表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/207

第105話 ごめんね……


「大丈夫かな、シャル……」


 電話を切ると、首を傾げる。

 そして、違う人物に電話をかけてみることにした。


『もしもしー? どうしたのー?』


 しばらく呼び出し音が鳴っていたが、目的の人物であるミシェルさんの声が聞こえてくる。


「こんにちはー。急に電話しちゃってすみません」

『いえいえー、仕事も終わって家でゆっくりしてたところよ』


 電話が繋がったということはこっちの世界にいるわな。


「すみませんが、ちょっと話を聞きたいんですけど、いいですか?」

『魔法大会の件?』

「ええ。それです」

『いいわよー。電話じゃなんだし、あそこの公園に来てよ』


 俺とシャルがいつも武術の訓練をしている公園だな。

 ミシェルさんと初めて会ったのもあそこだし。


「わかりました。すぐに行きます」

『はいはーい』


 電話が切れたので運動着に着替え、家を出る。

 そして、走って公園に向かうと、いつもシャルと待ち合わせるベンチにミシェルさんが座って待っていた。


「遅れてすみません」

「いえいえ、ウチはここから近いからね。まあ、かけなよ」


 ミシェルさんに勧められたので隣に腰かける。


「今日から教員ですっけ?」

「そうね。まあ、何かの授業を任せられているわけではないから雑用なんかをしてたわ」


 働くって大変だなー。


「初日で大変な時に呼び出してしまってすみません」

「いいの、いいの。それで魔法大会の何を聞きたいの?」

「えーっと、知っているかわからないですけど、なんであんなに変わったんですかね?」

「そうねー……知っていると言えば知ってるわね。ちなみに、君はどう思う?」


 ミシェルさんは頬に指を当てながら笑顔で聞いてくる。


「いやー、さっきシャルと電話してたんですけど、シャルがラ・フォルジュの陰謀だーって言ってましたね」

「はい? 陰謀? ラ・フォルジュがなんで?」


 ミシェルさんがポカンとする。


「トウコが決闘でシャルに負けたんですけど、それを恨んでリベンジさせる気だって言ってますね。どう考えても、次やったらシャルが負けるんで」

「あー、そういうこと……あの子、気が強いのか弱いのかどっち?」

「気は強いけど、コンプレックスの塊ですね。魔力が低いことと弱いことを相当、気にしてます」

「弱そうだとは思うけど、別に魔力は低くないでしょ」


 確かに魔力が低いわけではない。


「トウコと比べてですよ。イヴェールとラ・フォルジュの関係もあって、あの2人はライバル関係なんです。でも、武家のシャルの方が魔力も低くて弱いんで気にしてるんです。ましてやシャルは次期当主ですから」

「まあ、わからないでもないけどね。しかし、難儀な子ねー……あの子、完全に研究職タイプでしょ」

「わかります?」

「そりゃね。武家って言うけど、剣なんて握ったこともなさそうだし」


 ないだろうな。


「実際、弱いんですよ。何が弱いって、そもそも性格が良すぎて戦いに向いてない」

「褒めてるの、それ?」

「褒めてますよ」

「武家の子には褒め言葉じゃないわよ。それどころか失格の烙印ね」


 そうかもしれない。


「でも、事実そうなんですよ。戦いに向いている奴っていうのは2種類います」

「ほうほう。聞かせて」

「まずは感情を殺せる人間。怒りも持たないし、淡々とこなす人です」


 多分、ミシェルさんやクロエがそんな感じ。

 あと、同級生で言えば、フランクがこれに当たる。


「なるほどね。もう一つは?」

「良い言い方をすれば、心に熱いものを持っている人です」

「悪い言い方をすれば?」

「野蛮人です」


 悪い言い方どころか普通に言えばそうだ。


「野蛮人ねー……」

「シャルは殴られたら殴り返す人間なんですよ。気の弱い人は殴り返すこともできない」

「じゃあ、良いんじゃないの?」

「いーえ、野蛮人は殴られそうになった時点で先に殴ります」


 イルメラ、ユイカはそのタイプ。


「なるほど……」

「シャルは闘争心はあるんですよ。負けたくないという想いも人一倍強い。でも、肝心の性格が優しい。人を傷つけることに躊躇する。これは致命的でしょうね」

「よく見てるわね」

「土日はほぼ一緒にいますし、武術を教えているのでわかります」


 というか、優しくないとこんなにも勉強を見てくれんだろ。


「こりゃヤバいわ……完全に手遅れ」


 ミシェルさんが足を組んで手を顎に置き、遠くを見る。


「何が?」

「いーえ。そんな優しいシャルリーヌさんはトウコさんに絶対に勝てないと?」

「無理でしょうね。トウコは殴ろうとする相手を先手必勝でボコボコにしますから」

「魔力も負け、武術も負け、資質も負けている。なるほど……勝ち目はないわね」


 番狂わせは二度も起きない。


「シャルもそれはわかっているんですよ。だからトウコとは二度と戦わないって言ってたんですけど、今回こうなりました」

「はいはい。そりゃラ・フォルジュが裏で手を回したとか言い出すわね」

「実際、どうなんです? 何か知ってます?」

「いや、そんなわけないでしょ。研究職の家のラ・フォルジュが戦いに勝って何になるのよ。というか、学生の勝ち負けに意味なんてないわ。ただの演習じゃないの」


 クロエもそう言ってたなー。


「気にしいなんですよ」

「面倒な子ねー……ねえ、シャルリーヌさんが面倒だとは思わないの?」

「いや、俺の学力の方が遥かに面倒なんで……」


 すみません……


「あー……ごめん」


 バカですみません……


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
[一言] 22歳独身のミシェルさん 護衛対象の高校生に惚気られてやさぐれてますね
[一言] 他のクラスと組めるんだから組んであげれば良いのに
[良い点] 完全に手遅れだ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