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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第4章

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第139話 お客さん


 祝勝会という名の食事会を終えると、午後もテスト対策の勉強会をした。

 そして、夕方になると、帰ることにし、チェスを睨みつけながら固まっていたミシェルさんと共にシャルの家を出る。


「勝てない……何故?」


 まだ気にしてるらしい。

 というか、反応を見る限り、一回も勝てなかったようだ。


「クロエって、もう雰囲気からして強そうじゃないですか。スーパーメイドじゃん」

「くっ、どこまで行っても私の前に立ちはだかってくる……!」


 かっこいいけど、暇つぶしのチェスの話なんだよなー……


「ミシェルさん、魔法大会のシャルをどう見ました?」


 そう聞くと、ミシェルさんが真面目な顔に戻った。


「素晴らしいと思ったわ。弱い、弱い言ってるけど、魔法の腕は一流ね。それにトウコさんと違って周りが見えている。でも、正直に言うわ。あの自爆はいただけない」


 ミシェルさんが首を横に振る。


「なんで? ユイカを倒したじゃん」

「彼女がその辺の一魔法使いならいいわ。でも、彼女は次期当主なんでしょ? あれは当主が取っていい戦法じゃない」

「それはわからないでもないです。でも、トウコやユイカと実力差がありましたしね」


 シャルには悪いが、あの2人に勝てるとは思えない。


「それでもよ。あの試合でのリーダーは明らかにあなただった。本来ならシャルリーヌさんが主導権を握らなければならない。彼女は武家の名門の跡取りなのだからそれができないと話にならないのよ」


 なるほど……


「そうですか……」

「前にツカサ君が言っていたことがよくわかったわ。あの子は優しすぎる。それと……あ、いや、これはいいわ」


 すげー気になる。


「教えてくださいよ。これからのことに繋がります」

「繋がってほしくないけど、確かに繋がるわね……あの子は一歩引く子なのよ。良い言い方をすると、あなたを立てた。でも、悪い言い方をすると、あなたを頼ったのよ。男性からしたら守ってあげたい良い女でしょ? でも、彼女はそこにいてはいけない」


 当主になるからか。


「当主に向いてないと?」

「そうは言っていない。所詮は16歳の子供だもの。これから学んでいけばいい。あなたもそれを頭の片隅に置いておくといいわ。でも、放っておく方が良い」

「ラ・フォルジュだから?」

「違います。これはいずれ、シャルリーヌさんが気付くことだから。そして、その時に彼女が悩んで答えを出さないといけないから。そこにあなたが関与してはダメ。絶対に彼女に選ばせないといけない」


 何を言っているのか全然、わからん。


「えーっと、とにかく、これまで通りでいいってことですか?」

「そういうこと。ちゃんと武術を教えてあげなさい。あと、勉強しなさい。というか、腕のことがあるでしょ。あなたはシャルリーヌさんを気にする前にそこ」


 左腕を失うのは嫌だしな。


「わかりました」

「はい。では、まず来週から始まるテストを頑張ってください。明日からもちゃんと勉強するのよ? じゃあね」


 ミシェルさんがそう言って、俺の家とは反対方向に歩いていった。

 どうせ家に帰るまで護衛するんだから一緒に家まで帰ればいいのにと思いながら帰路につく。

 そして、家に帰り、自分の部屋で夕食まで休憩することにした。

 さすがに一日中勉強したので疲れたのだ。


「ん?」


 ベッドに横たわっていると、隣の部屋から楽しそうな話し声が聞こえてくる。

 トウコとエリク君だろうなと思いながら漫画に手を伸ばした。

 すると、話し声がやみ、足音が聞こえてくる。


『お兄ちゃーん、ちょっといい?』


 トウコか……

 いつもはノックもせずに開けてくるくせに珍しい。


「何だー?」

『お客さーん』

「ん?」


 客って何だろうと思って、扉の方を見る。

 すると、扉が開き、トウコと共に小柄な少女が部屋に入ってきた。


 少女はウェーブがかかった長い金髪であり、お人形さんのように可愛らしい。

 身長も高くなく、150センチもなさそうだった。


「んー? リディ?」

「はい! ツカサ君、久しぶり!」


 少女が花が咲いたような笑顔になる。


「マジでリディか……大きくなったな」


 少女はリディ・ラ・フォルジュという従妹だった。

 というか、エリク君の妹だ。

 2年くらいは会ってないから一瞬、わからんかったわ。


「今年から中学生になった!」


 最後に会った時は小学生だったし、そんなになるのか。


「ってかさ、なんでいんの? パリから来たん?」


 当たり前だが、リディはパリ在住だ。


「お兄様が一人でこちらに遊びに行ったんで私も追ってきたの」


 エリク君は遊びに来たわけじゃないと思うけどな。


「リディ一人? 危ないというか無理じゃね?」


 中一だろ。


「いや、お兄ちゃん。リディはアストラルからゲートを使って、ウチに来たんだよ。昼に連絡があったから私が迎えに行った」


 なるほど……

 それがあったな。

 トウコの寮の部屋から来たんだ。


「パリからアストラルに行けるんだったな……」

「なんか住居区に家があるらしいよ」


 シャルもさっき言ってたわ。

 同じような名門のラ・フォルジュも屋敷を持ってるんだ。


「それで遊びにねー……学校は?」


 明日は月曜日だぞ。


「フランスは7月と8月が丸々休みなんだって」


 は?


「何だ、それ?」

「これが格差だよ。やはり時代はパリジェンヌでマリーアントワネットだよ」


 トウコの言っている意味はさっぱりだが、ズルすぎん?


「トウコちゃん、相変わらず、バカっぽいね」


 うん!


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― 新着の感想 ―
ミシェルが言ってるのは精神的な姿勢とかも含めてなんだろうなって ツカサも自分も駒として使う精神的姿勢で自爆の択を取ったなら文句なしに正解だったんだろう
限られた環境の中で最善を尽くす策をとった行動は当主として最適だと思う。当主だから自爆はいけないというは平時の時であり、試合という勝つことが目的で自爆という選択肢が取れることのほうが器の大きさを感じる。…
「時代はパリジェンヌでマリーアントワネットだよ」 なんちゅーパワーワードwww いいなぁ、このセンス
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