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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

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145/207

第145話 夏休み初日は勉強!?


 ウチに来たユイカとユキは海の予定なんかを話し、夕方には帰っていった。

 翌日は土曜であり、シャルと朝から公園でいつもの武術の訓練をする。

 そして、久しぶりにウチで勉強会をすることになった。

 夏休みだが、今週の復習は残っているのだ。


「あなたの家に来るのも久しぶりな気がするわ」


 勉強をしていると、ふとシャルが部屋を見渡す。


「魔法大会でトウコと争ってたし、エリク君がいたからな」


 何気にひと月ぶりくらいな気がする。


「それもそうねぇ……あ、そこはこっち。間違いやすいから気を付けて」


 シャルが指摘してくる。


「わかった。あ、そうだ。改めてテストありがとうな。良い点が取れたわ」

「頑張ったのはツカサだけど、そうね。基礎学が90点取れて良かったじゃない」


 ちょうど90点だった。

 人生初だと思う。

 なお、他の教科は50点から60点。


「まあな。母さんがまた泣いたわ」


 今回はよくわからないが、答案を電灯で透かしてた。

 偽札じゃないんだから……


「泣かれても困るけどね。そういえば、涙を浮かべたノエルに手を握られ、無言でうんうんと頷かれたわ」


 ノエルは早く正気に戻るといいな。


「あいつもユイカの対応で大変だったんだろうよ」


 ただ、ノエルは95点以下がないというとんでもない結果が返ってきていた。


 俺達が話をしながら勉強をしていると、ノックの音が聞こえてくる。


「何ー?」


 声をかけると、扉が開き、お茶を持った母さんが部屋に入ってきた。


「あ、お邪魔しています」


 シャルが姿勢を正す。


「いえいえ、いらっしゃい。テストが終わったばかりなのに偉いですねー」


 母さんは満面の笑みだ。


「継続が大事なんだとさ」

「素晴らしい心がけですね」


 母さんがお茶とお菓子をテーブルに置く。

 しかし、何故かそのまま座った。


「何? 帰らんの?」

「シャルリーヌさん、本当にありがとうございました。ツカサの90点なんて人生で見ることはないと思っていました」


 母さんが頭を下げる。


「あ、はい……い、いえ! ツ、ツカサ君が頑張っただけですから!」


 何これ?

 母さんは泣いてるし、シャルはパニクっている。

 こいつら、犬猿のイヴェールとラ・フォルジュだぜ?

 その橋渡しになれるほど俺の学力はすごいん?


「シャルリーヌさんは素晴らしい方ですね」

「い、いえ、そんなことないです」


 シャル、やりにくそう……


「母さん、シャルが困ってるだろ」

「それもそうですね。時にシャルリーヌさん、海に行かれるんですか?」


 ん?


「あ、はい。流れで……海というか、外は嫌いなんですけど……」

「わかります。この時期は日に焼けますしね」

「はい。絶対に嫌です」


 引きこもり令嬢と引きこもり奥様だな。


「では、これをあげましょう」


 母さんが日傘を取り出してシャルに渡す。


「ど、どうも」

「では、ごゆっくり」


 母さんが立ち上がって出ていった。


「何これ?」


 母さんが出ていくと、日傘を持ったシャルが聞いてくる。


「日傘」


 トウコが令嬢ごっこって言って、小学校に持っていったけど、忘れて帰ったやつ。


「いや、それはわかるけど、なんで海に行くのに日傘?」

「海に行っても絶対に車から降りようとしなかった母さんはそれがマストアイテムだと思っているんだと思う」

「な、なるほど……海ってパラソルのイメージはあるけど、日傘のイメージはないわね」


 ないね。


「シャルって錬金術で日焼け止めとか作れそうだけどな」

「ほー……その発想はなかったわ」


 まず外に出ないからか。


「作れば?」

「水曜でしょ? さすがに間に合わないから市販のものを使うわ。あとこれ」


 シャルがそう言いながら日傘を見る。


「ラ・フォルジュからの贈り物だから大事にしろよ」

「歴史的な物になったわね……」


 そんな大層なものじゃないけどな。

 母さんだってそんなつもりはないだろう。


「水曜は海だとして、錬金術研修はどうする?」

「そうねー……」


 シャルが悩みだす。


「俺は再来週の月曜からラ・フォルジュの家だわ」

「奇遇ね。私も再来週の月曜からパリよ」


 同じところに行くんだよなー……

 もっとも、お互い、アストラル経由だから家から出られないけど。


「じゃあ、海に行く前?」

「あー……ちょっと準備があるのよねー」


 準備?


「錬金術研修の?」

「いや、海に行く準備」


 そういやなんかするって言ってたな。


「結局、何するの?」

「それは当日のお楽しみよ。今言ったらつまらないじゃないの」


 そうかなー?


「まあいいけど……」

「他にも準備があるのよねー……ハァ」


 ため息をついたシャルだったが、ちょっと頬が赤い。


「まあ、女子は色々あるか。トウコも準備とか言って出かけたし」

「そういえば、トウコさんがいないわね。お茶もお母さんが持ってきたし」


 いつもはトウコが持ってくる。

 そして、居座ってぺちゃくちゃしゃべっている。


「水着を買いに行くって朝からユイカとユキと出かけた」

「あー、なるほど。寮から来たわけね」

「そうそう。昨日も来たし、当日も来るんだと。この移動方法って何気に便利だよな」

「そうね。ちなみに言っておくけど、ヤバいものを持ち込んだり、持って帰ろうとすると、センサーが反応して暗部が飛んでくるから注意ね」


 怖っ。


「何それ?」

「この方法を使えば簡単に密輸ができるからそれの予防。もし、あなたが好きなトライデントを買っても、こっちに持って帰らない方が良いわよ。反応する可能性がある」


 マジか……

 いや、持って帰る気はないんだけど、注意だな。


「シャルの薬は?」

「私はどっかのスパイ錬金術師と違って危ない薬は作ってないもの。問題ないわ」


 ジョアン先輩ね。

 あの人、今頃、何してんだろう?


「ふーん、気を付けよ」

「まあ、ツカサもトウコさんも大丈夫でしょうけどね」


 だと思いたいわ。

 何がダメで何がいいのかわからんからな。


 俺達はその後も勉強をし続ける。

 そして、夕方にはシャルが帰っていったが、その後に帰ってきたバーサーカー3人衆がうるさかった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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