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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

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第128話 作戦


「では、これより、演習を始めます。もう3回目なのでわかっているでしょうが、勝敗の付き方は3つ。2名が退場した場合、1名が退場し、残り1名になった時点で降参した場合、最後に私がもう無理だと判断した場合です。よろしいですね?」


 ジェニー先生が確認してきたので一斉に頷いた。


「よろしい。では、両チーム、定位置についてください」


 先生がそう言うと、シャルがかなり後ろに下がっていく。

 しかし、トウコは下がらずにユイカと並んだままだ。


「よろしいですね? では、シャルリーヌ、ツカサチームとトウコ、ユイカチームの演習を始めます!」


 先生がそう宣言した瞬間、左足に力を込め、トウコに殴りかかった。


「げっ!」


 トウコは慌てて、両腕でガードをしたが、関係なく殴ると、数メートルほど後ずさったのですぐに右を向いて、斬るモーションに入ろうとしているユイカの顔面に掌底を入れるフリをした。

 すると、ユイカはしゃがんで躱そうとしたので腕を引く。

 もちろん、掌底はフェイントであり、俺はすでに蹴る体勢に入っている。


「あ、やばっ」


 ユイカが慌ててガードしたが、お構いなしに蹴りを振り抜いた。

 軽いユイカはそのまま吹き飛ばされたが、くるりと一回転し、着地する。


「え? あわわ!」


 俺はすぐに駆け出し、着地地点のユイカを狙っていた。


「アイスエッジ!」


 トウコが魔法を放ってきたので氷の刃を手で払う。

 すると、その間にユイカが慌てて距離を取って逃げた。


「チッ!」


 やっぱり2人は邪魔だな。


「アイスエッジを素手で……ユイカ、ギアを入れ替えて! お兄ちゃん、最初から全力で来てる!」

「わかってる。援護して」


 距離を取ったユイカの姿がぶれる。

 しかし、ちゃんと見えているので右の方に手を伸ばした。


「ぐえぇ!」


 低く構えていたユイカの首を掴むと、そのまま投げ飛ばす。

 そして、トウコの方に突っ込んだ。


「アイスニードル!」


 トウコが魔法を放つと、複数の氷の矢が飛んでくる。


「当たるか、ボケ!」


 斜めに飛んで躱すと、一気にトウコに接近した。


「チッ!」


 トウコは舌打ちをすると、ジャンプして俺の顔面を狙い、蹴りを放ってくる。


「アホ」


 飛んできた蹴りをひょいと避けると、飛んでいるトウコのわき腹に掌底を当てた。


「ぐぇっ!」


 トウコは地面に着地すると、腹部を抑えながら後退する。

 それを見ていた俺はその場でしゃがんだ。


「あれ?」


 上には剣を振ったユイカがいたので起き上がりながらユイカの腹部にも掌底を当てる。


「っ!」


 ユイカは衝撃に逆らわずにくるりと回転し、トウコの横に着地した。

 俺はそれを見ると、バックステップで後退する。


「ん?」

「下がった? なんで?」


 仲良く腹部を抑えているトウコとユイカが首を傾げた。


「クリムゾンフレイム!」


 上空からシャルの声が聞こえてくると、深紅の炎が2人に振り注ぐ。


「あわわ、ジュリエットだ!」

「クリスタルウォール!」


 トウコは上空に向かって輝く透明のバリアを張って、シャルの炎を防いだ。

 だが、上空に向かって手を掲げるトウコは隙だらけだ。


「あ、やばっ! ユイカ、行って!」

「わかった!」


 ユイカが単身で突っ込んでくると、双剣を連続で振ってきた。


「当たんないーっ!?」

「おせーよ」


 ユイカの懐に入ると、みぞおちを狙って掌底を放つ。

 しかし、ユイカはバックステップで躱し、距離を取った。


「ええい! レーザー!」


 トウコが上空にいるシャル目がけて光線を放った。

