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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

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146/207

第146話 出発進行


 夏休みが始まり、早寝早起き生活から遅寝遅起き生活に戻った俺は怠惰に過ごしていた。

 そして、そんな生活を送っていると、ついに水曜日になる。


「眠っ……」


 アラームが鳴ったので目を覚まし、時計を見ると、時刻は7時だった。

 学校に通っている時だったらすでに授業を受けている時間だが、今は眠くて仕方がない。


「ハァ……」


 ため息をつきながらもベッドから出ると、部屋を出て、1階に降りる。

 そして、リビングに行くと、すでにトウコが朝食を食べていた。


「おはよー……眠いわ」

「本当だよねー……超眠い」


 トウコは眠そうな顔で振り向きながらも食パンを食べる。


「母さん、飯」

「はいはい。用意するから顔を洗ってきなさい。それと出かける前に寝ぐせはどうにかしなさいよ」

「どうせ海に入るんだから…………顔洗ってくるー」


 母さんがものすごい顔をしたので慌てて洗面所に向かい、顔を洗った。

 そして、リビングに戻ると、朝食が用意されていたので食べだす。


「ツカサ、トウコ。海に行くのはいいですけど、危ないことはしないように。ちゃんとミシェルやクロエさんの言うことを聞くんですよ」


 んー?


「ミシェルさんやクロエのことを知ってるの?」

「連絡がありました。危険なことはないように努めますと丁寧な電話があったんです」


 律儀だなー。


「ミシェルさんはあれだけど、クロエはイヴェール派だぞ」

「知ってます。クロエ・ミュレルはイヴェールの懐刀ですからね」

「ふーん……いいの?」

「私はもう何も考えないようにしました」


 母さんがそう言って、お茶を飲む。


「お兄ちゃんのせいだね」


 トウコがケラケラと笑った。


「ハァ……とにかく、危険がないように。あと間違いが起きないように」

「間違いって?」

「………………」


 耳年増が頬をちょっと染め、無言でお茶を飲む。


「お義姉ちゃんかー。私、お姉ちゃんが欲しかったんだー」

「俺も妹が欲しかったわ」

「ここにいるけど!? Aランク妹だよ!」


 よくてCランク。


「いいから早く食べなさい。約束は8時半でしょ」

「「はーい」」


 俺達は朝食を食べ終えると、準備をする。

 といっても、前日にほとんどの準備を終えているし、俺は着替えるくらいだ。


 準備を終え、カバンを空間魔法にしまうと、部屋を出る。

 そして、1階に降り、リビングに向かうと、テーブルについているユキがいた。

 ユキは白いシャツと長いスカートを穿いており、さらには麦わら帽子を被っている。

 ぱっと見はお嬢様みたいに見えた。

 でも、目を閉じているのでやっぱり変だ。


「やあ、ツカサ君。おはよう」

「おはよ。早いな」


 まだ8時であり、約束の30分前だ。


「遊びに行くのは久しぶりだからね。ワクワクが止まらないのさ」

「そうか……ところで、和服じゃないんだな」


 和服のイメージがあった。


「いや、着るわけないでしょ。暑いし、海に行く格好じゃないだろ。そんなに見たいなら夜に浴衣を見せてあげるよ」


 夜は浴衣なんだ。


「うーん、お嬢様のように見える」

「ありがとうと言っておくよ」

「トウコは?」

「上で準備をしてるね」


 あいつ、おっそいなー……


「ツカサ、ちょっと……」


 キッチンにいた母さんが呼んでくる。


「なーにー?」


 キッチンに向かうと、母さんがコーヒーを持っていた。


「ユキさんに渡して」

「はいはい」

「……ねえ、ツカサ。前から思ってたけど、あのユキって子はなんで目を閉じてるんですか?」


 母さんも気になっていたらしい。


「心眼の使い手なんだって」

「へー……白川家ってすごいんですね」


 信じたし……


 リビングに戻ると、ユキにコーヒーを渡す。


「悪いね」


 ユキが礼を言って、コーヒーを飲みだすと、母さんが戻ってきて、俺の前にもコーヒーを置いたので飲みだす。

 すると、リビングの扉がゆっくりと開いた。


「おはようございます……」


 ユイカはおそるおそる声をかける。


「いらっしゃい。どうぞ、座って待っててください」


 母さんが笑顔でそう言うと、立ち上がり、またもやキッチンに向かう。

 ユイカはキョロキョロとリビングを覗きながら入ってきた。

 ユイカの私服も初めて見たが、シャツにショートパンツであり、夏らしい格好だった。


「おはー」


 ユイカが挨拶をしながらユキの隣に座る。


「おはよう」

「おはー。トウコは?」


 あいつ、何してんだ?


