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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

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125/207

第125話 白川ユキの力


「ロナルド! くっ!」


 ロナルドが退場となったが、ユキはまだやるようで上空にまたもや無数の白い剣が出現する。


「千剣っ!」


 無数の剣が発射されたのでユキに向かって駆ける。


「インフェルノ!」


 俺が走り出したと同時にシャルが上級魔法を放った。

 シャルの火魔法が上空の白い剣を焼き尽くしていく。

 おかげで今回は白い剣が1本もこちらにやってこなかった。


 そして、ユキとの距離が10メートルくらいになると、ユキが腰を下ろし、刀を握る。

 次の瞬間、背筋がぞくっとしたため、慌ててスピードを緩めた。


 ユキは刀を握ったまま、閉じていた目をゆっくりと開ける。

 ユキの目を見て、またもや背筋がぞくっとすると、ユキの身体がぶれた。


「やべっ!」


 慌てて、足を止め、上体を後ろに仰け反らせる。

 すると、さっきまで俺の首があった位置に線のようなものが通りすぎていった。


「これを躱すか……」


 目の前には刀を振り終えたユキの姿が見える。


「チッ!」


 上体を戻すと、バックステップで距離を取った。

 ユキはそんな俺を追うことはせず、刀を立てて構える。

 その姿は様になっており、これまでの隙だらけの姿ではない。


「やっぱり接近戦型の魔法使いか」


 ユイカを迎撃しようと思うわけだわ。


「いかにも。白川の家は元よりこちらだ。千剣は遠距離魔法使いの対応手段にすぎん」


 ユキは完全に目を開いており、はっきりと俺を見ている。

 その目は殺気が籠っており、明らかに戦う者の目だった。


「そちらが本性か……」

「ロナルドを倒すとは見事だ。斬っても死なない緊張感のない場所だが、素晴らしい殺し合いをしよう」


 バーサーカー3号で決定。

 なお、1号はユイカで2号がトウコ。


「2対1だぜ?」


 そう言うと、シャルが転移でユキの背後に回った。


「ふっ、トウコならともかく、遠距離魔法一辺倒のシャルリーヌなど相手にならん」


 ユキが笑うと、上空に無数の剣が現れる。


「強化魔法と同時に使えるのね……」


 器用な奴だわ。


「行くぞ。白川家当主が直々に相手になってやろう」


 ユキがそう言うと、体がぶれる。

 そして、次の瞬間、目の前に刀を振り下ろすユキの姿があった。


「チッ!」


 なんとか刀を躱したが、上空の白い剣がシャルに向かって発射される。


「シャル、逃げろ!」


 シャルは転移魔法で逃げるが、白い剣はシャルを追っていく。

 その間にもユキは俺に斬りかかっていた。


「なんで見えるんだよ!?」


 シャルの方を全然見てないのに白い剣はシャルを追っている。


「何のためにいつも目を閉じていると思っている? この演習場くらいの広さなら見なくても察知できる」


 マジかよ。


「セイントフレイム!」


 シャルは逃げても無駄と判断したようで炎で白い剣を焼く。


「いくらでも焼くといい」


 そう言うユキの上空にまたもや無数の白い剣が出現した。


「どんだけ出すんだよ!?」

「少なくとも、シャルリーヌの魔力が尽きるまでだ」


 チッ!

 マズいな。

 シャルは魔力回復ポーションを飲む暇がない。


「くっ!」


 ユキの鋭い斬撃をなんとか躱す。


「うまく避けるな……でも、避けてばかりでは何も起きんぞ」


 時間をかけるのはマズいな。

 シャルがあまり持ちそうにない。


「女を殴りたくないんだけどなー」

「良い心がけだし、とても立派だ。男はそうでなくてはならない」


 口角を上げたユキは可愛らしかったが、まったく可愛くない斬撃が飛んでくる。


「チッ! こりゃ無理だわ」

「降参か?」

「いや、悪いけど、呼吸困難になってくれ」

「嫌だ、ねっ!」


 ユキが上段から剣を振り下ろしてきたので一気に距離を詰め、ユキが持っている刀の柄を抑える。


「な!?」


 そのままユキの手を握ると、ユキを引っ張り、体を入れ替えるようにユキの背後に回った。


「ぐっ! 千剣っ!」


 ユキは体勢を崩して背中を見せていたが、目の前に1本の白い剣が現れ、即座に発射された。

 しかし、その剣が俺の顔に突き刺さることない。

 何故なら、俺がその剣を掴み、握りつぶしたからだ。


「え?」


 ユキは驚いてこちらを振り向いたが、その隙に足を払った。

 足を刈られたユキは尻餅をついたが、刀を振り、俺の足を狙ってくる。

 しかし、その刀を踏んで地面に押さえつけた。


「くっ!」


 ユキは足で押さえつけられている刀を必死に抜こうとしていた。

 だが、ピクリとも動かない。


「動かないっ!? ……あれ?」


 ユキが俺を見上げてくる。


「首の骨を折ってほしいか?」


 尻餅をついているユキはもう一度、動かない刀を見た。


「それをすると君の評判が悪くなりそうだね」

「そうだな。でも、俺はやる時はやる男なんだ」

「それは素晴らしいね。まさしく日本男児だよ。いや、まったく褒めてないよ?」


 確かに褒められている気がせんな。


「降参しろ。お前の最初の言葉のせいでミシェルさんが判断に困っている」


 ユキは最初に降参などありえんと言っていた。

 だから審判のミシェルさんはこの状況になっても止めないのだ。


「負けを認めるのも大事か……降参するから刀を踏むのやめておくれ。父の形見なんだよ」


 そう言われたので刀から足を退ける。

 すると、ユキは立ち上がりながら刀を取り、鞘に納めた。


「そこまでです! 勝者はシャルリーヌさん、ツカサ君組!」


 ミシェルさんがそう宣言すると、会場が沸く。


「ハァ……2敗……これが実力の差……相手が悪かったか」


 ユキはため息をつくと、出入口の方にとぼとぼと歩いていったのを見送ると、ひざに手を置いているシャルのもとに行く。


「おつかれ」

「本当に疲れた……地獄の鬼ごっこよ」


 シャルはずっとユキの千剣の対処をしていた。


「まあ、勝てたじゃん」

「そうね……疲れたわ。今日は帰りましょう」


 俺とシャルは観客の拍手に送られ、演習場をあとにした。


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