表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/207

第126話 良い匂いだよ


 ロナルド、ユキ組と試合を終えた俺とシャルはそれぞれの家に帰り、休むことにした。

 別に肉体的に疲れているわけではないが、激戦だったので精神的に疲れたのだ。

 そして翌日、いつもの湖がある森でクロエを含めた3人で集まる。


「昨日はお見事でした。とても素晴らしい戦いだったと思います」


 クロエが昨日の試合を褒めてくれる。


「どうも。嫌な相手だったわ」

「本当よね。防御に長けたロナルドと攻撃に長けたユキさん。ツカサに斬りかかりながら千剣を操作するって何なのよ?」


 あいつ、すげーわ。


「特殊な魔法使いでしたね。私も初めて見ましたよ。とはいえ、見事に勝利なさいました。おめでとうございます」

「私はミスりまくりだったけどね」

「いえいえ、数日であそこまでやれたら十分です」


 俺もそう思う。

 もっと千剣を食らうかと思ってた。


「シャル、助かったわ。おかげで随分と楽に戦えた」

「そ、そう? ならいいけど……何よ?」


 シャルがにやついているクロエを睨む。


「いえいえ……さて、いよいよ、残りはあと一戦です」


 にやついていたクロエが真顔になった。


「そうね、一番厄介なトウコさんとユイカさんペア」

「正直に言いますが、非常に厳しいです。理由がわかりますか?」

「わかってるわよ。私でしょ?」


 口には出さないが、俺もそう思う。


「はい、お嬢様です。知っての通り、ユイカさんは接近戦を主としていますが、遠距離用の指弾もあります。トウコさんも接近戦を主としていますが、強力な魔法を持ち合わせています。この2人に接近戦で対処できるのはツカサ様ですが、接近戦を不得手としているお嬢様は貢献できません。しかも、頼みの遠距離魔法もトウコさん以下です」


 はっきり言うな……


「勝ち目はないわね」

「はい。普通に考えればそうです。ですが、対応次第で勝てるのもまた勝負事です」

「というと?」

「これも正直に言いますが、敵は攻撃しか脳のないアホコンビです。やりようはいくらでもあります」


 本当にはっきり言うな……

 その一人は俺の可愛い妹なんですけど……


「やりようねー……どう来るかしら?」

「オーソドックスなのはトウコさんがお嬢様を抑えているうちにユイカさんがツカサ様を仕留める作戦です。ですが、これはしてこないでしょう」


 俺もそう思う。


「ユイカさんではツカサに勝てないから?」

「はい。ユイカさんは非常に優れた接近戦タイプの魔法使いですが、防御を得意とするツカサ様とは相性が悪いです。実際、似たようなタイプのユキさんがダメでした」


 振りは鋭かったが、防御は良くなかったからな。

 むしろ、ロナルドの方が厄介だった。


「私もツカサが勝つと思うわ」


 嬉しい信頼だね。


「そうなると、向こうが取ってくる手段は1つ。一点突破でツカサ様かお嬢様を仕留めることです」

「どっちだと思う?」

「アホな2人はお嬢様を無視して、ツカサ様を攻撃するでしょうね」


 まずは強い奴を潰す。

 それが一番早い戦法だからだ。

 もっとも、普通は弱い後衛から狙う。


「ツカサ、2人を同時に相手できる?」


 シャルが聞いてくる。


「確実に一人は潰してやる。もう一人は微妙」

「一人残った時点で負け確定か……私ではトウコさんもユイカさんにも勝てないもの」


 殺傷能力の高い2人だからなー。

 こればっかりは仕方がない。


「お嬢様、勝つ気はございますか? イヴェールやラ・フォルジュに関係なく、ただ次の試合に勝つ気です」

「当たり前じゃない。ここまで戦ってきたのよ? 最後も勝つわよ」

「よろしい。では、そのような作戦を……」


 クロエが言葉を止めて、右の方を見る。

 つられて右の方を見ると、こちらにやってくる2人の少女が見えた。


「あいつら、なんでいるんだ?」

「さあ? 宣戦布告じゃない?」


 2人の少女は次に戦う相手であるトウコとユイカだった。

 トウコは若干、嫌そうな顔で俺を見ているが、ユイカはいつものぼーっとした無表情でこちらを見ている。


 俺はこっちに来るなという意味で2人に向かってしっしと手を振った。

 しかし、何を思ったのか、ユイカが小走りでこちらにやってくる。


「何? 呼んだ?」


 ユイカは俺達のもとに来ると、首を傾げて聞いてきた。


「呼んでねーよ。あっち行けっていうジェスチャーだ」

「こっち来いっていうジェスチャーに見えた」


 なんでだよ……


「ユイカ、その2人は敵ですよ。あっちに行きましょう」


 ユイカを追ってきたトウコが森の奥の方を指差した。


「それもそうか。特訓しないと」

「そうです、そうです。ささっ、行きましょう」


 一刻も早くこの場から離れたいであろうトウコはユイカの背中を押して急かす。


「今度は私が勝つ。ジュリエットも覚えておくといい」


 ユイカがトウコに背を押されながら宣戦布告してきたが、トウコの足が止まった。


「ジュリエット?」


 トウコが笑顔でユイカの顔を覗く。


「あっ、しまった……なんでもない。ただの間違えだよ。シャル……リーヌだっけ?」


 こいつ、シャルの名前を覚えてないし。

 まあ、会長としか呼ばんからか。


「おい……お前、何を知っている?」

「トウコ、肩を握らないで。痛い……」


 トウコがキッと俺を睨んできた。


「そいつには初対面でバレたぞ。顔と匂いが一緒っていう犬みたいなことを言ってた」

「ハァ? 匂い? 一緒なわけないじゃん」


 俺もそう思う。


「俺に言われてもな」


 トウコが再び、ユイカの顔を覗く。


「家の匂いってあるじゃん。そんな感じ」

「家の匂い?」

「あー、人の家の匂いってあるもんな。友達の家とか親戚の家に行く時に感じるわ」


 自分の家はわからんけど。


「まあ、確かに……ユイカ、誰にも言ってないわよね?」

「言ってはないよ。ツカサに100円もらったし」


 あげたな。


「あれか……本当に最初だ。まあいいわ。兄妹なんて関係ない。あれは敵よ、敵」

「うん。私達の連携攻撃で倒そー」

「よし、特訓よ」


 2人はそのまま森の奥に行ってしまった。


「…………ね? アホでしょ?」


 クロエがシャルを見る。


「確かにね。連携って言ってるわ」


 これまでの戦いで連携なんて一つもしていなかったのにな。

 2人がかりで俺を狙ってくるのが丸わかりだ。


「お嬢様、まずは最速で確実に仕留める魔法の特訓を致しましょう」

「わかったわ」

「ところで、ツカサ様、お嬢様の家の匂いはどうです?」


 どこまでもふざけるメイドだなー。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
なるほど、良い匂いですねw
表題の付け方洒落てていいすね
2人同時に相手して片方は必ず潰せるって圧倒的に実力が上って事だし凄いな 片方を多少足止めしてくれれば勝てそうなのかなあ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