「どっちのサングラスがいいか悩んでた」


 ……あいつ、何してんだ?


「アホな奴……ユイカ、ちゃんと寝たか?」

「寝た。私は寝るのが得意なんだ」


 なるほど。

 それで授業中も寝ているわけか。


「どうぞ」

「あ、ありがとうございます」


 母さんがユイカの前にコーヒーを置くと、ユイカが礼を言う。


「フランス人3人組は?」

「まだ来てないけど、今から行きますってクロエから連絡が来たからそのうち来ると思う。あと、俺とトウコも半分はフランス人だぞ。この母親が見えんか?」


 母さんを指差す。


「どう思う?」

「目元とかは似てると思う。でも、日本人だね」

「だよな」


 ユキとユイカがうんうんと頷き合う。


「あっそ」


 そのままコーヒーを飲みながら待っていると、チャイムの音が鳴った。

 すると、母さんが立ち上がり、リビングを出る。


「来たかな?」

「多分、そうじゃない?」

「朝のこの時間だしなー」


 俺達が予想をしていると、母さんが顔を出す。


「来ましたよ」


 やっぱりか。


 俺達はコーヒーを飲み干し、リビングを出る。

 すると、玄関にミシェルさんとメイド服のクロエが立っていた。


「おはよう」

「おはようございます」


 ミシェルさんとクロエが挨拶をしてくる。


「おはよ」

「おはようございます」

「おはー……トウコを呼んでくるよ」


 挨拶を返すと、ユイカが階段を昇っていった。


「シャルは?」

「車。暑いの一言」


 まあ、8月だし、朝から暑いのは確かだ。

 母さんも頷いているし。


「いえーい、アロハー」


 アホな声が聞こえてきたので振り向くと、へそ出しのシャツにハーフパンツ、さらには頭にサングラスをかけた双子の妹がハワイっぽいハンドサインをしながら降りてきた。


「ガキンチョ感がすげー」


 トウコはだいたいあんなファッションだが、いつもの3倍はガキンチョだ。


「ねえ、あの子に氷姫ってあだ名をつけたのは誰だい?」


 知らない。

 氷姫と聞いて笑った俺の感情をわかったか?


「トウコ、遅いぞ」

「ごめーん。グラサン選択に時間がかかっちゃった」

「どうでもいいにもほどがあるだろ」


 アホか。


「大事なことなんだよー。はい、これがお兄ちゃんの」


 トウコがサングラスを渡してくる。


「え? 俺もかけるの?」

「お兄ちゃんこそいるでしょ。目線を隠さないと!」


 あー……そういうこと。

 気の利く妹で涙が出るわ。


「バカだな、お前」


 そう言いつつ、トウコと同じように頭にサングラスをかける。


「よっしゃ行こう……って、会長は?」

「車の中だと。暑いから出たくないんだって」

「あ、そうなんだ。じゃあ、れっつごー」


 俺達は外に出ると、家の前に停まっているちょっと大きい車に乗り込んだ。


「シャル、おはよう」


 車内で足を組みながら頬杖をついて外を眺めているシャルに声をかける。


「おはよう……暑いわー、眠いわー」


 初っ端から文句だよ……


「会長、夏だよ!」

「はいはい……」


 俺達はそれぞれの席に座ると、シートベルトを装着する。

 すると、ミシェルさんが助手席に乗り込み、クロエが運転席に乗った。


「ミシェル、子供達をお願いしますよ」


 日傘を差した母さんが助手席のミシェルさんに声をかける。


「わかってます」


 ミシェルさんが頷いた。


「クロエさん、この子達をお願いします」

「お任せを」


 クロエも頷く。


「あなた達はちゃんと大人の言うこと聞いて、危ないことをしないようにしてくださいね」


 母さんが最後に俺達に声をかけてきた。


「はいはい」

「問題なーい。あははー」


 トウコ、テンション高いな……


「この子とお母さんが似てなさすぎて面白いわ」

「品だよな?」

「そうね」


 皆、そう思っていると思う。


「そこのロミジュリうるさーい」


 お前が一番うるさいわ。


「はいはい。では、出発しますよー」


 クロエがそう言うと、車が動き出した。


お読み頂き、ありがとうございます。

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母さん子育てにひどく苦労してそう
似てなすぎて面白いwww
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