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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

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第116話 開催


 エリク君と部屋に戻り、しばらくすると、トウコもやってきた。


「2人共、大きくなったねー」


 エリク君が親戚のおじさんみたいなことを言ってくる。


「あんまり変わってないような気がするけどな」

「2年くらい前に会ったじゃん」


 確かそのぐらいだったと思う。


「ツカサは背が伸びたし、トウコは可愛くなったよ」

「えー? そうかなー?」


 トウコがまんざらでもない顔をしている。


「可愛くなったか?」


 生意気なままだが?


「なったわ! お父さんも言ってる!」


 父さんはそう言うだろ。


「まあまあ。2人共、学校はどう? これもお婆様から聞いてこいって言われてる」

「普通。授業がむずいくらい」

「私も普通。朝が辛いくらい」


 俺は早起きには慣れた。


「時差があるから大変だね」

「エリク君は寮生だったの?」

「そりゃね。楽しかったよ」


 へー……俺もそっちがいいわ。


「あ、婆ちゃんに俺は引きこもりじゃないって伝えて。学校に行きたくなかったわけじゃなくて、行きたかったけど、行けなかっただけ」

「そっちの方が悲しいけどね……」


 トウコ、うるさい。


「こっちも色々と情報が錯綜しててね。いつだったかはツカサが勉強に嫌になって学校嫌いになっているって話になったんだ」

「勉強は嫌いだけど、学校嫌いにはなってねーよ」


 家にいるよりかはマシだ。

 あの教育テレビを見る日々はもうごめん。


「ちゃんと伝えておくよ……それで魔法大会なんだけど、どう?」


 来たか……


「トウコと戦うことになったわ」

「来週から私がお姉ちゃん」


 お姉ちゃんになりたいのか?

 いつでも呼んでやるぞ?


「3組と戦うとは聞いてるけど、すごい偶然だね」

「いや、作為的らしい。実力のバランスを取ってるんだって」

「なるほどね。トウコは誰と組むの?」


 ほら、この話題になった。


「クラスメイトの子。赤羽ユイカ。めっちゃ強い」

「へー……良い子と組めたようだね。ツカサは?」


 さてと……


「生徒会長」

「へー……ん? 生徒会長って?」


 やっぱり知ってるな……


「シャルリーヌ・イヴェールさん」

「イヴェール……」


 ほら、この反応。


「知ってる?」

「もちろん知ってるよ。イヴェールの次期当主と言われている人だね」


 シャルもエリク君のことを知ってたし、当然、エリク君もシャルのことを知ってるわな。


「その人と組むことになった」

「またどうしてそんな人と?」

「トウコは自主的にユイカと組んだけど、俺は組む人を先生に任せたんだよ。そしたらこうなった」


 これは長瀬さんちの家族会議の結果、父さんの案を採用したものである。

 要は偶然だよーってこと。


「へー……まあ、ツカサはイヴェールのことなんか知らないし、気にしないか」

「そうそう。俺は誰かと組むタイプの魔法使いじゃないし、誰と組んでも一緒だからな。でも、トウコと戦うハメになったわ」

「バランスを取るって言ってたもんな……まあ、どっちも頑張ってくれよ。でも、遺恨を残さないようにね」


 遺恨は最初からあるという……

 シャルに負けたトウコと俺に負けたユイカだし。


「大丈夫、大丈夫。お兄ちゃんはあっさりしてるから」

「こいつ、バカだから翌日には忘れてる」

「お互いに自分が負けるとは微塵にも思っていないんだね……すごいよ」


 こうやって煽ってヘイトを買っているんだよ。

 トウコがシャルに行かないようにしないといけない。


「何でもいいよ。エリク君も魔法大会を見るんでしょ?」


 トウコがエリク君に聞く。


「君達の分は見るよ。ツカサが初日の最初でトウコが昼一だっけ?」

「そうそう。水曜の午前中が私で午後がお兄ちゃん。そして、最終日に最後にお兄ちゃんとやる」


 水曜の午前中にトウコ達がアーサー達とやる。

 午後は俺達がロナルド達とやる。


「月、水、土ね。わかった。最後だけはどっちを応援するか悩むところだけど、他は応援するよ。頑張って」

「任せておいて! スーパーエリートウコ様の活躍を見といて!」

「あはは…………ださっ」


 なー?


 俺達はその後も3人で夕食まで話をしていった。

 エリク君はウチに泊まることになっているので家族4人と共に夕食を食べ、客室を貸し出す。

 とはいえ、エリク君と会うのも久しぶりなので寝るまでは3人で話をした。


 翌日の金曜日は魔法大会が始まる前日なため、放課後にシャルとクロエと合流し、最後の特訓を行った。

 正直、たかが一週間で目に見えて良くなることなんかはないが、それでも最初よりかはマシになったと思う。


 そして、土曜日。

 朝早くに起きた俺は運動着に着替えると、準備をし、演習場に向かった。


 開催の時間になると、演習場内で校長先生が魔法大会のことを説明し始めた。

 他の生徒を始めとする観客はその話を演習場の客席から聞いているだろう。

 俺とシャルはというと、最初の試合なため、演習場に入る通路でそれを聞いてくる。


 校長先生は魔法大会が変わったことやあくまでも授業の一環であり、演習であることを説明していた。

 正直、長い。

 校長先生の話が長いのはどこも一緒らしい。


「シャル、寝たか?」


 校長先生の話は聞いていられないので、いつぞやの決闘で見た制服に外套姿のシャルに話を振る。


「寝たわ。来週の土曜は寝られるか微妙だけどね」

「寝ないと集中力が落ちるから気を付けな」


 前もそういうことがあった。

 シャルが親父さんと遅くまで話をしていたため、勉強会どころじゃなかった日だ。


「大丈夫。睡眠薬も作れるから」


 今さらだけど、そういうのを勝手に作っていいのかね?

 売らなきゃいいのか?


「まあ、大丈夫ならいいわ」

「ツカサは?」

「大丈夫」

「そう…………校長先生の話が終わったみたいね」


 シャルが言うように校長先生の長い話は終わっており、演習場内には拍手が鳴り響いている。


「さて、そろそろか」

「この空気での初戦は嫌だし、相手が地味にクラスメイトなのよねー」


 やっぱり気にしてたか。


「気にするな。俺なんか最終日には一緒に生まれてきた妹だぞ」

「難儀ねー。まあ、お互いベストを尽くしましょう」

「そうだな……行くか」

「ええ」


 俺達は演習場内に入っていった。


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― 新着の感想 ―
【魔法大会の日程】に関して a) 「君達の分は見るよ。ツカサが初日の最初でトウコが昼一だっけ?」 「そうそう。水曜の午前中が私で午後がお兄ちゃん。そして、最終日に最後にお兄ちゃんとやる」 ...とい…
[一言] 初戦の相手は惚れた女とその男と戦う可哀想な人だったか
[良い点] 息ぴったりな攻防を見せてシャルとの仲に気づくパターンがありそうで楽しみ
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