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バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

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第108話 だーれだ?


 正式にシャルと組むことにし、トウコ達と戦う可能性が高いことを聞いた俺は金曜の呪学の授業終わりに教室でジェニー先生の話をシャルに伝えた。


「なるほどねー。確かに先生の言うことも確かだわ。実力が上すぎる相手と戦っても得る物はない。逆もしかりね」

「だからエリートのシャルは強い相手と戦うことになるんだってさ」

「私、エリート?」


 シャルが嫌そうな顔で自分の顔を指差す。


「名門イヴェールの次期当主で上級魔法を扱うスーパーエリートだな」

「それしかないんですけど? しかも、手の内を完全に晒しているんですけど?」


 決闘でトウコ相手に色んな魔法を使いまくってたからな。


「上級魔法を使えるだけでトウコが相手だってさ」

「他の連中も使える奴は使えるわよ……私みたいに晒してないだけ」


 その辺はわからんな。


「まあ、先生も俺とトウコが兄妹であることを隠している線でどうにかしてみるとは言ってたけどな」

「ジェニー先生って良い人ね」


 シャルとは逆の自由派らしいけどな。


「だな。そろそろ見に行く?」

「もうちょっと待って。心の準備がいる」


 対戦表と日程表は今日の3時には掲示板に貼られると朝の授業前に先生から聞いた。

 呪学の授業は5時に終わったのだが、今は5時半だ。

 すなわち、30分も誰もいない3年のクラスでシャルと待機していた。


「まだかかるん?」

「もうちょっと……」


 シャル、完全にトウコがトラウマになっていないだろうか?


「まあ、時間はあるからいいけどさ」


 日本はまだ2時半なのだ。


「ツカサ、トウコさんとユイカさんに勝てる?」

「わからん。ユイカの本気は知らんし、トウコが武術と魔法をどう組み合わせてくるかも知らん」


 トウコは絶対に以前のスタイルではない。

 魔法か武術の一辺倒から組み合わせてどっちも使うようになっているだろう。


「負けたら私のせいね」

「どうかねー? というか、別に負けても大丈夫だって。一勝一敗の五分になるだけだろ」


 一応、決闘はシャルが勝ってる。


「まあね。それを心の拠り所にしましょうか」


 この辺もシャルが武術に向いてないところだ。

 戦う前から負けた後のことを考えてどうする?

 偉大なプロレスラーの言葉を知らんのか?

 いや、知ってるわけないか……


「行く?」

「行く」


 シャルがようやく立ち上がったので俺も立ち上がる。

 そして、教室を出ると、1階まで降り、校舎を出た。


「もう誰もいないわね」


 シャルが言うようにA校舎の前の掲示板には誰もいなかった。


「そこでいいだろ」


 対戦表と日程表はどこの校舎の前の掲示板にも貼られているらしい。

 だから別のクラスの俺達がここで見ても問題ない。


「そうね……」


 俺達は掲示板の前に行く。


「どれどれ……」

「よし、ツカサ。私は目を閉じているから先に見てよ」


 シャルはそう言って目を閉じた。


「まーた変なことを言い出した」

「いいからお願い」

「仕方がないなー。なんか合格発表を見にいった時のことを…………」


 嫌なことを思い出してしまった。


「なんかごめん……」


 察したシャルが謝る。


「いや、いいよ。今はちゃんと学校に通えているしな。さて……」


 掲示板を見てみる。

 掲示板には2枚の紙が貼られていた。

 1枚は日程表である。

 魔法大会は来週の土曜に始まり、翌週の土曜で終わる8日だ。

 これは事前に先生から説明があり、その間、授業はないと聞いている。

 そして、その日程表にはそれぞれ対戦スケジュールが載っていた。


「こっちは探すのが面倒だな」

「何? 何? あった?」

「ちょっと待って」


 今度はもう1枚の紙を見てみる。

 こちらは対戦表であり、各組が誰といつ戦うのかが書かれていた。

 参加するのは40組のようなので上から順に探していく。


「えーっと、長瀬、長瀬……あー……」


 シャルリーヌ・イヴェール、長瀬ツカサ組

 ・7/22(月)  9時~ アーサー・ジー、ヘンリー・スミス組

 ・7/24(水) 13時~ ロナルド・エルトン、白川ユキ組

 ・7/27(土) 16時~ 赤羽ユイカ、トウコ・ラ・フォルジュ組


「え? 何? どうだった?」


 わーお。

 見事に当たったわ。


「シャル、現実に戻ってくる時間だぞ」

「もうその言葉ですべてがわかったわ……」


 シャルが察して目を開けると、掲示板をじーっと見始めた。


「ハァ……確かにランダムじゃないわ、これ」


 シャルも対戦相手を確認したらしい。


「というと?」

「トウコさんとユイカさんは説明不要。アーサーとヘンリーは同じCクラスなんだけど、どちらも武術に長ける魔法使いよ。ロナルドは槍を使う魔法使いでかなりの腕と聞いている。ユキさんはわからないけど、あのいつも目を閉じている子でしょ。雰囲気的に強そう」


 さすがは生徒会長。

 詳しいな。


「全員、強いわけだ。確かに作為的だな」

「そうね。そして、私達を含めた4組の総当たり戦になっている」


 シャルにそう言われて他の組を見ていくと、確かにこの4組は対戦相手が同じだ。


「他にもそういう感じが見えるな……」


 ところどころに同じような総当たり戦になっている組み合わせがちらほらと見られる。


「ジェニー先生が言ってた通りなんでしょう。ある程度、バランスを考えている」

「ふーん……というかさ、俺ら、初戦とトリだぞ」

「…………ホントだ。初日の最初と最終日の最後じゃない」


 生徒会長だからかね?


「トウコとユイカが最後か」

「最初が良かったわ」


 嫌なことは最初にかな?


「いや、最後の方が良い。向こうの対戦を見れば、向こうの手の内がわかる」

「それ、私達もでしょ」

「俺らはもう手の内を晒している」


 シャルは決闘で晒しているし、俺はそもそも武術しかない。


「なるほど……そう考えれば、得ね」

「だな。問題は初戦だ。こいつら、知らんぞ」


 誰だよ。

 男か?


「そうねー……ツカサ、日曜は空いてる?」

「空いてる」

「じゃあ、日曜に対策会議を開きましょう。ウチに来てちょうだい」


 俺の家は敵がいるからな。


「わかった……明日は?」


 明日は土曜日だ。


「勉強。おろそかにしない。テストも近づいているのよ」

「はーい……」


 俺達は日程表と対戦表をスマホのカメラで撮ると、帰ることにした。


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