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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

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121/207

第121話 決着


 ユイカとロナルドは仕切り直すように数歩下がり、対峙した。


「ユイカー! やっぱり私も出ようかー!?」


 トウコがユイカに確認する。


「いらない」


 ユイカは首を横に振ると、ロナルドに飛び掛かる。

 そして、双剣を巧みに使い、ロナルドに斬りかかった。

 ロナルドはその速い斬撃を上手く流し、対処していく。


「ロナルドさんもユイカさんのスピードについていきますね。見事です」


 クロエが言うようにロナルドはギアを上げたユイカに対応している。


「あれが1年なんだよなー。僕、自信がなくなりそうだよ」

「先輩はもうちょっと頑張りましょうよ。熊ぐらい倒してください」

「無茶言う……ハァ」


 アンディ先輩がため息をつくと、ユキが両手を広げた。


「千剣!」


 ユキは無数の白い剣を空中に出現させ、ユイカに向けて発射する。


「アプソリュートゼロ!」


 トウコが魔法を放つと、空中がキラキラと光り出す。

 すると、ユキが出した無数の剣が地面に落ち、砕け散った。


「上級魔法ですね」

「シャル、頼むぞ」


 よくわからんが氷漬けは嫌だ。


「あれを? 厳しいことを言うわねー」


 頑張って!


 トウコに剣を撃墜されたユキは再び、無数の剣を出す。


「ユキ、よせ!」


 ロナルドがユキを止める。

 すると、ユキは手を降ろし、無数の剣が消えた。


「ロナルドさんは本当に優れてますね」

「なんで?」


 シャルが首を傾げる。


「このままトウコさんと魔力対決をしても先にユキさんの魔力が尽きると踏んだんでしょう。先ほども言いましたが、あの魔法は非常に高度であり、消費魔力も大きいですしね」


 前衛でユイカと戦いながらよく判断できるな。


「となると、ユイカさんとロナルドの勝負ね」

「そうなりますね。トウコさんはユイカさんが止めましたし、前には出てこないでしょう」


 クロエが言うようにユイカとロナルドが対峙し、トウコとユキは動く気配がない。

 そして、やはりユイカが飛び出し、ロナルドに襲い掛かった。

 ロナルドはさらにギアを上げたユイカに何とかついていっている。


「やっぱりユイカかなー」

「手数が違いますね。ロナルドさんは防戦一方です」


 ロナルドはなんとかさばいているものの徐々に後退していく。

 ユイカはそんなロナルドにさらにスピードを上げて襲い掛かった。


「うおっ!」


 たまらず後退したロナルドが後ろに体勢を崩す。

 すると、ユイカがその隙を狙って飛び掛かり、剣を突く。


「ばーか。見え見えだろ」


 体勢を崩していたロナルドだったが、すぐに立ち直り、身を翻してユイカの剣を躱した。

 それにより、今度は前のめりだったユイカが前方に体勢を崩す。

 そして、身を翻したロナルドはそのまま回転し、槍の柄でユイカの後頭部を狙った。

 しかし、ユイカはそのまま前方に倒れ込んで躱し、片手を地面につくと、空中に飛び上がった。


「雑技団かな?」

「後ろに目があるのかな?」


 俺とシャルが口を揃えて呆れる。


 ロナルドは上空にいるユイカに狙いを定めた。

 しかし、ユイカが片方の短剣を投げる。


「くっ!」


 ユイカはロナルドが短剣を槍の柄で防いでいる間に着地した。


「何か持ってますね……」


 クロエが言うようにユイカは着地する際にポケットに空いている手を突っ込んでいた。

 そして、わずかな動きだけで親指を弾く。

 すると、ものすごいスピードで何かがロナルドの足に飛んでいった。


「ぐっ! 何だ!?」


 ユイカが弾いた何かはロナルドの右足に当たり、ロナルドが膝をついた。


「え? 何あれ?」

「指弾ですね。石ころか何かを親指で弾いたんです。ロナルドさんの足を貫通しましたね。とんでもない威力です」


 あれがトウコが言っていた木に穴が開いたという指弾か。

 恐ろしい技だ。


 完全に体勢を崩したロナルドはなんとか立ち上がろうとするが、その隙をユイカが見逃すはずもなく、ユイカの短剣がロナルドの首を切り裂いた。

 すると、ロナルドが一瞬で消え、ユイカは落ちているもう片方の短剣を拾う。


「強っ! あんなのとやるの!?」

「ツカサ様、いけます?」

「ユイカ1人だったらなー」


 実際はトウコもいる。

 いや、無理じゃね?


 双剣を持ったユイカはさらにユキを見る。

 すると、ユキは両手を広げ、無数の白い剣を出した。


「千剣」


 ユイカが突っ込むと同時に白い剣を発射する。


「アブソリュートゼロ!」


 白い剣はまたもやトウコの魔法で動きを止め、地面に落下して砕けていった。

 そして、無防備なユキにユイカが襲い掛かる。


「決まったわね」


 シャルがそう言った途端、ユキが腰を落とし、腰の刀を握った。

 すると、突っ込んでいたユイカがピタッと止まる。


「ん?」


 動きを止めたユイカと刀を握っているユキが数メートルの距離で睨み合う。

 もっとも、ユキはいまだに目を閉じているが……


 どうするんだろうと思っていると、ユキが刀から手を離し、脱力した。


「この2人相手には無理か……降参する」


 ユキはそう言って片手を上げる。


「そこまでです! 勝者はトウコ、ユイカチーム!」


 ユキの降参を聞いたジェニー先生が決着を告げる。

 すると、観客席が沸き、拍手を贈った。


 すごい戦いだったと思う。

 だが、俺は素直に拍手を贈れなかった。


「ツカサ様」


 クロエが声をかけてくる。


「わかってる」


 クロエの言いたいことはわかっているので頷いた。


「え? 何?」

「何かあったの?」


 わかっていないシャルとアンディ先輩が聞いてくる。


「ユキはまだ戦えた。あいつ、手の内を隠しやがった」

「私もそう見えました。お嬢様、ツカサ様。明後日のための特訓に行きますよ」


 クロエがそう言って立ち上がったので俺とシャルも立ち上がった。


「よくわからないけど、僕のひと月分の給料のために頑張って」


 アンディ先輩が応援してくれる。


「先輩、身を滅ぼしますよ」


 ひと月分って……

 大丈夫かよ……


「大丈夫。君らが勝てばいい」


 ダメだこりゃ……


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― 新着の感想 ―
[一言] この二人相手にシャル守りながらはキツそうだなー 絶対零度は"Absolute zero"なのでアブソリュートですね
[良い点] 「アプソリュートゼロ!」 半濁音の緩い響きがトウコちゃんになんか合っていて良いですぞ。
[良い点] どっかで聞いた魔法だなーと考えたら、あっちはエターナルゼロで魔法でもなかった
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