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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

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123/207

第123話 注目のカード2戦目


 シャルはその後もクロエと訓練を続けていった。

 翌日の火曜日もテニスボールを落とし続ける。

 俺はただそれを見ているだけだが、チームのことなので付き合った。


 さらに翌日の水曜日もシャルは特訓をする。

 この日は午後からロナルド、ユキチームとの戦いがあるが、シャルはギリギリまで特訓をしたいようだった。


「よし、もう一回ね」


 シャルは魔力回復ポーションを飲み、杖を構える。


「行きますよー」


 クロエはそう言って何個ものテニスボールを飛ばした。

 最初は1個か2個だったのだが、今は10個以上のテニスボールを撃墜できている。

 問題はシャルとユキのどちらが先に魔力が尽きるかの勝負になるが、正直、微妙なところなので、その勝負になる前にロナルドを倒すことが望ましい。


「うーん……」


 大丈夫かね?


「あ、いたいた」

「こんにちはー」


 声がしたので振り向くと、イルメラとノエルがいた。


「よう」

「今日の午後の対策? いつまでやってんの?」


 イルメラが呆れたように遠くのシャルとクロエを見る。


「相手が相手だからなー。お前らは? 確か昨日もだろ」

「瞬殺」

「イルメラさん、素敵ですー」


 ノエルが笑顔で拍手する。


「どうも。それで他のも教えてあげるわ。フランクとセドリックは危なげなく勝ったわね。つまんない戦いで盛り上がりどころはなかったけど」

「あいつは堅実だからな」


 良いことだ。


「まあねー。それでさっきトウコとユイカがアーサーとヘンリーのCクラスコンビと戦ってたわ」

「どうだった?」

「引くわ。トウコの上級魔法で何もできずにヘンリーが落ち、何とかかいくぐったアーサーはトウコの掌底で一発。ユイカはそれをぼーっと見てた」


 トウコの暴力で沈んだか。


「圧倒的でしたね。さすがはトウコさんです。もはや氷姫じゃなくて暴力姫ですよ」

「死ねーとか言ってたしね」


 ガラの悪いやっちゃ。


「他は?」

「順当すぎて特にない。つまんないわ。午後はあんたらの試合ぐらいかな? オッズ的にはロナルドとユキコンビの方が良いけど」


 オッズって……


「賭け? アンディ先輩もやってたけど」

「男子寮と女子寮は違うからね。女子寮はその日の対戦で決める。自分と対戦相手には賭けられないけどね」

「どっちみち、イルメラさんは賭けになってませんでしたよ」


 ノエルは完全にイルメラ一人のチームって認識だな。

 何気に自分をカウントしていない。


「まあね。私は同じクラスのあんたに賭けたんだから頑張りなさいよ」

「最終日は?」

「それそれ。どっちかな? 今のところのオッズ的には圧倒的にトウコとユイカだけど」


 まあ、月曜の試合を見ればな。


「シャル次第だなー」

「じゃあ、トウコとユイカに賭けよう」


 ドライな奴。


「ノエルは俺とシャルに賭けるよな? イヴェール派だもんな」

「賭け事は好きじゃないですけど、そうしようと思います」


 ノエルがうんうんと頷く。


「まあ、まずは今日を頑張んなさいよ。応援してるから。じゃあね」

「頑張ってください」


 2人は笑顔でそう言うと、帰っていった。

 そして、しばらくシャルの特訓を見ていると、特訓が終わったようでシャルとクロエがこちらにやってくる。


「さっきイルメラさんとノエルがいなかった?」


 シャルが魔力回復ポーションを飲みながら聞いてくる。


「結果を教えにきてくれたんだよ。午前中の戦いはアーサーとヘンリーがトウコの魔法と暴力で沈んだんだってさ」

「まあ、驚きはしないわね。あの2人ではトウコさんに勝てないでしょ」


 あいつらも気の毒だなー。

 俺達を含めて相手が悪すぎる。

 多分、イルメラがもっとまともな奴と組んでたらイルメラがそこの枠にいたんだろうな。


「御二人共、そろそろ昼食にして、午後の試合に備えましょう」

「そうね」


 俺達は転移の魔法陣で学園に戻ると、分岐点で別れ、それぞれの寮に戻った。

 そして、昼食を食べ終えると、再度、合流し、演習場に向かう。


「それではお嬢様、ツカサ様。私は上で見ていますのでご武運を」


 クロエが一礼し、階段を昇っていったので俺達は演習場に出る通路を歩いていった。

 そして、出入口の前でしばらく待っていると、ミシェルさんが演習場内に現れる。


「今日の審判はあの人なのね」

「みたいだな。贔屓してくれないかね?」

「どうやって贔屓するのよ」


 判定なんかないし、無理か。


「そうだな。行くか」

「ええ」


 俺とシャルは演習場内に入ると、ミシェルさんのもとに向かう。

 すると、対面の出入口からロナルドとユキも出てきた。

 ロナルドは槍を背負い、ユキは目を閉じて歩いている。

 この前とまったく同じだ。


 俺達はミシェルさんの前に来ると、立ち止まった。


「やあ。いつぞやの川で会って以来だな」


 ユキが声をかけてくる。


「そうだな。トカゲは獲れたか?」

「いや、難しいね。お金を稼ぐのは大変なんだ。失うのはすぐだけどね」


 事情が事情なだけにツッコみにくいな……


「そうか……」

「ふふっ、君は良い子だね。良い子すぎて負けたくなるよ」

「負けろよ」

「さすがにそれはできない。私達はすでに君の妹さんチームに一敗しているし、これ以上は負けられないよ」


 妹さん……


「トウコのことを知っているのか?」

「もちろんだよ」


 ユキが頷く。


「なんで兄妹ってわかった?」

「なんでって……顔を見ればわかるよ。そっくりじゃないか」

「顔を見ればって言うけど、お前、目を閉じてるじゃん」


 そう言うと、ユキが驚いた顔をした。


「ふふ、ふふふっ、そうだね。確かにそうだ」


 何が面白いんだろ?


「すまんな。ユキは感性が独特なんだ」


 ロナルドが苦笑いを浮かべる。


「もう始めてもいいですか?」


 ミシェルさんが聞くと、俺達4人が同時に頷いた。


「ルールもわかっていますね? 全滅か降参か私が止めるかです」

「こちらは後がない。降参などありえん。死力を尽くすのみ」


 トウコ達の時とは違うか……


「では、定位置についてください」


 ミシェルさんがそう言うと、シャルとユキが下がっていった。


「これよりシャルリーヌさん、ツカサ君組とロナルド君、ユキさん組の演習を始めます…………始めっ!」


 ミシェルさんがそう告げた瞬間、俺はバックステップで一気にシャルの隣まで飛ぶ。


「何?」


 槍を構えたロナルドが訝しげな表情になった。

 そして、シャルが前方に杖を向ける。


「焼き尽くせ! インフェルノ!」


 シャルの杖の先から炎が飛び出し、前方を焼いていった。

 炎はたちまち大きくなり、ロナルドの姿が見えなくなる。

 しかし、すぐに炎が竜巻のよう回転し、上空に上がっていった。


「魔法か……」


 炎は完全に上空に上がっていき、消える。

 その場には槍を上空に突き出しているロナルドがおり、当然、無傷だった。


「風魔法ね。槍一本じゃないみたい」


 奇襲は失敗か……


「だな。シャル、任せたぞ」


 そう言ってロナルドのもとに歩いていく。


「気を付けて」

「ああ」


 よし、やるか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] たまにはシャルの活躍も見たいね
[良い点] 公認ロミジュリ
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