 だが、シャルは転移で地面に降り立ち、杖を向ける。


「セイントフレイム!」

「うっとおしい!」


 トウコもまた氷魔法を放ち、迎撃した。


「ユイカ! そっちは任せた! 先に会長を落とす!」


 トウコがシャルの方に駆け出す。


「え? あ、ごめん」


 トウコは俺のことをユイカに任せたようだが、ユイカはすでに俺に投げられた後だった。


「え?」


 トウコが慌ててこちらを振り向くが、すでに俺はトウコを狙っている。


「俺に背中を見せるなよ」

「嘘っ!?」


 トウコは慌てて身を翻そうとするが、それよりも速く、俺の膝がトウコの背中に当たる。


「痛っ!」


 膝蹴りを食らったトウコは転がりながらも受け身を取った。


「クソがぁ! 可愛い妹の背中を蹴る兄がどこにいる!?」


 起き上がったトウコは杖を持っており、俺に向けてきた。


「尊敬する兄貴に魔法を使う妹がいるな」

「うっさい! 死ねっ! ブリザード!」


 トウコの杖から吹雪のような氷が飛んでくる。

 しかし、直後にシャルが俺の前に転移してきた。


「インフェルノ!」


 シャルが放った火魔法がトウコの氷を溶かしていく。


「おのれ、ロミジュリめー! ユイカ! 何してんの!? はよ、来い!」


 気の短いトウコは完全に逆上している。


「はーい」


 ユイカがトウコの隣に立った。


「真面目にやるよ。勝ちに行く」

「りょーかい……作戦開始!」


 ユイカが片方の剣をしまい、ポケットに手を突っ込んだ。


「指弾……シャル、逃げろ!」


 ユイカが指弾をシャルに向けて放つ。

 すると、シャルが転移でそれを避けた。

 だが、ユイカはすぐに転移先のシャルに目を向けると、突っ込んでいく。


「チッ!」

「ブリザード!」


 ユイカを追おうとすると、トウコが魔法を放ってきたので慌てて、躱した。


「私達はバカじゃないのだー! 死ねぇいっ!」


 トウコがまたもや氷魔法を使ってくる。

 なんとか躱すが、完全に足止めされてしまい、シャルの援護にいけない。

 その間もシャルは転移を使って、ユイカから逃げているが、指弾と超スピードの前に苦戦しているように見えた。


 ユイカは転移するシャルを徐々に壁の方に追い詰めていく。

 そして、シャルは壁に背を預けた。


「んー?」


 トウコが俺に杖を向けたままユイカとシャルを見る。

 ユイカはじりじりとシャルに向かって近づき、飛びかかろうとしてた。


「なんで転移があるのに追い詰められる位置に行く? ……ッ! ユイカ! 逃げて!」

「へ? 何?」


 シャルに向かって飛びかかったユイカは呆けた顔で足を止め、トウコを見た。


「バカー! 逃げろよっ!」


 トウコが叫んだが、もう遅い。


「イグニッション!」


 シャルが魔法を放つとシャルとユイカの間に小さな赤い玉が出てきた。

 直後、その赤い玉が強い光を放って爆発する。


「ユイカー!?」


 トウコが叫んで確認するが、土煙りが晴れた場所にはユイカもシャルもいなかった。


「じ、自爆……」


 これが六連覇したメイドさんが自分の主に提案した作戦である。

 ユイカが仕留めてくる際は必ず近づいてくるので自爆して道連れにするというものだ。


 魔法に対処できないユイカを必ず仕留める作戦だが、絶対に自分の主に提案する作戦じゃないと思う。


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― 新着の感想 ―
これだけ叫んでたら観客に兄妹であることがバレるのではw あとトウコのキャラ作りも。 オチは笑いましたw 負けず嫌い故の行動・パートナーの足手纏いにはなりたくなかった・メイドに上手く言いくるめられた。…
合理的で草 学校のイベントで主人にやらせる戦術じゃない!w
この作品はとても面白く夜ませて頂いていましたが、特に今回の章は思わず吹き出してしまいました(笑) これからもご活躍お祈り申し上げます!
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