからでしょ。そういうのはメイドさんに頼みな。よし、おっけー!」
塗り終えたようで最後にパシンと背中を叩いてきた。
「敷物とかテントは?」
「そこ。持っていっておいて」
トウコが自分のベッドを指差す。
「了解。寂しいから早く来いよ」
「はいはい。サングラスを忘れないようにねー」
トウコがそう言って出ていったので水着に着替え、トウコが置いていってくれた日焼け止めを塗っていった。
最後に頭にサングラスをかけると、荷物を持って海に向かう。
別荘を出て、砂浜に足を付けた瞬間、熱さを感じたが、それも懐かしかったし、夏という感じがした。
俺は適当な場所にアウトドア用のテントを立て、敷物を敷く。
そして、シャチ君を広げると、足で空気入れを踏みながら空気を入れていった。
「あつー……」
これ、地味に重労働だな……
徐々に膨らんでいくシャチ君を見ながら足を動かしていると、別荘の方からミシェルさんがやってくる。
ミシェルさんは水着姿だが、上にジャージを羽織っていた。
なんか本当に引率の先生みたいだが、スタイルが良く、綺麗だと思う。
もっとも、手に持っているチェス盤がそれ以上に気になった。
「何してるの? シャチ?」
ミシェルさんが聞いてくる。
「トウコのシャチ君です。あいつ、ガキなんで」
「へー……お兄ちゃんは大変ね」
ミシェルさんはそう言いながらテントの下の敷物に座った。
「またクロエとチェスをするんです?」
「私は引率だからね。クロエとここで皆を見てるわ」
チェスをしながら見るわけね。
「そのクロエは?」
「お嬢様の準備の手伝い」
シャルは人一倍時間がかかりそうだしな。
「あつー……」
「手伝おうか?」
「いや、大丈夫です」
さすがに俺がやるわ。
何のための体力だと思われそうだし。
「そう……若いのも来たわよ」
ミシェルさんにそう言われたので別荘の方を見ると、ユイカとユキがこちらに向かって歩いてきていた。
もちろん、2人共、水着だし、ミシェルさんのように上に何かを羽織っているわけではない。
「あれ? トウコは?」
2人がこちらにやってきたので聞いてみる。
「ジュリエットのところ。ちょっと声をかけるんだってさ」
ユイカが答えてくれた。
「ほーん……」
「あの2人、ライバル同士には見えないよね。実に奇妙な関係」
ユキが肩をすくめる。
「ツカサのせいでしょ」
せめて、おかげと言え。
「シャルはともかく、トウコは社交的だから基本的には敵を作らないからなー」
氷姫モードが良くないんだな。
「そんな感じはするね。ツカサに似て、明るいというか、ポジティブというか……」
「バカなんだよ」
「まあ……そんなことより、ツカサ、どう? 意外とあるでしょ」
ユイカがそう言って、ユキを指差した。
ユキは全体的に細いが、確かにそこそこある。
「自分を言えよ」
ユキがちょっと赤くなってんじゃん。
「そこは自慢できるものはない」
「あっそ。ユキ、肌白いなー。名は……」
何だっけ?
「名は体を表すかい? まあ、私もジュリエットほどじゃないけど、そんなに外には出ないからね」
「それそれ」
綺麗だと思う。
でも、やっぱり目が行くのは閉じている目だ。
開けろよ。
「ツカサ、そのシャチもういいんじゃない?」
ユイカにそう言われたので足を止め、空気穴に蓋をする。
「あー、疲れた」
「お疲れ。トウコとジュリエットも来たよ……あとメイドさん」
ユイカがそう言うのでシャチを持って立ち上がると、確かに3人がこちらに向かって歩いていた。
トウコはどうでもいいので割愛するが、シャルは水着だと思うが、上にパーカーを着ている。
しかも、チャックも上げており、さらには日傘をさしているので泳ぐ気配はない。
そして、クロエはメイド服だった。
「何あれ?」
トウコとシャルはわかる。
でも、クロエはメイド服のままだ。
「さあ?」
「海にメイド服は似合わんな」
「ってか、暑そうね」
女性陣3人組もクロエを注視する。
「こらこら、ツカサ様。あなたはこっちを見るんですよ」
クロエがシャルを指差しながら苦言を呈してきた。
「見なくていいわよ」
シャルの頬がちょっと赤い。
「足、綺麗だな」
細くて長い。
「ありがと……」
シャルがぷいっと海の方を見た。
「お兄ちゃん、私はー?」
「ほい、シャチ君だ」
トウコにシャチ君を渡す。
「おー、ありがとー」
トウコがシャチ君を抱えて喜んだ。
うん、子供だわ。
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